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更新日:2021.06.14 / 掲載日:2021.05.17

【試乗レポート VW 改良新型ティグアン 】マイナーチェンジの焦点はパワートレイン強化

VW ティグアン

VW ティグアン

文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス

 このクラスのSUVの先駆者として2007年に誕生したティグアンは、当初はトゥアレグの弟分というイメージが強かったものの、やがてすっかりこちらがメインストリームとなり販売も急上昇した。MQBを採用した現行の第2世代は、2019年にはグローバルでなんと91万台超が生産されたほどで、欧州ベストセラーSUVにまでのぼりつめた。競合しそうな相手の居並ぶ日本でも、発売された2017年1月~2021年3月の4年あまりで1万7012台が販売されたというから、まずまず順調といえる。

 そんなティグアンに現行型で初のマイナーチェンジが実施された。デザインが刷新されたのは一目瞭然。LEDヘッドライトや特徴的なラジエーターグリルなどにより、これまでにも増して力強いスタイリングを実現している。

パワートレイン強化の恩恵

VW ティグアン インテリア

VW ティグアン インテリア

 走りにおけるポイントはパワートレインの強化だ。エンジンが従来の1.4 TSIから気筒休止機能を備えた新しい1.5 TSIとなり、6速から7速になったDSGはクラッチが乾式単板から湿式多板になったことも強調しておきたい。150馬力と250Nmを発生する新エンジンにVWの他モデルでは乾式DSGが組み合わされるところ、ティグアンはSUVゆえトーイングのような用途にも対応するため、より対応可能トルク容量の大きな湿式とされたのだ。

 これがドライバビリティの向上にも大いに効いている。半クラッチのシビアな乾式単板に対し、湿式多板であればスムーズでトルクを絞らずにすむので、出足でもたつくこともなく、従来よりもずっとトルクがリニアに力強く立ち上がるようになった。おかげでクルマが軽くなったように感じられる。筆者はかねがね、すべてのDCTを湿式多板クラッチにするべきだと考えているのだが、今回もあらためてそう思った。さらにはエンジンフィール自体もよりなめらかになっているほか、気筒休止機能についても条件がそろって2気筒に切り替わってもまったく何も感じられない。

R-LineはDCCの有無が選択可能

R-LineではDCCの有無が選択できる。乗り心地はDCCありのほうがしっとりして上質

R-LineではDCCの有無が選択できる。乗り心地はDCCありのほうがしっとりして上質

 足まわりに関する変更は伝えられておらず、サスペンションや電動パワステのセッティングは共通ながら、グレードによりタイヤサイズやDCCの有無などが異なるため乗り味もそれぞれだが、いずれもいつもながらVWらしい正確なハンドリングはさすがというほかない。

 販売比率は「エレガンス」が約半分に達しているが、多くの読者にとって気になるのはスポーティな「R-Line」ではないだろうか。実際ティグアンにおいても3~4割を占めるほど人気は高く、ルックスは見てのとおりで、ステアリングの形状が走りを意識したものとなり、タイヤも255サイズに太くなるため、より手応えが増してグリップ感が高まるなど、走りへの期待にも応えている。

 R-LineではDCCの有無が選択でき、写真のDCCなしではタイヤが19インチとなり、22万円高のDCCパッケージを選ぶと20インチタイヤとなる。やはりDCC付きのほうが乗り心地がしなやかでフラット感があり、より上質な走りを味わうことができるが、クルマの動きが素直で、ひきしまった足まわりによりスポーティな走りが楽しめるDCCなしの“素”の味わいをむしろ好む人も少なくないように思う。

「T」との差はそれなりにある

新しい「Tシリーズ」が登場しても、ティグアンには上質感という独自の魅力がある

新しい「Tシリーズ」が登場しても、ティグアンには上質感という独自の魅力がある

 アップデートされた運転支援システムやコネクティビティ機能については、時間の限られた中では十分にその真価を知るまでは試せなかったものの、機能の充実ぶりと性能の高さをうかがいしることはできた。最新世代のインフォテインメントシステムは、やや先を行き過ぎた気もしなくはなかったのだが、それぞれ今後、機会があればぜひじっくり試してみたいと思う。

 いまではVWのSUVラインアップに「T」の名の付く弟分も加わったため、ティグアンは同門にも競合を持つことになったわけだが、やはりサイズの違いによる機能性や居住性の違いは小さくなく、内外装や走りの質感や装備なども明らかに“格上”であることを感じさせるなど、それなりに差はある。各部に豊富に設定された収納スペースも、それぞれ使いやすいよう配慮されているあたりにもあらためて感心する思い。総合力ではずっと上回ることには違いない。

 また、新型ティグアンの導入を記念して設定された、シックなコーディネートが魅力の特別仕様車「ファーストエディション」も気になる存在だ。さらには今年後半に日本上陸予定というVWのSUV初のハイパフォーマンスモデルとして追加された「ティグアンR」も、はたしてどのような走りを楽しませてくれるのか、大いに期待したく思う。

執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏

自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏

1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

フォルクスワーゲン ティグアン TSI Rライン(7速AT・DSG)

■全長×全幅×全高:4520×1840×1675mm
■ホイールベース:2675mm
■車両重量:1520kg
■エンジン:直4DOHCターボ
■総排気量:1497cc
■最高出力:150ps/5000-6000rpm
■最大トルク:25.5kgm/1500-3500rpm
■サスペンション前/後:ストラット/4リンク
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:225/45R19
■新車価格帯:407万9000円-684万9000円

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グーネットマガジン編集部

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