輸入車
更新日:2022.04.05 / 掲載日:2022.03.31
日本導入に期待の電気ミニバン「ID.BUZZ」はこんなクルマ

文●岡本幸一郎 写真●フォルクスワーゲン
思い起こせば、筆者も取材に行っていた2017年1月のデトロイトモーターショーのVWブースで、衝撃的なコンセプトカーが公開されたのが「ID. BUZZ」だ。V字型のラインで2トーンに色分けされた象徴的なフロントにはじまるチャーミングなデザインは、誰の目にも「ワーゲンバス」の再来と映ったことはいうまでもない。ちなみに向こうでは、ワーゲンバスを「Bulli(ブリー)」と呼ぶそうだ。
それから5年あまりが経った2022年3月9日、いよいよその市販版がニューモデルとしてハンブルクで発表された。欧州のいくつかの国で5月から受注がスタートし、秋にデリバリーが始まる予定という。
「ID.」というのはVWの新世代EVの名称で、すでに乗用タイプの「ID.3」、「ID.4」、「ID.5」らが欧州で発売されている。ID.BUZZのプラットフォームも、一連のID.シリーズと同じく、VWグループが今後の電動化を念頭に開発した「MEB(モジュラー エレクトリック ドライブキット)」をベースに、最高出力150kWのモーターを搭載し、かつての「T1」と同じく後輪を駆動する。

サンドイッチ構造のフロアに実容量77kWh(総エネルギー容量:82kWh)のリチウムイオンバッテリーが統合されており、適正な重量配分と低い重心と軽量な電気駆動システムによる優れたハンドリングを実現しているという。一充電での走行距離は、スペックからすると400km程度と予想できそうだ。
充電については最大170kWの出力での急速充電が可能で、約30分でバッテリーを80%まで充電することができる。最新の「ID. software」を使用すれば、ゆくゆくはISO規格による互換性のあるDC急速充電ステーションの充電コネクターを接続するだけで車両が自動的に認証される「プラグ&チャージ」機能も利用できるようになる。専用のDC双方向ウォールボックスを介してV2Hにも対応している。これらをいずれ導入されるであろう日本でもぜひ使えるようにして欲しいところだ。

ボディサイズは4712mm×1985mm×1937m、ホイールベースが2988mmと、全長はノア/ヴォクシーなどの日本のMクラスミニバンと同等ながら、ホイールベースが長くて全幅がワイドな特徴的フォルムを呈している。見てのとおり全体的に丸みを帯びたクリアなフォルムも効いて、0.285と乗用車なみのCd値を達成している点も特徴で、これが航続距離の拡大に寄与することも期待できる。



広大な車内空間は5人の乗員がゆったりと快適にすごせるよう、ラウンジのようなフレンドリーな雰囲気に仕立てられている。ただし、リサイクルされた合成素材が使われていて、リアルレザーは一切使用されていない。荷物を積むためのスペースも1121リットルの容量が確保されていて、2列目シートを折りたたむと積載量は最大2205リットルに増加するというから、かなりの広さだ。
また、これとは別に、2or3人乗りのフロントシートと2枚のユーロサイズ(1200mm×800mm)のパレットを横方向に積載可能な3900リットルもの積載スペースを持ち、固定パーティションで仕切ったカーゴ仕様もある。
運転支援技術についても、スウォーム(群知能)データを活用したTravel Assistや自動パーキングといった最先端のアシストシステムが与えられている。ID.BUZZは、完全自動運転モードを備えた世界初の多目的EVバンになるとVWではアナウンスしている。
2020年のコンパクトハッチバック「ID.3」を皮切りにスタートしたVWのEV攻勢は予想をしのぐ勢いで伸長している。一連のID.シリーズの日本導入時期については、報じられているとおり半導体不足や新型コロナ感染状況などの影響によりまだなんともいえないようだが、往年のワーゲンバスの人気が高く、いまだに相当な数が存在しているといわれる日本では、とりわけ「ID.BUZZ」の導入に期待する声は小さくない。少しでも早く実現するよう、楽しみにして待つことにしたい。