輸入車
更新日:2026.01.27 / 掲載日:2026.01.27
ポルシェ、ブランド価値と販売台数の狭間で【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ポルシェ
早いものでもうすぐ一月も終わろうとしています。年が変わったと思ったらすぐ1ヶ月過ぎるのですから驚かされます。歳のせいか年々月日が過ぎるのが加速しているような気がしてなりません。
そんなタイミングで毎年発表されるのが自動車メーカーの成績表です。ヨーロッパの各メーカーが2025年に販売したブランドごとの台数をレポートします。国産メーカーは年度での台数に重きを置きますが、海外メーカーは1月から12月のカレンダーイヤーでの積算台数になります。
それでは、その中で個人的にもっとも興味のあるポルシェについてお話ししましょう。

彼らの2025年総販売台数は27万9449台でした。これは一昨年の31万台オーバーに対し約10%の減少になります。それまで毎年のように台数を増やしてきたのですからここらで一休みと言ったところでしょう。ポルシェ自身もそこは言及していて3つの理由を並べています。ひとつは、718系2モデルの生産終了とマカンの内燃機関モデルが受注に対して正しく供給されなかったこと、それと中国マーケットでのラグジュアリーモデルの低迷、そしてもうひとつはブランドバリューを保持するための供給管理です。つまり、国際情勢と共に、彼らは過剰な販売台数によるブランドの毀損を避ける手立てを取りました。
では、モデルごとではどうだったのでしょう。

スポーツカーで気になるのはやはり911シリーズです。こちらは5万1583台で前年より1%増になりました。ここはポルシェのアイコニックなモデルだけに、供給過多になることは避けないといけません。欲しくても手に入らないくらいマーケットを枯渇させる必要があるでしょう。現に992.2のスペシャルなモデルはプレミア価格になっています。プラス1000万円なんて驚きません。時計で言えば、パテックフィリップやロレックスのスポーツモデルみたいなもの。これらは中古品で定価の2倍も珍しくありません。ちなみに、5万1583台は911の新記録だそうです。全体で10%落としながらこの台数はさすがです。
718ボクスターと同ケイマンは合計1万8612台でした。これは10月に生産終了になったことが大きく響いています。前年比では21%減になりました。
全体の台数を減らしたモデルは、前年比22%減のタイカンと21%減のカイエンが深く関わったと思われます。タイカンはE-モビリティの普及鈍化が要因であることは言わずもがなですね。BEVの世界的な足踏みはポルシェに限らずほぼすべてのカーメーカーに打撃を与えています。

ただ、すでに発表しているように、ポルシェは911の一部モデルを除いた電動化の道を軌道修正しました。BEVに一本化する予定だったモデルにもプラグインハイブリッドを用意するようスイッチしています。なので、ノンモーターのモデルを含めバランスよく生産されていくかと思われます。その辺の動向はポルシェファンならずとも注目ですね。念の為2025年のパワートレインの割合を記しておくと、22.2%がBEV、12.1%がプラグインハイブリッドで、それ以外が内燃機関のみのモデルでした。
参考までに記述すると、2025年ヨーロッパの販売台数の中でマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッド、それとBEVといった電動車は57.9%に達し、はじめて内燃機関を上回ったそうです。そしてその57.9%の3分の1がBEVだとか。この辺の数字を覚えていると、日本のBEV普及率がいかに低いかがおわかりいただけるでしょう。さて、どうなるのか。
次に目線を変えてマーケットに目をやると、その順位が発表されていました。1位は北米、2位はドイツ本国を除くEU圏、3位は中国、4位はドイツといった順番です。中でも中国の前年比26%減というのが目につきます。中国マーケットが疲弊しているのは明らかですね。日本は7位です。
以上が2025年のポルシェの販売動向ですが、今年はマカンエレクトリックのデリバリーが進んだりカイエンエレクトリックが登場したり、911シリーズが拡大したりするので、再び右肩上がりになることでしょう。そこはモータージャーナリスト的には楽しみ。でも供給過多によるブランドの毀損はやはり避けてもらわないと。そう考えるとブランディングって本当に難しい。イタリアのスーパーカーもそうですが、その辺がこのクラスの大きな課題になっていくことは明白です。