新車試乗レポート
更新日:2024.05.30 / 掲載日:2024.05.30
NISMOと日産を愛するドライバーに届け!【日産 アリアNISMO】

文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、日産
NISMOにこういう世界が表現できるのか! 試乗コースでアリアNISMOのステアリングを握りながら思わず唸った。
2024年1月の東京オートサロン会場で華々しくデビューを飾ったアリアNISMOは、日産におけるEVモデルのフラッグシップであると同時にNISMOブランドの世界観を大きく広げる存在だった。
これまでのNISMOロードカーと異なる新たなキャラクター

洗練された上質なSUVテイストを持つ電気自動車のアリア。美しいデザインと日産独自のAWDシステム「e-4ORCE」が注目を集めていたが、世界的な半導体不足などにより一部グレードの注文を停止せざるを得ない逆風からの船出となった。
しかし、いよいよ2024年3月から「B6 2WD」の注文受付を再開するとともに、「B6 e-4ORCE」、「B9 2WD」、「B9 e-4ORCE」、「B9 e-4ORCE プレミア」を発売してフルライアップが完成。さらに6月にはNISMOバージョンの登場と、第2のスタートを切ることになる。
NISMOは、「ニッサン・モータースポーツ」を由来とするブランド名称で、国内外でのレース活動を担うワークスチームを運営している。その技術力を活かしてNISMOロードカーと呼ばれる市販車や専用パーツを開発。歴史と伝統を持ち、熱心なファンが多数いることでも知られている。
現在販売されているNISMOロードカーはアリアを含め6モデル。GT-Rを頂点にフェアレディZ、スカイラインといったスポーツ性能を大幅に引き上げたモデルと、リーフやノート オーラといったNISMOのテイストを気軽に楽しめるモデルという作り分けが行われている。
ではアリアNISMOは?
結論から言えば、これまでとはまったくことなる世界観を目指して作られている。
リアルスポーツでも、カジュアルなスポーティさでもない、いわばラグジュアリーなスポーティさだ。

ベースモデルからの変更点

ベースモデルからの変更点は多岐にわたる。
NISMOロードカーのデザインテーマを取り入れた内外装、空気性能にまでこだわったホイールと内部構造まで専用となるタイヤ、幅広い温度域に対応するブレーキパッド、もちろんサスペンションシステムのチューニングも行われている。
システム面では、電動駆動4輪制御技術をNISMO専用にチューニングした「NISMO tuned e-4ORCE」を採用。ドライブモードも考えられたものになっていて、シチュエーションや好みに合わせたセッティングが選べる。BOSE Premium Sound System装着車でNISMOモードをオンにすると、フォーミュラEマシンをイメージしたEVサウンドがスピーカーから流れるというギミックもユニークだ。





これは「大人のNISMO」だ!

そんなスペックを頭に入れながら、アリアNISMOのステアリングを握ったのだが、いい意味で予想が裏切られた。
もともとのアリアも、電気自動車ならではの力強さやフラッグシップにふさわしい上質さが備わっているが、アリアNISMOのそれは安心感をキープしながら、クルマとの一体感がひとつ上のレベルにある。
とにかく、走る、曲がる、止まるのすべてが気持ちいい。
ステアリングを切り始めたその瞬間からアリアNISMOは機敏に反応するのだが、となりに同乗者がいてもクレームがこない絶妙な横Gの立ち上がりで、スムーズでスマートな運転を可能としてくれる。
加速にしてもそうで、絶対的なパフォーマンスはベースモデルよりきちんと高められているが、その加速Gやハイスピード域での車内の雰囲気がハードすぎない。
絶対的な速度ではなく、クルマとの親密さが生み出す心地よさが、アリアNISMOの大きな美点。これは運転を愛するドライバーにはたまらない魅力だ。
電気自動車は内燃機関車よりも車重が重くなりがちで、事実アリアNISMOも「NISMO B6 e-4ORCE」で2355kg、「NISMO B9 e-4ORCE」で2485kgに達する。それ自体は同クラスの電気SUVとして標準的なのだが、そうした物体を無理にコーナリングマシンに仕立てても爽快感より恐怖感が先にくるだろう。最高速度や加速についても、いたずらにパワーアップしても航続距離が短くなるだけで、使いにくいクルマになってしまう。
NISMOの開発チームはわかりやすさよりも、アリアが持つポテンシャルを信じ、これまでのNISMOには存在しなかったラグジュアリースポーツという領域を切り拓いた。
まとめ
どういう人がこのクルマを選ぶべきなのか。
アリアNISMOについては、乗ってもらいたいユーザー像というかふさわしい人がくっきりと浮かんできた。それは、GT-RやフェアレディZのNISMOモデルに乗る熱心なファンだ。
スポーツ性能を極めたNISMOモデルは休日にサーキットなどで楽しむもの。では、日々の移動は? アリアNISMOならば、快適さと運転の楽しみが高次元でバランスしているし、電気自動車だからゼロエミッション。この組み合わせは非常に魅力的だと思う。