新車試乗レポート
更新日:2022.07.19 / 掲載日:2022.07.19

【試乗レポート アルピーヌ A110】マイナーチェンジで選ぶ楽しさがアップした

文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス

 2018年に日本に上陸してはや4年、アルピーヌA110に初めて大きな変更があった。ポイントはエンジンと、それを含めたグレード体系の見直しだ。1.8リッター直4ターボエンジンのハイパワー版の最高出力が8馬力、最大トルクが20Nm向上して、それぞれ300馬力と340Nmになった。

エンジン出力向上だけじゃない

A110 GT

 これまでは、252psのスタンダードエンジンを搭載する標準の「A110 ピュア」と上級仕様の 「A110 リネージ」、292psのハイパワーエンジンとシャシースポールと呼ぶ強化した足まわりの与えられた「A110 S」 という3グレードだったところ、新型ではそれぞれの特徴をさらに際立たせた。

 「A110 S」はそのままで、「A110 ピュア」は「A110」となり、「A110 リネージ」は「A110 GT」と改名するとともに、待望のハイパワーエンジンが組み合わされた。アルピーヌシャシーと呼ぶ標準仕様の快適な足まわりでハイパワーエンジンを搭載したグレードが新たにできたことに注目だ。

 その他では、インフォテイメントについても新しいマルチメディアシステムの採用により、AppleCarPlay™とAndroidAuto™に対応したことも歓迎したい。さらには、多彩な選択肢の中から好みの仕様に仕立てることができる受注生産プログラムがスタートしたほか、推奨オプションを組み合わせた「エッセンシャルパッケージ」や、「A110 S」には専用のエアロキットがオプションで用意されたのも新しい。

高回転域で真骨頂を発揮

A110 GT

 車両重量は装備等の違いにより、「A110」が1110kg、「A110 GT」が1130kg、「A110 S」が1120kgと若干の差があるものの、いずれもこのクラスとしては非常に軽いことには違いない。A110がこれほど軽量なのは、ボディを含めた全体の約96%をアルミ製としたのをはじめ、軽量であることに大いにこだわって設計されているからにほかならない。

 0-100km/h加速タイムの公表値は、スタンダードエンジン車が4.5秒、ハイパワーエンジン車が4.2秒という俊足ぶり。エンジン性能も十分だが、そのわりにも速いのは、軽さはもちろんエンジンを背後に積むためリアのトラクションが十分に得られることも効いている。

 ハイパワーエンジンを搭載する「A110 GT」と「A110 S」に乗ると、スタンダードエンジンに比べて2000rpm以上の全域でパワーもトルクも上回っているというとおり、スタンダードエンジンでも十分にパワフルなところ、全体的にトルクが上乗せされた感じがして、7速DCTのダイレクト感のある走りともあいまって、どの回転域からでもついてくる俊敏で力強い加速を味わえる。

 さらに、ハイパワーエンジンはそこからが真骨頂を発揮する。高回転域になるほどスタンダードエンジンとの差が大きくなる印象で、吹け上がりが伸びやかで軽やか。ふだんはあまり使わない領域だが、いざというときにより気持ちよく走ることができる。スポーツモードを選択すると、より刺激的なドライブフィールになるとともに、エキゾーストサウンドによる演出も楽しめる。

「GT」と「S」の違いは?

A110 S

 前後重量配分はミッドシップとして理想的な44:56となっている。サスペンションは接地性に優れるダブルウィッシュボーン式をセグメントで唯一、前後に採用していることに加えて、従来と同じくラリーで培った技術を応用したダンパー内部にセカンダリーダンパーを備えるハイドリック・コンプレッション・ストップを採用しているのも特徴で、とくにアルピーヌシャシーの「A110 GT」は独特のストローク感で荒れた路面もしなやかに捉えてくれる。

 ワインディングではリアのトラクションとスタビリティが高いミッドシップの恩恵をより実感する。フロントの慣性が小さいおかげで回頭性も素晴らしく、まさしくオン・ザ・レール感覚でコーナリングできるのもミッドシップならでは。その感覚を軽量なA110ならどのモデルでも、より手の内で操り意のままに味わうことができる。

 足まわりを強化した「A110 S」は、より切れ味の鋭いハンドリングを楽しめる反面、乗り心地はやや硬め。サーキットのようにフラットな路面で限界性能を引き出して走るほうが向いていそうだが、よりスパルタンでシャープな走りをいつでも味わいたいという人にはもってこい。一方の「A110 GT」は万人向けの性格とされていて、乗り心地にも硬さがなく、運転操作に対する反応が素直で動きが掴みやすい。

 これまでも足まわりが標準仕様の「A110 リネージ」にスタンダードエンジンではなくハイパワーエンジンが積まれていたらいいのにと思っていた人は少なくなかったことと思うが、今回まさしくそうなった次第。おそらく「GT」のグレード名のとおり、ロングドライブをより快適で楽しいものにしてくれることだろう。

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岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

ライタープロフィール

岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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