新車試乗レポート
更新日:2023.10.27 / 掲載日:2023.10.27
【ホンダ N-BOX】もっと快適に、もっと頼もしく。乗って納得の正常進化

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
軽スーパーハイトワゴンのベストセラー、ホンダN-BOXがフルモデルチェンした。2017年リリースの先代から早6年が経つ。その間コロナ禍で物事の価値観は変わったが、このクルマの販売はずっと絶好調だ。
メカニズムを受け継ぎながら乗り心地と安心感をアップさせた

新型は先代のシャシーをベースに手を加えてつくられた。目指したのはさらなる乗り心地の向上と安心感のある操縦安定性だそうだ。そのためステアリングコラムや足回りを重点的に改善した。ターボエンジン車に関してはダンパーの減衰力まで変更している。
デザインに大きな変更はない。売れているモデルだけにシルエットはそのまま。というか、軽自動車枠を最大限利用しているのだからスーパーハイトワゴンである限りほぼ同じ。ただヘッドライト&グリルを意匠変更して新鮮さをアピールしている。特にバンパー形状はイマドキだ。
ボディサイズは変わらないのに室内が広くできた理由

興味深いのはこれまでと同じようなパッケージングのまま室内を広くしている点。フルモデルチェンジのたびに毎回決まった寸法を最大限利用しているのであれば、いまさらキャビンが広くなるのは不思議な話である。そこで、開発担当者に伺うと、納得の回答が得られた。それは同じスチールであってもハイテン材などの素材の割合や使用箇所の変更で行えるという。つまりイン側のボディパネルの形状が変わってシートなどのワイドをより広げられるのだ。事実新型ではリアシート幅が広がっている。
それが出来るのは解析技術が毎年のように進化しているから。より効率良くビームを配することで、無駄な補強をしなくて済むようになる。なるほど、キャビン拡大の裏には衝突などのシミュレーションとその解析力が深く関係していた。




ということで広いキャビンが出来上がるのだが、自転車の積みやすさや積んだ後の安定性などにも取り組んでいる。確かに、急な雨で自転車を駅に置いてきたら翌朝とんでもない距離を歩かなくてはならなくなる。夜のうちにN-BOXに迎えに来てもらい自転車ごと運べれば不安解消だ。
自然吸気エンジンの「N-BOX」でも走りは十分満足

ではパワートレインだが、新型は基本的に先代のユニットを継承する。制御系のロジックを現代版に進化させただけだ。自然吸気エンジンとターボ付きを用意し、それぞれのニーズに応える。標準タイヤサイズは自然吸気が14インチ、ターボ付きが15インチという設定となる。
走った印象は、先にステアリングを握った自然吸気エンジン車でかなり満足してしまった。エンジンパワーは出だしからプアなところはなく、加速時もアクセルに対し無理なく応えてくれた。そして走り出せばNシリーズならではの軽快なハンドリングが運転を楽しくする。ステアリング操作に対するクイックな追従性は期待通り。剛性の高いボディと柔らかくセッティングした足が自然なフィーリングで高い回頭性を見せてくれる。これこそホンダイズム炸裂の領域だ。「ここだけは譲れない!」なんて開発陣の声が聞こえてきそうである。
ターボモデルのメリットは高速での合流などで感じられた

次に乗ったターボ車はそのままそれをパワフルにしたモノ。中速域からが本領発揮で、一段上の頼もしさをドライバーに与える。今回の試乗コースは横浜の首都高速道路がメインだったが、高速道路を合流がスムーズに行えるのはメリット。もしその辺が苦手な方はターボを選ぶといいだろう。クルマにチカラがあるほど安全性は高くなる見本だ。

それじゃ14インチと15インチタイヤの乗り心地はというと、ほとんど変わらない。15インチになったら急にロープロファイルタイヤになるわけではないので、その辺は神経質にならなくていいだろう。ターボ車はダンパーの減衰圧を高めていると思われるが、特にピッチングが激しくなるようなこともなかった。




といったところが新型N-BOXとのファーストコンタクト。印象的には従来型の正常進化といったところとなる。と同時にN-ONE好きの目線からして納得の仕上がりだ。N-ONEはモデルサイクルが長いのでしばらく乗っていないが、こうした改善が繰り返されるとより魅力的になるだろう。いずれにせよNシリーズは“ホンダがつくる軽自動車”を体感させてくれるのが高い好感度の秘訣だと思う。