輸入車
更新日:2019.12.04 / 掲載日:2019.12.04

電動化モデル特集/未来のクルマたち[電動化モデル最前線]

visual model : MERCEDES-BENZ EQS

写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2020年1月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。

いつでも、好きなところに移動できる自由。クルマがあるからこそ実現できるライフスタイル。その持続可能性を考えたときに、現時点におけるひとつの回答が電動化だ。再生可能エネルギーを活用することでカーボンフリーに近づくことができる電気自動車は、果たして愛車になりうるのか。もう手の届くところにまで近づいてきた未来のクルマたち。電動化モデルの最前線に迫る。

[2019年フランクフルトショー振り返り]いよいよEVウォーズがはじまる!

文●石井昌道、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


ドイツのフランクフルトで2年に一度開催される「IAA」、通称フランクフルトモーターショーはヨーロッパ自動車業界の潮流を示す重要なイベント。そこで見たのは驚くばかりの新型EVの数だった。

社運をかけてEVに舵を切ったVWグループ

 欧州のCO2排出量規制は、現在は企業平均目標値で130g/kmだが、2021年には95g/kmへと強化される。2018年の実績は欧州全体で120・5g/km、企業別ではハイブリッドカーが好調なトヨタがトップで99・9g/kmと2位プジョーの107・7g/kmを大きく引き離している。最大手のフォルクスワーゲンは118・8g/km、大型車の多いメルセデス・ベンツは139・6g/kmなどとなっている。現在の規制をクリアしている大半のメーカーにとっても、目前に迫った95g/kmはかなり高いハードルだ。
 欧州のCO2規制はEVおよびプラグインHVに有利なルールとなっており、何から発電された電気を使っていようともEV走行中はCO2排出量がゼロカウントとなる。だからこそ、このタイミングで各社から電動化車両がリリースされ、9月のフランクフルトモーターショーは、さながらEVウォーズの始まりを予見させるものとなったのだ。
 なかでも注目なのがフォルクスワーゲン。フランクフルトが市販車のワールドプレミアとなったID.3は、ビートル、ゴルフに続く第3の革命的なモデルとまで表明し、この発表に合わせて長年親しんできたロゴマークを変更するなど、まさに歴史が動いた瞬間になった。これまでもe―UP!やe―ゴルフといったEVを展開してきているが、MEBと呼ぶEV専用プラットフォームを新たに開発し、ID.3はその初出。今後さまざまな車種を展開し、グループ内はもちろんフォードなどへの外販もして2028年までに70車種2200万台を生産するという壮大な計画となっている。
 大量のバッテリーが必要になるためサプライヤーと協力していくが、社内のCoE(最先端技術研究所)が研究開発、調達、品質保証などでイニシアチブをとり、自社生産にも取り組んでいる。2050年までに生産も含めてCO2ニュートラルを目指す同社は、そこから逆算してロードマップを組み立てているのだ。
 ポルシェ・タイカンとアウディe―tronGTはJ1パフォーマンスプラットフォーム、ポルシェとアウディが共同開発し近い将来にミッドからラージサイズのセダンやSUVに採用されるPPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)も含め、グループには3つのEV専用プラットフォームがあり、既存のMQBやMLBエボもプラグインHVで採用していくという電動化の万全な体制が整っている。バッテリーの生産や全体的なCO2排出量削減なども含めてロードマップが組まれており、もう後戻りはできないぐらいに本気度が高い。
 EQという電動車のサブブランドを立ち上げているメルセデス・ベンツは、すでに発売しているEQCを始め、ミニバンのEQVやフラッグシップサルーンのEQSなどあらゆるカテゴリーでEVをラインアップすることを示唆している。いまのところEV専用プラットフォームこそ用意していないものの、比較的にボディサイズが大きめのモデルが多いので、そこまでスペース効率を追わずとも大容量バッテリーを搭載できるという強みはある。現状ではCO2排出量が多いブランドではあるので急ピッチでEQの普及を進めていく必要に迫られている。

Profile
自動車ジャーナリスト

石井昌道
レースの参戦経験を持つ自動車ジャーナリスト。日々、国内外で行われるニューモデルのテストドライブへ精力的に赴き、ステアリングを握る。

icon フォルクスワーゲン ID.3

 VWグループが2050年までにCO2ニュートラルの達成を目指すための最初の一歩となる量産EV。車載DCM、新型デジタルプラットフォーム「VW.OS」を搭載するなど意欲的な内容。航続可能距離は420km(WLTPモード)となっている。

icon フォルクスワーゲン ID.バズ(写真右)

 タイプ2のデザインを受け継いだEVバスのコンセプトモデル。完全自動運転機能を備え、ヘッドライトにより歩行者とコミュニケーションを図る。前後にモーターを備えた4WDで、航続可能距離は600kmとしている。

icon フォルクスワーゲン ID.クロズ(写真左)

 I.D.ファミリーとして3番目に公開されたSUVタイプのEVコンセプト。全高を抑えたスポーティなフォルムが印象的。ドアハンドルがないためわかりにくいが4ドアモデルとなる。航続可能距離は500kmを想定。

icon フォルクスワーゲン ID.ビジョン

 日本では未発売のフラッグシップセダン、フェートンの後継的役割の大型EVセダン。レベル5自動運転技術を備え、航続可能距離は665kmを目指す。観音開きの4ドアを備える贅沢な4シーター。

icon フォルクスワーゲン ID.バギー

 あらゆるボディタイプに対応できるというMEBプラットフォームの拡張性を示すために作られたコンセプトカー。市販予定はないものの、チャーミングなデザインはなかなか魅力的だ。

 すでに欧州でe-UP!を発売し市場のノウハウを取得しているVW。今後その流れが加速していくことは間違いない。

icon ポルシェ タイカン

 すでにワールドプレミアされていたタイカンだが、会場での注目度は非常に高く、期待の高さを感じさせた。800Vシステムを導入するなど、充電効率の高さも特徴。航続可能距離は407km~463km(WLTPモード)。

icon MINI エレクトリック

 英国本国では2019年7月に発売となったEV版MINI。32.6kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、最高出力184馬力のモーターにより前輪を駆動する。航続可能距離は270km(WLTCモード)となっている。

さしずめドイツブランドが全面ELECTRIC コンセプトモデルもずらり!

CO2削減に向けてEV化を急ぐ欧州勢

 BMWはドイツ勢のなかでもっとも早くから電動化ブランドの“i”を立ち上げ、i3やi8を発売してから長い経験がある。CO2ニュートラルな生産体制や重量級になりがちなEVのためにカーボンボディを量産化するなど、これまでもチャレンジングな姿勢をみせてきた。フランクフルトでは、ビジョンiNEXTとビジョンM NEXTという、より未来的なコンセプトカーを出展。ほかのブランドもそうだが、電動化のみならず、コネクテッドや自動運転も含めた自動車の完璧なデジタライズ化が新しい体験をもたらすことを表している。
 EV普及にとってはインフラの整備も重要なファクターだが、欧州ではフォルクスワーゲングループ、BMWグループ、ダイムラー、フォードなどが合弁でIONITYと呼ばれる充電ネットワークを立ち上げている。現在のところ166基の急速充電器を設置していて、さらに建設中が75基、2020年中には400基を計画している。日本では現在7700基の急速充電器が設置されていていわばリードしているカタチだが、すでに高速道路SAの一部では充電待ちが生じているところもある。IONITYはSAでは基本的に6基づつの設置とするなど、賢いところもみせる。
 また、今の日本のチャデモは出力が50kWで間もなく登場する次期型が120kW。それに対してIONITYは350kWもすでにスタンバイしている。欧州プレミアムブランドのEVは大容量バッテリーを採用しているので急速充電器の大出力化も急務なのだ。
 ホンダにマツダ、トヨタなどの日本メーカーも続々とEVの市販車を発表しているが、欧州のCO2排出量規制に照準を合わせてきたことは明白。すでにEVがエンジン車の販売台数を上まわっているノルウェーなど、ある程度の需要が見込めることも早めの欧州展開の後押しとなっている。
 欧州での急速な電動化のモチベーションとなっているのは、取材をしていても肌で感じられるほど温暖化への危機感が高いという背景がある。日米との温度差は小さくない。ロードマップをみれば多少の無理があったり、本当にそんな急速に普及するものだろうかという疑問がわくのも無理のないところだが、産業革命前に比べて2050年の平均気温上昇を2℃以下に抑えるというパリ協定の目標に対して、バックキャスティングで考えれば、これぐらい前のめりで取り組んでいかなければ間に合わないと思っているのだ。
 日本のメーカーも環境対応に長けているが、比較すれば現実主義で一歩一歩着実に積み上げていく、いわばフォワードキャスティング的な戦略といえる。また、欧州メーカーは電動化が強く求められる欧州と中国が主戦場であり、日本メーカーはアメリカでのシェアが大きく、より幅広い市場で展開しているという事情の違いがあるのだろう。
 いずれにせよ、欧州では電動化が急速に進むのは間違いない。それが社会にどんな影響をもたらすのか、今後を興味深く見守っていきたい。

icon メルセデス・ベンツ EQS

 持続可能性を持つ現代的ラグジュアリーカーのビジョンとしてデザインされたEVのコンセプトカー。新しいデザイン言語に加え、スポーツカーに匹敵するパフォーマンスと700km以上の航続可能距離を誇る。

icon メルセデス・ベンツ EQシルバーアロー

 メルセデスのチーフデザイナーであるゴードン・ワグナー氏がデザインを手がけたコンセプトカー。前後にモーターを備える4WDでシステム全体で750馬力を発生させ、400kmの航続可能距離を備える。

icon メルセデス・ベンツ EQV

 VクラスをベースにしたEVで駆動方式はガソリンモデルとは異なり前輪駆動。EV用のMBUXを備えるなどインフォテインメントも充実。可能距離は最大405km(WLTPモード)。

icon スマート EQ フォーフォー

 ガソリンモデルから一挙にEV専用モデルへと生まれ変わったスマート。EQフォーフォーは4ドアモデルでリヤをモーターで駆動。航続可能距離は最大153km(WLTPモード)。

東京モーターショーでも!

メルセデス・ベンツ GLC Fセル

 水素を燃料に発電を行い、モーターを駆動する燃料電池PHV。41kmのバッテリー走行が可能で、燃料電池モードを合わせて航続可能距離は336km。2020年中頃の導入予定で価格は1050万円。

メルセデス・ベンツ E 350 de

 2L直4ディーゼルエンジンに加えてモーターを搭載したプラグインHV。最長50kmのバッテリー走行が可能。近距離はEVとして使え、長距離ではディーゼルの低燃費が光る。価格は875万円。

icon BMW ビジョン M ネクスト

 よりピュアに運転する楽しさを追求したコンセプトモデル。エクステリアは、BMWの新しいデザイン戦略とも呼応するものになっているという。ボタンを押すだけで、さらにパワフルになるブースト+モードを備える。

icon BMW ビジョン i ネクスト

 自動運転時代の車内空間のあり方をテーマにしたコンセプトモデル。室内は美しさだけでなく、まるで自宅にいるかのようにくつろげ、さらにそこでの過ごし方も自由に選択できるように考えられている。

icon アウディ AI:トレイル クワトロ

 アウディが電動化および自動運転技術を備えたモデルとして展開している「AI」シリーズ。「AI:コン」は運転装置をもたない自動運転モデル。「ミー」は未来の都市部におけるモビリティがテーマでレベル4の自動運転技術を搭載。「レース」はEVのレース専用モデル。そして「トレイル クワトロ」はドローンを搭載しドライバーをサポートする。

  • アウディ AI:ミー

  • アウディ AI:レース

  • アウディ AI:コン

[もうすでに未来は始まっている]日本で買える輸入EV

文●ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、はめ込み合成です。


ハイブリッドカーに馴染み深い日本のユーザーにとって、モーターによるレスポンシブで瞬発力のあるEVの走りは、きっとすぐに馴染めるはず。エコ・コンシャスなだけでなく、ルックスも個性的で所有欲をくすぐってくれる、魅力的な輸入EVを紹介します。

想像以上に数が多い日本で買える輸入EV

 CO2排出規制の強化を前に、多くのメーカーが新型EVの開発に名乗りを挙げているのは、モーターショーの模様を振り返った記事のとおり。しかし、じつはすでに、日本に数多くの輸入EVが導入されていることは、意外と知られていない。
 ここでは、いま日本で購入できるEV7モデルを紹介しているが、こうして並べてみると、コンパクトカーからセダン、SUVまで、多彩なモデルが揃っていることに驚かされる。しかも、どれも限定販売や法人向けリースなどではなく、普通に購入できるものだ。
 それぞれ個性的なEVであるが、多くのモデルに共通するのがEV専用のスタイリングを備えるということ。EVらしさをアピールするのは、ある意味で黎明期であることの逆説的な証明でもある。だが、当然街中での注目度は高く、アーリーアダプターとしてのインセンティブとして素直に嬉しい。
 いずれにせよ、EVは「もうすぐやってくるもの」ではない。EVの時代はすでにもう始まっているのだ。

[ジャガー Iペイス]スポーティな走りでジャガーらしさを主張

 これまでのジャガーにはないEVならではのプロポーションが印象的なIペイス。200馬力を発生させるモーターを前後に搭載。比較的軽量な車体とスポーティな味付けのサス、そしてブレーキを用いたトルクベクタリング機構により、優れたコーナリング性能を実現している。

 タッチスクリーンを上下2段に並べたインフォテインメント系を採用。フロントシートのデザインからも想像できるとおり、EVであってもジャガーという名前にふさわしいスポーティな走りを提供する。
ジャガー Iペイス HSE(4WD・モーターによる無段変速)全長×全幅×全高:4695×1895×1565mm ●車両重量:2240kg ●モーター最高出力:400ps ●モーター最大トルク:71.0kgm ●バッテリー容量:90kWh ●航続距離:438km(WLTCモード) ●新車価格帯:977万円~1184万円(全グレード) ※写真はファーストエディション

[メルセデス・ベンツ EQC]電気自動車になっても乗り味はメルセデス

 電動化ブランドであるECから登場したメルセデス初の本格量産EV。デザイン面でも独自性は強く、空力的かつ未来感のあるスタイリングが特徴。モーターを前後に搭載する4WDで、状況に応じて駆動力を最適に配分する。0-100km/h加速は5.1秒と俊足で、航続距離は400kmを誇る。

 内外装にはEQブランドならではの専用デザインが与えられる。10.25インチの大型ディスプレイをふたつ並べたインフォテインメント系が先進的。室内の広さはGLCに準じる。ラゲッジ容量は標準状態で500Lと機能的だ。
メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC(4WD・モーターによる無段変速)※諸元は欧州参考値 全長×全幅×全高:4761×1884×1623mm ●車両重量:2495kg ●モーター最高出力:408ps ●モーター最大トルク:78.0kgm ●バッテリー容量:80kWh ●航続距離:400km ●新車価格帯:1080万円~1200万円(全グレード)

[テスラ モデル3]EV普及の起爆剤と期待される実用車

 EV専門メーカーであるテスラからついに登場した普及価格帯モデル。オーソドックスな4ドアでありながらも、短く低いフロント、リヤエンドまで大きく弧を描くルーフによってテスラらしさが表現されている。ユニークなのは、操作系が極めてシンプルに設計されていることで、ほとんどすべての操作を15インチのセンターディスプレイを通じて行う。グレードにもよるが、航続距離が560km(WLTPモード)と長いのも好印象。

 アルミとスチールを組み合わせたボディは高い安全性を提供。グレードにより1モーターまたは2モーターが存在する。最高速度は261km/h。
テスラ モデル3 デュアルモーターAWD パフォーマンス(4WD・モーターによる無段変速)※スペックは北米参考値 全長×全幅×全高:4694×1849×1443mm ●車両重量:1847kg ●モーター最高出力:450ps ●バッテリー容量:75kWh ●航続距離:560km ●新車価格帯:511万円~717万3000円(全グレード)

 シンプルな構成のインテリア。物理スイッチはハザードなどごくわずかで、基本的な操作は中央の15インチモニターのメニューを通じて行う。ゆるやかにアーチを描くルーフラインのおかげで室内空間も広い。日本仕様は右ハンドル。

[テスラ モデルX]最新モデルではメカを大幅アップデート

 高級SUVであるモデルXは、2019年に内部メカニズムの内容を大きく改良。それにともないグレード体系を「ロングレンジ」、「パフォーマンス」とした。パフォーマンスの0-100km/h加速は3.6秒。ロングレンジモデルの最大航続距離が505kmとなった。
テスラ モデルX ロングレンジ(4WD・モーターによる無段変速)※スペックは北米参考値 全長×全幅×全高:5036×2072×1684mm ●車両重量:2554kg ●モーター最高出力:541ps ●バッテリー容量:100kWh ●航続距離:505km ●新車価格帯:1110万円~1348万円(全グレード)

[テスラ モデルS]圧倒的な加速性能を発揮する高級セダン

 こちらも大幅改良によりドライブトレインをブラッシュアップ。パフォーマンスアップと航続距離の延長、充電所用時間の短縮を実現している。また、エアサスペンションの改良によって乗り心地もさらに洗練された。その一方で、804Lにおよぶ収納スペースには変わりがない。
テスラ モデルS パフォーマンス(4WD・モーターによる無段変速)※スペックは北米参考値 全長×全幅×全高:4970×1964×1445mm ●車両重量:2241kg ●モーター最高出力:789ps ●バッテリー容量:100kWh ●航続距離:560km ●新車価格帯:1035万円~1281万円(全グレード)

[BMW i3]美しい内装は再生可能な素材で作られている

 運転の歓びと環境との調和にBMWが真剣に取り組んだのがBMW i3。製造にあたってBMWは再生可能エネルギーを利用する工場を建設、室内に使われる素材もリサイクル可能なものとこだわっている。大人4人が快適に移動できるシティコミューターだ。
BMW i3 ATELIER(モーターによる無段変速)全長×全幅×全高:4020×1775×1550mm ●車両重量:1320kg ●モーター最高出力:170ps ●モーター最大トルク:25.5kgm ●バッテリー容量:42.2kWh ●航続距離:360km(WLTCモード) ●新車価格帯:554万円~603万円(全グレード)

[フォルクスワーゲン eゴルフ]世界のスタンダードカーが電気自動車になった

 世界のスタンダードカーのEVモデル。室内空間を犠牲にすることなくリチウムイオンバッテリーを搭載しているのが特徴で、装備なども通常のゴルフに準じる。航続距離はJC08モードで301km。1モーターにより前輪を駆動し、レスポンシブでスムーズな加速を披露する。
フォルクスワーゲン eゴルフ(モーターによる無段変速)全長×全幅×全高:4265×1800×1480mm ●車両重量:1590kg ●モーター最高出力:136ps ●モーター最大トルク:29.5kgm ●バッテリー容量:35.8kWh ●航続距離:301km(JC08モード) ●新車価格帯:544万8000円

[FORMULA E 2019-2020]静かで熱いバトルがスタート

文●ユニット・コンパス 写真●メルセデス・ベンツ、ポルシェ、DS、アウディ、BMW、ジャガー
※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
メルセデスとポルシェが参戦するなど、ますます盛り上がる電気自動車によるレース。今シーズンはまだ始まったばかりだ。

新シーズンが開幕!盛り上がるEVレース

 電動化時代のモータースポーツとして、年々人気が加速しているのが、フォーミュラE。フォーミュラカーの形をした電気自動車によるレースで、2014年から開催されている。
 当初は参加チームも少なく、また搭載するバッテリー容量の関係から途中でマシンを乗り換える必要があるなど、いかにも発展途上の様相だった。しかし昨シーズンからマシンが第2世代へと進化して1台でレースを走りきれるようになり、ルールが改正されたこともあって非常に見ごたえのある競技へとレベルアップ。年を重ねるごとに人気も高まっている。
 EVであるため騒音が少なく、大都市の特設会場でレースが行われるのも特徴的。ニューヨークのブルックリンで、自由の女神を背景にマシンが競い合う「映える」レースなのだ。
 また、EVならではのルールもレースをおもしろくしている。選手は、コースの特定の場所に設置されたアクティベーションゾーンをとおることで最高出力がアップする「アタックモード」の権利が取得でき、これによりバトルを有利に進められる。一方で電力を使いすぎると完走できなくなるリスクがある。さらに、観客の投票によって出力が上がる「ファンブースト」が導入されているのもユニーク。
 2019ー2020年シーズンは、11月末にサウジアラビアで2戦(ダブルヘッダー)を開催。第3戦は1月18日にチリで行われる予定だ。

ポルシェが発表した「99Xエレクトリック」。命名の由来は、プロジェクトの重要性を表す99という数字とEVの将来性にちなんだXを組み合わせた。

DSは昨シーズン初参戦にあたり2017-2018シーズンの世界王者であるジャン=エリック・ベルニュを獲得。見事タイトルを獲得している。今シーズンは連覇に向けて、さらにその陣容を厚くしている。

フォーミュラEには、アウディ、BMW、ジャガーといったお馴染みのブランドが参加し、しのぎを削っている。毎戦のように勝者が変わるため観戦していておもしろいのも特徴。BS放送やネット配信で視聴可能だ。

[普及のポイントは航続距離!?]EVの使い勝手を左右する充電のいま

文●ユニット・コンパス 写真●メルセデス・ベンツ、ポルシェ、ユニット・コンパス
EV導入の大きな障壁といえるのが充電環境。国を挙げての取り組みにより、じつはかなりのスピードで状況は変化している。

想像以上に進んでいる充電設備の充実度

 EVに必要不可欠な充電。現在はふたつの方法が用意されている。ひとつは100V/200Vを使う普通充電で、フル充電にするのに8時間から15時間程度必要。一方の急速充電は1回あたり30分の使用で百数十km程度走行可能となる。
 一般的には自宅の給電ユニットで夜間に充電し、必要に応じて出先で急速充電する流れとなる。国土交通省の調査によれば、一般ユーザーの走行距離は100km未満が平日は96%、休日でも93%となっており、現在販売されている輸入EVであれば、ほとんどの場合は途中での急速充電器を必要とせずに帰宅できると考えられる。
 しかしユーザー側の心理とすれば走行距離に余裕をもっておきたいもの。そこで各メーカーは全国各地の充電ステーションと提携し、定額制で利用できるサービスを提供している。ナビでルートを検索した際に、途中で充電を行うようサジェスチョンするものも増えてきた。
 また、充電設備についても従来のSAやディーラーに加えて、レストランや道の駅、コンビニといった立ち寄りやすい場所への設置も進んでおり、7600基以上が稼働中。
 将来に向けては、超高出力タイプの急速充電規格を策定し、100km走るために必要な充電時間が短くなるよう取り組みが行われている。2015年からの新型では15分ほどまで短縮されたが、将来的には10分以下を目指し開発中だ。

2018年時点で約3万基普及

急速充電:7,684基
普通充電:22,287基

※データは2018年時点 ゼンリン調べ。

  • 写真のEQCの場合、急速充電器を使えば30分ほどの充電で約120km走行可能になる。ナビのルートには途中の充電ポイントも示される。

  • バッテリーの性質上、冬季には性能が下がり航続距離が低下する。各自動車メーカーはテストを重ね、エアコンなどにも改良を重ねている。

ポルシェ初のEVであるタイカンのバッテリーユニット。バッテリー温度を一定範囲内に保つためのシステムが備わっている(写真右)。

[電動化モデル]最新中古車事情

フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

文●ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
※中古車参考価格はすべてグーネット2019年11月調べ。

ここ数年エコカー、とくにモーターを組み合わせた環境対応モデルが増えてきた。今回は、最近主流のPHEVをはじめ、1世代前に多かったHV、これから増えるであろうEVの3タイプに分けて中古車をご紹介!

[PHEV]エンジンのほか大容量のバッテリーとモーターを備え、外部充電を可能にしたPHEVは電動化モデルの基本形。

フォルクスワーゲン ゴルフ GTE/新車時のおよそ半額で買えるように

 2015年9月に登場したゴルフのPHEVが「GTE」である。当時の新車価格は499万円と、プレミアムミドルクラスセダン級のプライスだったが、現在の中古車相場はかなり落ち着いている。平均価格は250万円ほどで、新車時のおよそ半額。4~5年落ちの物件ならば200万円台前半の予算から購入可能となっている。GTEという名称のとおり、エコカーながらもスポーティな位置付けで、走りが楽しいモデル。8.7kWhのリチウムイオン電池を搭載し、モーターのみで53.1kmの距離を走行可能だ。
中古車参考価格帯:180万円~320万円(※15年~19年 GTE)

フロントのエンブレムから外部充電が可能。エンジンは、1.4L直噴ターボを搭載し、これに109馬力のモーターが組み合わされている。

チェック柄のシートは、GTIを彷彿させる。未来のスポーツモデルのありかたを提案したと言ってもいい。使いやすいコックピットまわりが好印象。

BMW 330e/物件は少ないが価格は手頃に

 内燃機関車とは異なり、PHEVは物件数が少なく、中古車として若干探しにくい。しかし、2016年の日本導入時の価格は554万円~599万円で、現在は200万円台から探せるため、値落ちの幅は大きいことに注目。エンジンは2L直4ターボ+8速ATを搭載し、動力性能も十分。良質な物件が見つかれば検討したい。
中古車参考価格帯:200万円~440万円(※16年~19年 330e)

エンジンは、184馬力の2Lターボを搭載。外部充電はボディサイドから行う。

コックピット、外観ともに標準の3シリーズと大きく異なる点はないが、リヤのエンブレムで識別可能である。

BMW 740e/物件数が豊富なハイエンドPHEV

 2016年に追加された7シリーズのPHEV。258馬力の2Lターボに高出力モーターを組み合わせ、3Lターボ並みの動力性能を実現し、42kmをゼロエミッションで走行可能。新車時は1000万円超の高額モデルだったが、現在は500万円以下の物件も目立つ。ほとんどが1万km未満の低走行なのも魅力的だ。
中古車参考価格帯:430万円~750万円(※16年~19年 740e)

ラグジュアリーカーらしい佇まいのインテリア。リヤシートの居住性も十分。静粛性も申し分なしだ。

メルセデス・ベンツ GLC 350 e/3年落ちで400万円台からねらえるPHEV

 2016年にデビューしたミッドサイズSUVのGLC。2Lターボに116馬力のモーターを組み合わせ、外部充電を可能とした「GLC 350 e」も設定されている。発売してからおよそ3年だが、物件数はそれほど多くない。しかし、新車時から200万円ほど相場が下がり、お買い得感は十分。リセールバリューも高いだろう。
中古車参考価格帯:430万円~680万円(※16年~19年 GLC 350 e)

SUVながらもCクラスセダンのようなカジュアルな感覚で運転できる。充電口は右のリヤタイヤの辺りにある。

BMW i8/高値安定だったが1000万円以下の物件も

 新車価格がおよそ2000万円のPHEVスポーツカーが「i8」。エンジンは1.5L直3ターボを搭載するが、高出力なモーターを組み合わせることで高い動力性能を実現。最長35km(初期型)を電気のみで走行可能。中古車は高値が続いていたが、最近は1000万円を切る物件も存在する。今後の動向に期待したい1台だろう。
中古車参考価格帯:970万円~1700万円(※14年~19年 全グレード)

一見すると2シーターだが、リヤシートを備えるモデルも存在する。快適性も重視したスポーツカーと言えよう。

ポルシェ パナメーラ S Eハイブリッド(先代)/環境性能と動力性能を両立した快速ツアラー

 2013年に登場したパナメーラのPHEVが「S Eハイブリッド」。333馬力の3LV6スーパーチャージャーにモーターを組み合わせ、高い動力性能を実現している。パナメーラの中古車は、多くがガソリンV6モデルとなっており、電動化シリーズは物件がごくわずか。しかし先代ならば500万円の予算から探せる。
中古車参考価格帯:500万円~790万円(※13年~16年 S Eハイブリッド)

コックピットは標準のパナメーラとほとんど差はない。エンジン単体で333馬力と、非常に高い動力性能を誇る。

[HV]モーターを備えるが、外部充電はできないタイプのハイブリッドモデル。ひと世代前の輸入車はこれが中心だった。

メルセデス・ベンツ Sクラス ハイブリッド(先代)/先代Sクラスのハイブリッドがお買い得

 10年ほど前、プレミアムブランドは量販小型車ではなく上級モデルへの電動化に積極的だった。Sクラスもそんな1台で、2009年9月に「ハイブリッド ロング」を初導入。3.5LV6エンジンに、ハイブリッドモジュールを組み合わせ、10・15モード燃費は11.2km/Lと、このクラスのセダンとしては優秀な燃費性能を誇った。10年経った現在、先代Sクラスはハイブリッドにかぎらず全体的に価格が下がって買いやすくなった。ハイブリッド系は200万円台の予算から探せるが、数は少なめ。
中古車参考価格帯:240万円~360万円(※09年~13年 Sクラス ハイブリッド)

279馬力の3.5LV6エンジンを搭載し、モーターを組み合わせることでスムーズな走りと低燃費を実現している。リヤバッジが目印だ。

整ったデザインのインテリア。ロングホイールベース仕様ゆえ、後席のスペースが広く、快適性は高い。室内のクオリティが高いのも見どころ。

アウディ Q5 ハイブリッド(先代)/物件は非常に少ないがお買い得感の高い1台

 先代Q5には、ハイブリッドモデルの設定があった。211馬力の2Lターボに54馬力のモーターを組み合わせ、JC08モード12.7km/Lという優れた燃費を実現したモデル。流行りのSUVということもあり、人気が高そうだが、中古車市場にはあまり流通していない。ただし相場は200万円台と、非常にリーズナブル。
中古車参考価格帯:220万円~280万円(※13年~15年 Q5 ハイブリッド)

シンプルかつ精緻なインテリア。ミッドサイズSUVゆえ居住性も十分で、実用性は十分。リヤエンブレムやホイールが、スタンダードなQ5との識別点。

BMW アクティブハイブリッド3(先代)/200万円台で探せる高性能セダン

 306馬力の直6ターボにモーターを組み合わせた、高性能ハイブリッドカーがこちら。登場から7年が経過し、現在かなり手頃な価格で入手可能。200万円台の物件も目立ち、なかには140万円という個体も確認できた。物件もそこそこ流通する。
中古車参考価格帯:140万円~300万円(12年~15年 アクティブハイブリッド3)

BMW アクティブハイブリッド7(先代)/今ならねらい目の7シリーズHV

 2009年に登場した先代7シリーズがベースのハイブリッド。4.4LV8ツインターボにモーターを組み合わせるという、豪華なパワートレーンが特徴。7シリーズは全体的に相場が下がり、こちらもお手頃価格に。物件数はやや少なめなのが難点。
中古車参考価格帯:180万円~330万円(※09年~15年 アクティブハイブリッド7)

[EV]駆動力はすべてモーターでまかなうピュアEV。今後の電動化モデルは、こちらが主流になっていくだろう。

BMW i3/発電用エンジンを備えたレンジエクステンダー仕様も

 BMWの電動化モデルの先駆けとして登場した「i3」。モーターのみの仕様と、発電用の小型エンジンを備えたレンジエクステンダー仕様が選べるが、中古車は後者のほうが多い。平均価格は270万円前後となっており、探せば200万円を下まわる物件も存在する。新車時は500万円オーバーということを考慮すると、かなり安くなっている。走行距離が伸びた物件がそれほど多くないのも魅力だ。
中古車参考価格帯:170万円~370万円(※14年~19年 全グレード)

重量がかさむバッテリーを床下に配置することで、パッケージングの自由度が大幅に向上。コンパクトカーながら室内は広々している。重心が低くなり、運動性能にも寄与。

CFRP製ボディに22kWhの容量を誇るリチウムイオン電池を搭載。170馬力のモーターが組み合わされる(デビュー時)。充電口はCHAdeMO対応。

スマート フォーツー エレクトリックドライブ(先代)/100万円の予算から探せる電動シティコミューター

 先代スマートフォーツーをベースに、ピュアEVとして仕立てたのが「エレクトリックドライブ」である。17.6kWhのリチウムイオン電池、75馬力のモーターを搭載し、フル充電で140km以上の距離を走行可能。新車時はおよそ300万円という高額なモデルだったが、現在は100万円程度にまで相場がダウン。EVとしてかなり買いやすくなってきた。物件数は少なめだが、良コンディション車が揃う。
中古車参考価格帯:90万円~140万円(※12年~15年 全グレード)

2シーターで、ラゲッジは必要最低限のスペース。それでも、ちょっとした買い物には困らない。室内は思いのほか広々しており、2シーターでも快適性は損なわれていない。

急速充電に対応していないのがネックだが、かぎられた範囲を移動する手段としてなら、十分使える。シートのつくりがよく、心地よい。

高性能な電気自動車「テスラ」の中古車事情を教えて[テスラ モデル S]

 アメリカの新興自動車メーカー、テスラモーターズ。2010年に登場した2座スポーツカー「ロードスター」を皮切りに、次々とニューモデルを送り出している。そんなテスラの中古車は、全体的に数が少なめで入手しづらい状況。そのなかでも物件が揃っているのがモデルS。価格はピンキリだが、600万円前後の予算から探せるはず。次に多いのがモデルXで、こちらは900万円程度の予算は見積もっておきたい。

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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