新車試乗レポート
更新日:2023.07.22 / 掲載日:2023.07.22
【ハーレーダビッドソン CVO】バイクの領域を超えた独自のカルチャー

文●九島辰也 写真●ハーレーダビッドソン
7月中旬アメリカのミルウォーキーという街に行ってきました。シカゴから飛行機だと一時間もかからない場所です。ミシガン湖の西岸ってところでしょうか。目的はバイクで有名なハーレーダビッドソンの120周年イベントの出席と新型車の試乗です。それにしてもミルウォーキーという街はハーレーダビッドソン一色なのに驚きました。本社機能もあればミュージアムもあります。それに少し郊外へ出れば巨大なファクトリーも。なかなか見応えがあります。
そもそもこのエリアはかつて自動車メーカーが集まる場所として有名でした。モータウンミュージックで知られるミシガン州デトロイトをはじめ、イリノイ州シカゴ周辺にそれは広がっていました。かつてワタクシがホームステイしていたインディアナ州北部の街サウスベンドもそう。スチュードベーカーの本社工場がありましたし、現在もAMゼネラルが本社を構えています。ハーレーダビッドソンも120年の歴史があるのですから、自動車産業の創成期と共に歩んできたのでしょうね。1903年スタートとなるとフォードモーターカンパニーと同じ歳ってことになります。

ということで、ハーレーダビッドソンの話です。試乗したのはCVOと呼ばれるモデルでカテゴリーは“グランドアメリカンツーリング”に属します。価格はおよそ550万円から650万円オーバー。3輪のトライクを上回る値付けです。要するにハーレーの中でもトップ・オブ・トップなんです。
CVOは“カスタム・ヴィークル・オペレーションズ”を指します。デザイン、塗装、パーツ、装備の面で他にはないスペシャルな装いのモデルです。これをクルマに例えるならメルセデス・マイバッハといったところでしょう。ベースモデルをよりゴージャスに仕上げます。
ただし、今回試乗した新型車はその枠を超えました。「ミルウォーキーエイトVVT 121」と呼ばれるエンジンがそうで、まだどのモデルにも載せていない排気量アップされた新ユニットを採用します。きっと今後このエンジンはCVOから波及していくことでしょう。
ちなみに、121はアメリカ流の排気量の数え方で、単位はキュービックインチになります。換算すると1977cc。およそ2リッターです。昨年までの117キュービックインチからスープアップされました。う〜ん、ダウンサイジングとは真逆の方向性かぁ。VVTは可変バルブタイミング機構。オールドスクールなイメージですが、しっかり進化しています。



グレードは2つで、“ロードグライド”と“ストリートグライド”となります。前者が大型角型ヘッドライト+アップライトハンドルで、後者は丸型に近いヘッドライトでハンドルは少し下がります。いずれにせよ、どちらも巨大なカウルと後方にサドルバッグを持つので、存在感は大きいといえるでしょう。今回走らせてわかりましたが、走行中はしっかりクルマ一台分のスペースを使います。けっして横をすり抜けたりはしません。というか、ほぼ出来ないかと。
その分ご覧のように安定感は抜群。アクセルを軽く捻りはじめると大きなボディが滑らかに走り出します。乗る前は圧倒されてましたが、スタートしてしまえば不安は払拭されます。「なんて安定しているんだ」と思わず呟くほど。まるでカウチに座ったまま動いている感じです。今回街中で多くのオーナーズバイクを見ましたが、みんなにこやかな笑顔を見せているのはそんなことも関係していることでしょう。ハーレーはイージーライドなバイクなんです。
装備もそうです。バイクの最新事情を知らない方は驚きでしょうが、メーター類はグローブをしたままでOKのタッチ式液晶モニター、それにオートクルーズや走行モードの変更もできます。デフォルトの“ロード”の他に“スポーツ”、“レイン”それと2つのカスタムが選べます。USBポートも付いていたりして。もちろん、WiFiやBluetoothに繋ぐことも可能。もはやクルマと遜色ない装備です。



“ホームカミング”というタイトルの120周年イベントは4日間行われました。ミュージアム周辺にはキッチンカーの出店、電動バイク“ライブワイヤー”の展示とデモライド、カスタム&ビンテージバイクショー、音楽フェスが行われていました。またダウンタウンでは大規模なモーターサイクルのパレードが、郊外のファクトリーでは工場ツアーも企画されています。我々もメディアとしてツアーに参加し楽しみましたが、クルマの開発/生産と似ていますね。おかげでかなり理解できました。
というのが今回のイベント参加とCVOの試乗。バイクメーカーのメディアツアーは初めてだったのでいろいろな経験ができました。何事も実際に見ないとわからないですからね。あらためてハーレーダビッドソンが単なるバイクメーカーではなく、スタイルやカルチャーを作っていることを思い知りました。すごいブランドです。