新車試乗レポート
更新日:2022.09.09 / 掲載日:2022.09.09
シトロエン C5 Xから目が離せない【九島辰也】

文●九島辰也 写真●シトロエン
フランス車が売れています。プジョー、ルノー、シトロエン、それにアルピーヌなんてマニアックなモデルまで昨年から日本で右肩上がりです。理由はいろいろあるでしょう。最近のフランス車は性能が良くなったのはもちろん、価格帯も手頃。それにドイツ車にはないポップなデザインや色の合わせなんかもポイントになります。先日も友人がシトロエンC3エアクロスに乗って我が家に来ましたが、ドアミラーのオレンジが映えていました。なんか旅に出たくなるような装いです。
それと今回の自粛期間で多くの人の考えが変わった気がします。「いつかはあのクルマに乗りたいなぁ」なんて思っていたのが、「もしかしたら“いつか”なんて無いのかも」となったのかもしれません。「だったら欲しいクルマを今買うしかない!」みたいな。
そう感じたのは、フランス車もそうですが、ジープやイタリア車も台数を伸ばしているからです。なんとなく社会との取り合いやリスクを回避して国産車やドイツ車を選んでいた方々がそんな思いに至ったのではないでしょうか。まぁ、個人的な憶測ですけど。自分はそう思ってかねてから欲しいものを買いました。
それはともかく、今回は先日ステアリングを握ったシトロエンC5 Xのお話をしたいと思います。気になるフランス車の一台です。
このクルマはご承知のように“X”の文字が入ります。それは従来あったC5とは別物であることと、クロスオーバービークルの要素を持っているからです。単なるモデルの進化版ではなく、新しい提案という考え。確かにシトロエンというブランドはそうです。1955年にパリオートサロンで発表されたDSがその象徴でしょう。ターンテーブルに載ったあの宇宙船みたいなスタイリングは当時大きな話題となりました。今はDSオートモビルにその役目を持っていかれましたが……。

ということで目の前にした実車は、セダン、ステーションワゴン、SUVの長所をうまい具合に取り入れていました。正直、世界中でSUVが売れているのだからもっとそれっぽくつくればいいのにと思いましたが、これはこれでなかなかカッコ良く仕上がっています。それにしてもフランス人は頑なにSUV然としたモデルをつくりませんね。それに近いパッケージングもエアクロスなんて言葉を付けたり。思うに、彼らはアメリカ人が産んだ背の高いクルマを好きではないようです。
もちろん、シトロエンというブランドがそうさせているともいえます。このブランドの2大要素は“デザイン”と“乗り心地”。なので、一見して他のブランドがつくりそうなモデルは社内的に却下されると思われます。ちなみに、このクルマのインテリアデザインには日本人デザイナーが関わっています。柳沢知恵さんという方で、カラー&マテリアルデザイナーのタイトルで仕事をしました。そんなインテリアのディテールを見ると、あらゆる場所にシトロエンのマーク“ダブルシェブロン”が散りばめられています。まるで隠れミッキーのように。それが彼女のアイデアかどうかは知りませんが、おもしろい。シトロエン好きにはたまりませんね。とはいえ、沼に住んでいるディープなシトロエンマニアは新車に興味はありませんが。

乗り心地に関しては、確かに他のブランドのモデルよりは路面に対する当たりは柔らかく、かつストロークが長いしなやかさを感じます。しかも高速道路でフワフワすることなくピタッと路面を捉えるので、長距離移動も快適そうです。ただ、イメージするシトロエンの乗り心地までは到達していません。最近は他のブランドもかなりいいからです。エアサスや可変ダンパーを多用したりして。
ただし、今回試乗したのは1.6リッター180psのガソリンエンジン車であることを断っておく必要があります。本命は年末から来年初頭に追加されるであろうプラグインハイブリッド。こちらはドライブモードの切り替えで乗り味が変わる仕組みとなります。そうなれば現代版“ハイドロ”がリアルに味わえるかもしれません。期待大です。
ということで、C5 Xの総合的な評価はそれが来てからにしましょう。ボディカラーも今は4色しかなくて寂しいですから。もしかしたらプラグインハイブリッド導入でもっとボディカラーが増えたり、限定車が追加されたりするかもしれませんし。その意味ではしばらくこのクルマから目が離せませんネ。