新車試乗レポート
更新日:2022.06.24 / 掲載日:2022.06.24
【VW ポロ】マイナーチェンジしたポロは元気が出るクルマ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●フォルクスワーゲン
VWグループは巨大であり、各ブランドは強烈な個性を持っている。ランボルギーニやベントレー、それにポルシェはいい例で、ブランド名だけでいろいろな想像が頭に浮かぶ。どれもスポーティな面では共通するが、それ以外の部分はまったく別と言ってもいい。個人的なイメージで表現するなら「少しやんちゃなランボルギーニ」、「一見してジェントルだが、その気になったらすごいベントレー」、それと「どこまでもストイックにスピードを追い求めるポルシェ」といったところだ。
アウディも近年はだいぶ個性豊になってきた。学生時代70年代のアウディを乗り回していた頃は「VWのお兄さん」で済んでいたが、今は「先進的でおしゃれ」ブランドとして定位置をキープしている。21世紀に入ってファッションブランドとのコラボイベントでおしゃれ度はかなり上がった。「アウディに乗っています!」なんて自己紹介すると、「ファッションに敏感な人」と思われそうだ。
それじゃグループのコアに位置するVWはどうかというと、保守王道的なイメージは拭えない。アルテオンの登場で別の顔を見せたが、ガラリと変わったわけではない。昨年はアルテオンシューティングブレークで登場で、「おっ!」と二度見させたが、ゴルフやパサートが牽引するオーセンティックな方向性はいまだ強い。
そんな中もうひとつのオーセンティックモデル、ポロがマイネーチェンジした。ゴルフのコンパクト版として登場したポロも現行型は6世代目。1975年のリリースから脈々と歴史を積み上げている。世界市場では累計生産台数1800万台以上、日本での累計販売台数は約30万台にも及ぶそうだ。その意味ではなかなかの人気モデルと言っていいだろう。コンパクトなサイズと使い勝手の良さ、信頼性が高く評価されている。
今回のハイライトはフロントフェイスを中心とした意匠変更とパワートレインの進化、それと上級モデルに採用される運転支援システムを取り入れたこと。前後バンパーの形状が変わったことで、全長が若干伸びたし、エンジンはミラーサイクル化したことで高効率を実現している。先進安全技術はパサートやアルテオン、ティグアンに採用されるレベルのものが搭載された。先進技術は開発時のコストから高額車に積まれるが、ある程度台数が出ることで価格がこなれると、もっと身近なモデルにも採用される。

試乗したのはTSIスタイル。エントリーにアクティブベーシックがあり、トップレンジにRラインがあるその中間だ。エンジンはどれも1.0リッター直列3気筒ターボのTSIで7速DSGと組み合わされる。ホイールサイズは16インチだった。
では実車を目にした印象だが、かなり二枚目に思えた。これまでのポロは可愛らしさを同居されていたが、今度はクールな装いだ。その意味でターゲットは男性?と思いきや、カタログには女性モデルも写っていれば、男性モデルもいた。
走りはこれまで通りVWらしく、スパッと切れるすっきりしたハンドリングと適度なロール、それと硬すぎない乗り心地が継承される。16インチはコーナーでのスタビリティが高いと同時に、乗り心地もしっかり担保してくれた。ただ、パワステの戻りの強い反力と、パドリシフトのフィーリングは気に入らない。パワステはもう少し越しナチュラルに、パドルシフトはカチカチと手応えがあるとさらに走りは楽しめるだろう。それでもATモードのシフトチェンジのタイミングは絶妙である。
いずれにせよ、VWゴルフ好きのワタクシとしては全てが許容範囲で、ほぼ好きなテイストに仕上がっている。普段から一人でクルマに乗って移動している我々にはいい相棒になるだろう。どんなに疲れていても、ステアリングを切ることの楽しさは求めたいし、それにより元気が出るのは目に見えている。その意味で、今回のポロも合格点なのは間違いない。あとはボディカラーだが、今回は白、黒、シルバー、よりもカタログで使われるバイオレットやブルーの方がいい気がする。ということは、意外と保守王道路線からズレているのかも。個性的なポロもワルくないんじゃない!
