輸入車
更新日:2020.01.30 / 掲載日:2020.01.30
メルセデス・ベンツ日本が2020年の戦略を発表

メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏(右)とメルセデス・サポート選手の稲見萌寧選手(左)
文と写真●内田俊一
メルセデス・ベンツ日本は都内において2019年の振り返りと2020年の展望についての新春記者会見を開催した。
ほぼ一昨年並みの水準を維持

登壇するメルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏
2019年、メルセデス・ベンツの新車販売状況は、グローバルで過去最高となる234万台を達成し、9年連続で販売記録を更新。4年連続でプレミアムカーセグメントにおいて首位を獲得した。ダイムラー社およびメルセデス・ベンツ社の会長であるオラ・カエリアス氏は、「変革が進む自動車業界において、リーディングカンパニーとして持続的な成長を続けていくために、研究開発や環境への取り組みに注力していきます」とコメント。
そして日本では、約6万6000台と、一昨年からは1.5%減少したものの、5年連続純輸入車ナンバーワン。そして7年連続プレミアムブランドナンバーワンと、「好成績を残すことが出来ました」とはメルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏の弁。ショート要因として上野氏は、「猛威を振るった自然災害や一部のモデルで配車遅延が発生した影響で前年(とくに9月以降)を若干下まわりましたが、高水準で維持することが出来ました」と評価。一方スマートは1,990台と19.9%前年度を下まわった。これは「電動化シフトやモデルサイクルの関係です」と理由を説明。
そして、ほぼ一昨年と同レベルの実績を収めることが出来たのは、「商品力の強化とマーケティング活動の相乗効果だと考えています」と上野氏。
2019年は、「主力モデルであるCクラスに加えて、年初から続々と新型車を投入したコンパクトモデル、SUV、ハイパフォーマンスのメルセデスAMGなどのモデルが台数を牽引(けんいん)し、2018年と同水準の販売を維持することが出来ました」という。
Cクラスは安全性、快適性、動力性能などのあらゆる面において高い評価から、「2015年以来セグメント首位の座を継続」。コンパクトモデルは、「2018年に発売したAクラスをフルイヤーで販売することが出来たほか、AクラスセダンやマルチパーパスコンパクトのBクラス、スタイリッシュなデザインで人気のCLAと続々と新型を導入したことで、メルセデス・ベンツの販売全体の約3割を占めるまでに成長しています」と述べる。
さらに、SUVに関しても「根強い人気で堅調に推移し販売を支えました。昨年はGLC、GLEの新型を発表し、現在輸入車最多の8車種を取りそろえています」とのことだ。
そしてメルセデスAMGは、「過去最高となる8,000台を超える販売を記録しました」。とくに販売に貢献したのが、「昨年新たに追加した新しいモデルで、AMGらしい力強い走行性能と公道での気持ち良いドライビング感覚の両方を実現したA35シリーズ。そしてAMGが追求するドライビングパフォーマンスやエモーショナルなデザインを備えながら、4ドアの利便性を併せ持つメルセデスAMG GT 4ドアクーペです」とした。
よりメルセデスを体験してもらう

マーケティング面においては、「より多くのお客様にメルセデス・ベンツに親しんでもらうため、ブランド体験の提供に注力してきました」とし、その理由を、「メルセデスのコンパクトモデルは販売全体の約3割を占めていますが、その半数以上が新規顧客で国産車からの乗り換えです。そこで短期的な(ブランド体験)活動だけではなく長期的な視点でメルセデスの魅力を知ってもらうのが、新しいお客様にメルセデスを選択肢に上げてもらうためには何よりも重要なのです」と語る。
マーケティング活動の中心となるメルセデスme Tokyoは、2011年に開設したカフェやレストランを中心としたブランド情報発信拠点で、オープンから累計1000万人以上のお客様が来場。また、5ヶ月の期間限定で女性に向けた拠点を銀座にオープンしたほか、12月には品川プリンスホテルにもメルセデスmeを出店し、「新しいお客様との出会いの場としての役割を果たしています」という。無料の試乗プログラムであるトライアルクルーズやライフスタイルの様々な場面で利用出来るオリジナル商品、メルセデスベンツコレクションはとくに好評とのことだ。
さらに昨年末よりメルセデスme Tokyo NEXT DOORにおいてMinatoya3をオープン。港屋は、「蕎麦界の歴史を変えたと称され、伝説的な人気を誇った虎ノ門の名店です。日本一有名なサラリーマン、島耕作が愛したことでも有名ですし、私自身も大ファンで長蛇の列を前に涙を飲んだ経験がいくどもあります。Minatoya3では、ここでしか食べられない肉そばを提供します」と上野氏もかなりお気に入りの様子だ。
また10月には第46回東京モーターショーに出展。コンセプトカービジョンEQSを含む最新モデル14台を展示するとともに、オリジナル商品の販売も行い、「ブランドの今をこれまで以上に多くのお客様に体験してもらうことが出来ました。お客様からはメルセデス・ベンツを見ることが出来てうれしかったとの声を頂き、それだけでも出展した意味がありました」と振り返った。
そして、「2019年はあっという間でもありましたが、多数の新車を発表し、試行錯誤しながら新しいことにチャレンジ出来た1年でもありました」と総括した。
2020年は10車種程度ニューモデルを投入

2020年の活動について上野氏は、「新車販売台数は昨年同様の水準を維持します。昨年の実績である6万6000台はすでに高い水準に達していることから、このまま安定して販売していくための体制強化に注力した上で、企業として前年を上回る努力も継続的に行っていきたい」とコメント。
またメルセデス・ベンツ日本は、「最も愛されるブランド」をビジョンにしていることから、この実現のための前提として魅力的な製品があるうえで、「さらなるお客様サービスの展開のほか、幅広いマーケティング活動を通じて新しいお客様と出会い、ブランド体験を提供し、メルセデスを選んでもらいたいと思っています。さらにお客様一人一人に満足してもらい、継続的にメルセデスを選んでもらいたいのです」と述べ、「これらのことを最重要取り組み事項として、その結果、「今後も輸入車及びプレミアムブランドナンバーワンを維持したいのです」と展望を語る。
まず製品に関しては、「新型車を約10車種導入予定」と上野氏。コンパクトモデルでは、モジュラーフロントドライブアーキテクチャー2(MFA2)のAクラス、Aクラスセダン、Bクラス、CLA、CLAシューティングブレークを昨年までに導入していて、今年はさらにそのプラットフォームモデルの新型SUVを2車種追加、合計7車種になる予定だ。
また、メルセデスベンツSUVのフラッグシップともいえるGLSを「上半期中に導入する予定です。また昨年AMGの販売を牽引(けんいん)したA35シリーズもよりラインナップを拡充しAMGのドライビングパフォーマンスを多くのお客様に体感してもらうことを目指します」という。
さらに「CASE戦略の推進に欠かせない電動モデルを続々と展開します」と上野氏。昨年はメルセデス・ベンツ初の電気自動車EQCや日本初のクリーンディーゼルプラグインハイブリッド乗用車のE350de、世界初の燃料電池プラグインハイブリッドのGLC F-CELLを導入。「これら昨年発表した電動モデルの本格配車が始まるだけでなく、新たに電動モデルを投入する予定です」。同時に水素ステーションを展開しているJXTGエネルギーや東京ガスとともに、「燃料電池自動車や水素ステーションの普及活動を一緒に推進していく予定です」と述べた。
CASE戦略もより力を入れて
そのほかCASE戦略では、現在のMBUX搭載車両は販売全体の3割であるが、年内にはそれを7割まで拡大させるほか、オンラインの申し込みで安全運転支援システム、レーダーセーフティパッケージを無償で提供するキャンペーンを行う(コンパクトモデル/Cクラス)。
またシェアアンドサービスは、2019年には本格稼働したレンタカーサービス、メルセデスベンツレントを北海道から沖縄まで全国に21のスポットを展開。「那覇空港では現在7台のレンタカーを用意していますが、休日は予約でほとんど埋まってしまうほどの人気です。今後スポットと設置台数を拡大し、さらにお客様の利便性を高めて行く予定で、早速2月1日からは新千歳空港にも新たにスポットがオープンします」という。
社会貢献はスポーツを軸に

メルセデス・サポート選手として発表された稲見萌寧選手
2020年は東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたる年であることから、「スポーツ支援により力を入れていきます」と上野氏。メルセデス・ベンツはスポーツ支援を社会的責任の一つととらえ、テニス、野球、自転車競技、F1やスーパーGTなどのモータースポーツなどグローバルはもとより日本でも様々な分野でサポートを行っている。「とくにゴルフは我々のお客様の7割近くが趣味にされるほど、大変人気の高いスポーツです。多くのゴルファーがクルマで移動するので、メルセデスを身近に感じてもらう非常に良い機会と考え、2012年より日本女子プロゴルフ協会、2019年より日本ゴルフツアー機構のオフィシャルパートナーとして活動を支援しています」という。
また、シーズンを通じて日本各地を転戦する選手の移動などを支援するメルセデス・サポートも行っており、現在7名の選手と契約。今年から新たに日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)メルセデス・サポート選手として稲見萌寧選手をサポート。「稲見選手は一昨年プロテストに合格し、昨年センチュリー21レディースで初優勝を飾り、更なる活躍が期待されている選手です」と上野氏は紹介し、稲見選手は、「メルセデス・サポート選手の一員として東京オリンピックの出場を目指して頑張ります」と抱負を語った。
CS活動強化で継続的にメルセデスを選んでもらう

本年の重点項目ではCS活動も挙げられた。「お客様一人一人に満足してもらい継続的にメルセデス・ベンツを選んでもらうためです」と上野氏。アフターセールスでは、「新車販売の好調な推移に伴い、日本におけるメルセデス・ベンツの保有台数は過去最高の76万台に達しました。2020年中には対前年比+3%の78万台を超える見込みで、今後も増加することが予想されます」と現状を踏まえ、2010年よりオーナー表彰制度を実施。「表彰状と感謝状に加え、ご愛顧の証としてメルセデスのエンブレムを進呈し、開始からすでに2万件以上の申し込みをいただいています。このように継続してメルセデスを選んでもらうためには、お客様一人一人に正規販売店によるメンテナンスや修理を通じて、安心なカーライフを提供していくことが不可欠なのです」と強化の背景を説明。
そのために本年は3つの点に注力する。まずはサービスキャパシティの拡大だ。「保有台数の増加に対応して人員、施設を含むサービスキャパシティを2023年までに昨年比で約16%拡大し、スムーズで確実な点検・整備を行えるよう計画を進めています」という。とくにメカニックの人材確保では、自動車整備学校の小山学園と提携し、2016年よりメルセデス・ベンツコースを新設。「既に2期41名の卒業生が正規販売店に入社。今年4月には新たに21名の卒業予定者も仲間に加わる予定です。その他にも全国15校の自動車整備学校に出向き授業を行う予定です。こうした活動を通じ、メカニックの確保を継続して取り組んでいきます」と述べる。
次にサービスプログラムの拡充が挙げられた。現在メルセデス・ベンツのアフターセールスのベースとなるのは新車購入から3年間走行距離無制限で、一般保証と定期メンテナンスおよび24時間ツーリングサポートを無償で提供する“メルセデスケア”である。そこに「3月より4年目、5年目の“メンテナンス&保証プラス”を追加。さらに5年間のメルセデス・ベンツ保険を組み合わせた“あんしんMAX”に加入してもらうという提案を積極的に行なっていきます。このプランを選んでもらえれば5年間は車検時の諸経費以外の出費がほとんどかからないうえ、メンテナンス&保証プラスは従来のプログラムより2万円お得です。このほかにもお客様のニーズに合わせたサービスプログラムを用意することで、すべてのお客様に安心のカーライフを楽しんでもらえるよう努力していきます」と語る。
3つめはメルセデスミーコネクトを利用したアフターサービスの円滑化だ。メルセデスミーコネクトはクルマが通信することにより、車両機能の遠隔操作や情報の呼び出しが可能となるサービスだ。「搭載車両は本年中で累計20万台となる予定」とのことで、これらの車両はメンテナンスが必要となるタイミングでその情報を担当販売店が受信することが出来、遠隔で故障診断も可能だ。これによりお客様がサービス工場にクルマを持ち込まなくても、修理に必要な部品を事前にそろえることも出来るため、「スムーズなアフターサービスの提供につながります。さらにメルセデスミーコネクト装着前のモデルには、後付けでメルセデスミーアダプターを装着することで、車両情報などの通信が可能となります」と話す。
販売店ネットワークも重点項目に

もう一つ大きな重点項目として販売店ネットワークの計画がある。「販売現場である正規販売店においてはネットワークの拡充と、販売店スタッフの育成に注力します」と上野氏。「本年はダイムラーが展開する最新の販売店コンセプト、MAR2020を導入した体験型店舗の拡充を中心に、年内に約10拠点の新規開設、移転、改装を行なっていく予定です」とのことだ。
同時に、「お客様が新規来店から納車まで満足してもらうために、職種ごとにお客様対応のスキルを向上する機会も定期的に設けていきます」と述べ、「セールスマンはもちろん来店したお客様と最初にコンタクトするショールームスタッフや、商品説明を通じてクルマ選びのサポートをするプロダクトエキスパートは、お客様対応のキーパーソンとしての重要な役割を担っています。そこで年に1度全国から集まり、トレーニングやコンテスト、情報交換を通じて切磋琢磨しており、こうした活動を通じて販売店のハード、ソフト面の双方の向上を続けていきます」とした。
さらに中古車については、「初めてのメルセデスとして認定中古車から始まるお客様も多くいます。本年は認定中古車の認知度向上とさらなるブランド強化にも取り組んでいきます」とし、「今月から認定中古車のブランド名称をメルセデスサーティファイドと変更し、新しいブランド名のもと、高品質の商品と充実のサービスを提供します。また年内には約10拠点の中古車拠点が新規オープンするほか、今後は認定中古車の店舗にサービス機能も付加することでお客様の利便性をさらに高めていく予定です」と説明した。