新車試乗レポート
更新日:2018.11.08 / 掲載日:2012.05.17
ポルシェ カイエン S ハイブリッド 試乗レポート

スポーツカーメーカーとて、燃費を無視することはできない今日、ポルシェがハイブリッドシステムを搭載したカイエンを投入してきた。それは、ハイブリッドに関して新参メーカーだということを忘れさせる出来栄えだった!
ついにポルシェも導入 満を持してのハイブリッド

カイエンをSUV界のスターダムに押し上げたカギは、ポルシェのブランド力と、老舗スポーツカーメーカーが手がけたモデルならではの優れたパフォーマンスだ。でも、さすがに今の時代は、速さだけをウリとする戦略は取りにくい。ディーゼルに続き、2代目でハイブリッドを投入したのは、ポルシェが時代のムードやニーズをしっかり捉えて開発をしている証拠だと言っていい。
欧州ではディーゼルが主役だが、日本やアメリカとの温度差はまだ大きく、ハイブリッドは望まれていた技術だった。親密度を深めるVWグループとの関係が活かされ、ハイブリッドシステムもトゥアレグと基本を共有するカタチで開発された。
まずはハイブリッドならではのエコ性能に注目すれば、カイエンSハイブリッドは欧州複合モードで12.1km/L(3.6L V6は10.1km/L)という優れた燃費値を達成している。車重約2.3トンの高級SUVで、この数値は文句なしに優秀だ。
とはいえ、いくらエコ度が高くても、走りが冴えないのではポルシェとしての価値はない。その点は抜かりがなく、過給機付き3L V6とモーターをあわせたシステム性能は380馬力/59.1kgmに達し、すばらしい性能を実現しているのだ。
とくに印象的なのは、強大なモータートルクを活かした力強い加速で、1速、2速、3速……とスムーズな自動シフトを行いながら速度を「グィーン」と伸ばしていく。そこで絶対性能を記せば、最高速と0→100km/h加速はV6の230km/h &7.8秒、V8(カイエンS)の258km/h &5.9秒の間の242km/h&6.5秒。「S」を名乗るに十分な速さを備えていることがわかる。
また、モーター走行の範囲も意外なほど広く、「Eパワー」のスイッチを押せば、市街地での穏やかな走りはモーターのみでカバーすることが可能だ。加えて、高速でもアクセルオフ時(156km/hまで)にエンジンをカットすることができ、「スーッ」と滑走するようなコースティング状態をつくり出すことができる。動力性能のゆとりや、圧倒的な静寂感とスムーズさが光る未来的走行フィールは、燃費節減やCO2排出低減に勝るとも劣らない魅力だ。
おとなしく走ればとても経済的、なのに、ひとたび右足に力を込めれば……V8モデルに迫る力感ある走りが楽しめる。コイツは、そんな二律背反を見事に成立させている。
もちろん、ポルシェがつくるのだから、シャシーもきっちりと仕上げている。試乗車はオプションのPASM(電制可変ダンパー)を装着していたが、高速域ではビシッとした安定を示し、コーナーでのフットワークは重い車重や重心の高さを意識させないほど軽快な印象。スポーティーな走りも十分に楽しめる能力を持つ。それでいて、コンフォートモードでの乗り心地はしなやかかつ快適なのだから、懐の深さが光る。
このように、ハイブリッドメカも、シャシーもごきげんな仕上がりだ。気になったのは、回生の強弱の変化や、もしくは油圧ブレーキとの連携に起因すると思われる減速時のギクシャク感ぐらいなもの。システムの基本を共用するパナメーラSハイブリッドでは、そのクセは気にならなかったから、ハードに乗られた後で試乗車のブレーキが本来の状態でなかったことも考えられる。
そんなカイエンSハイブリッドの価格はV8の「S」より高い点は引っかかるが、エコカー減税の恩典で実質の購入費用は抑えられるから、バリュー度はかなり高い。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
ポルシェ・カスタマーケアセンターTEL:0120-846-911
Detail Check
コックピット
コックピット
タコメーターを中央に配置した5ダイヤルメーターが、ポルシェの血統を物語る。スポーティーさと質感に磨きをかけたのが、2代目カイエンの注目点だ。EV走行スイッチはセンターコンソールの手前側にある。
エンジン
エンジン
90度バンクの内側に機械式過給機を配置した直噴3L V6は、アウディ各車やトゥアレグハイブリッドでもおなじみ。これに34kW/300Nmのモーターと8速ATを組み合わせ、ハイブリッドメカを構成する。
インテリア
インテリア
ゴージャスなムードを漂わせるキャビン。先代より後席足元が広くなり、快適度が一段と高まった。もちろん高級装備も充実!
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
フロア下に駆動用バッテリーを収めるが、ラゲッジは580~1690Lと十分な容量を確保している。
エクステリア
エクステリア
フロントサイドのエンブレム。ポルシェは今後、スポーツカーにもハイブリッドを展開する計画だ。
主要諸元:ポルシェ カイエンS ハイブリッド(8速AT)
全長×全幅×全高 | 4845×1940×1710mm |
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ホイールベース | 2895mm |
トレッド前/後 | 1485/1485mm |
車両重量 | 2270kg |
エンジン | V6DOHCスーパーチャージャー+モーター |
総排気量 | 2994cc |
最高出力(トータル) | 380ps/5500rpm |
最大トルク(トータル) | 59.1kg m/1000rpm |
サスペンション前/後 | ダブルウィッシュボーン/マルチリンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク |
タイヤサイズ前後 | 255/55R18 |
全国メーカー希望小売価格(2010年11月)
カイエンS ハイブリッド(8速AT) | 1102万円 |
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Body Color
■ブラック ■クラシックシルバーメタリック ■ダークブルーメタリック ■サンドイエロー ※ほか6色あり。 |
真剣に低燃費を追求する高効率ハイブリッドシステム

真剣に低燃費を追求する高効率ハイブリッドシステム カイエンおよびパナメーラが搭載するハイブリッドはパラレル式。メカ構成はエンジン、クラッチ、モーター、ATの並びで、クラッチによりエンジンとの連結を解除することで、範囲の広いEV走行や、高速域におけるエンジン停止を可能にしている。効率のいいエネルギー回生をするのにも優れたメカニズムだ。