新車試乗レポート
更新日:2024.07.26 / 掲載日:2024.07.26

【スズキ フロンクス】これは価格次第でヒットの予感!【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 近頃、海外生産のモデルが日本で売られるケースが増えている気がする。三菱トライトンやホンダWR-Vがそうで、逆輸入車的なイメージが強い。今回ステアリングを握ったスズキ・フロンクスもその一つ。生産はインドで、そこから日本を含む世界中のマーケットにデリバリーされる。生産効率を鑑みればきっと拠点を絞った方がいいのだろう。この方式は新たなトレンドになる気がする。

最小回転半径4.8mの扱いやすいコンパクトSUV

フロンクス

 それじゃ正体不明のこのフロンクスはどんなクルマなのかというと、ベースになったのはバレーノというハッチバック。2022年リリースの現行型は日本未輸入の海外専用モデルなので馴染みのない方は多いが、インドの工場で生産されるポピュラーなクルマだ。初代は2015年リリース。翌年からは日本でも売られていた。プラットフォームはスイフトと同じだがサイズは少し大きいのが特徴だろう。

 バレーノのシャシーは、サスペンションはフロントがストラット、リアはトーションビームというレイアウトを採用する。その車高を上げてイマドキのSUVに仕上げたのがフロンクスだ。特徴はスズキ得意のコンパクトなサイズとデザイン。背を高くすることでパッと見は大きいが、最小回転半径はスイフトと同じ4.8m。それだけで扱いやすいのがおわかりいただけると思う。

デザインはスタイリッシュで空間効率も考えられている

フロンクス

 デザインはSUVでありながら最近のトレンドに沿ってスタイリッシュさを持つ。リアピラーを角度をつけて寝かせた分そうなった。その中で目を引くのがLEDを駆使したヘッドライトユニットとリアコンビネーションランプ。流行りの個性的な光り方をするシグネチャーランプでアピールする。横に長い上部のランプがデイライト、下のライトがヘッドライトとして機能する。タイヤは16インチを採用。大径に突っ走らないのが好印象だしインテリジェンスを感じる。大きくするとサスペンションストロークが取れないのでこれがギリギリという事情もあるが良識的な判断である。定員は5名。コンパクトなパッケージングだが、カーゴスペースはそれなりに使えそうだ。

フロンクス

 では乗り込んだ印象だが、インテリアは正直それほど個性的ではない。インパネ周りはオーセンティックなつくりで、コストをかけない分デジタル表示は少ない。アナログな雰囲気は、今となっては珍しい存在かもしれない。シートやトリムのカラーはブラックとボルドーの2トーンのコンビ。ここで少しだけオシャレ感を出す。しかも日本向けに配色を見直していることもあり落ち着く。この辺の細かい芸当はありがたい。

 エンジンは1.5リッター自然吸気の4気筒ユニットで、それにモーターをつけてマイルドハイブリッドとした。ISG/モーターを付けリスタートと加速を滑らかにする。トランスミッションは6速AT、駆動方式は2WDと4WDの2種類が用意される。グローバルカーとしては路面舗装環境の良くないエリアでの販売も妥協できないため、ヨンクは必須となる。

走りは思いのほか力強く、スイフトのようなスポーティさを感じる

フロンクス

 そんなパワーソースを持ったフロンクスの走りは思いのほか力強くスマート。回転数が落ちそうなところでモーターがサポートし気持ちのいい加速を実現する。1.5リッターとは思えない頼り甲斐のある加速感だ。今回は市販前の車両ということでクローズドエリアでの走行となったが、このクルマの特性はよくわかった。スイフトにつながるスポーティさを持ち合わせている。

 そのテイストは乗り心地もそうで、ダンパーがよく効いている。走り出しは「少し硬め?」と思ったが、徐々にしなやかさが顔を出してくる。ここは日本向けにアレンジを加えたといっていたが、その効果はありそうだ。ただ2WDの方がリアサスが若干突っ張った印象。コーナリング中リアルには跳ねなかったが、懐はそれほど深くないかもしれない。その点4WDの方が車重が嵩む分落ち着きがある。コーナでしっかり荷重がかかり姿勢を安定させるイメージだ。

 とはいえ、その辺の挙動は通常走行ではあまり生じないであろうからこのセッティングでひとまず問題はないだろう。「スポーティな味付け」でとどまる。が、リアシートに人を乗せるシチュエーションが多い人は4WDを選んだ方がいい。その方が後席からのクレームは少なさそうだ。

価格次第だがヒットの予感がする

フロンクス

 というのが新型フロンクスとのファーストコンタクト。プロトタイプの試乗だったがほぼ完成品として仕上がっているのわかった。デザインも悪くないし、あとは価格次第。巷の噂ではけっこう安価で販売されることになっている。「最近はクルマが高い」と言われるだけに、もしそうなれば話題沸騰になるに違いない。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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