新車試乗レポート
更新日:2023.03.22 / 掲載日:2023.03.22

【ポルシェ 911GT3】サーキット走行を視野に入れた特別な911

文●九島辰也 写真●澤田和久、内藤敬仁

 クルマ好きの皆さまはおわかりのように、同じ911シリーズの中でも一目置かれるモデルはある。今回ステアリングを握った911GT3はまさにそんなモデルだ。フェラーリで言えば“チャレンジ”みたいにサーキット走行を意識してつくられた。リアの大きなGTウィングはそのシンボルと言っていいだろう。

レーシングカー顔負けのエクステエリア

911 GT3

 エクステリアの特徴は、そのスワンネック式の大型リアウィングとリアディフューザー、開口部の大きなフロントエプロン、エアアウトレット用のメッシュの入ったカーボン製フロントリッドあたりだろう。各パーツが強力なダウンフォースを生んだり、ブレーキの冷却効果を発揮する。通常の911とは明らかに異なる装備だ。ちなみに、巨大なリアウィングとリアウィンドウが干渉するためエンジンフードは開かない。それらしいレバーを引くと、クーラントとオイル交換用の小さなリッドが持ち上がるだけだ。

 簡単には姿を見せないパワーソースは、4リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンとなる。最高出力は510ps、最大トルクは470Nmだが、驚くのはそれを発生する回転数。最高出力は8400回転というからかなりの高回転型だ。レッドゾーンは9000回転以上で、1万回転まで数字が刻まれている。「バイクかっ!」てな感じだろう。0-100km/h加速は3.4秒、最高速度は318km/hをマークする。

すべてがソリッドな感触なのに乗り心地は悪くない

 それでは乗り込んだ印象だが、そこは911であることを主張する。個人的に歴代911を乗り継いでいるが、その正常進化の上にあることは間違いない。ダッシュボードとシートの位置やステアリングとの距離感がそんな印象だ。とはいえ、デジタル化はしっかり行われている。メータークラスターのセンターはアナログ式レブカウンターで、その左右に様々な情報を取り出すデジタル表示がセットされる。タイヤの空気圧、Gフォース、ストップウォッチと水温や油温、油圧などだ。彼らが長年こだわっていた“5連メーター”はそこにない。そしてダッシュボードセンターには10.9インチのタッチスクリーンが組み込まれる。PCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントと呼ばれるものだ。

911 GT3

 では実際に走らせた感想に話を移そう。動き出して感じるのは各部のソリッド感。ボディ剛性、ステアリング剛性、それと足回りはしっかり引き締められ一体感をもたらす。操作に対しすべてがクイックに同調するといった感覚だ。それでいて硬すぎない乗り心地はグッド。今回の試乗は一般道だったが、これならフツーに使えるのでは?と思えた。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ・カップ2。サイズは前255/35ZR20、後315/30ZR21となる。ホイールは当然専用で、サテンブラックに塗られたセンターロックの軽量タイプが装着される。シャークブルーと呼ばれるブルーのボディカラーに合わせてリムに同色のストライプが入っているところが絶妙だ。イエローに塗られたブレーキキャリパーとのマッチングも心躍らせる。

 走りはとにかく速い。立ち上がりが極端に速いので絶対的な速度域が高くなってしまうほどだ。でもってそれはアクセルひとつで細かくコントロールできる。中間速度からのそうした動きが特にそうで、複数の車線での追い越し追い抜きを周りのクルマにブレーキを踏ませず、サラリとこなしてしまうような素早さだ。これで新東名高速あたりを走ったら周りのクルマが止まっているように見えるかもしれない。そんな妄想を抱かせる俊敏さである。

試乗車の価格は約3000万円。911のなかでも特別な1台だ

911 GT3

 こんな走りができるのは徹底した軽量化と剛性アップによるものだ。通常の911とは素材から見直したことで、価格は2296万円に上る。試乗車のようにオプションをつければトータル2955万円超え。そんなことからもこのクルマが特別であるのは一目瞭然である。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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