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更新日:2025.08.12 / 掲載日:2025.08.12
超希少なレンジローバーに学ぶビスポークの世界【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ランドローバー
幸運なことに、レンジローバーのSVプログラムに則って仕上げられたビスポークモデルを目にしました。「レンジローバーSVビスポーク アーバン トワイライトコレクション」です。“幸運なことに”としたのは、その数わずか12台。3つのテーマをもとにクリエイトされたそれは各テーマ4台という希少さ。価格は各3668万円。一生お目にかかれない確率の方が断然高そうなモデルです。
発表は6月でしたが、目にしたのは7月末頃の軽井沢。そこで開催されたレンジローバーハウスにディスプレイされました。レンジローバーハウスはレンジローバーの世界観を表現したもので、今回は軽井沢の自然とモダン建築が融合したヴィラを舞台に行われました。前回は中目黒の一軒家でしたが、そこもまたかなりエレガントなスペースだったのを記憶しています。レンジローバーを所有する人のライフスタイルを表現したものでした。


「レンジローバーSVビスポーク アーバン トワイライトコレクション」は、都会の空の色や近代建築に反射する光に宿る美しさからインスピレーションされたそうです。そしてそれを3つのテーマで具現化し、ビスポークしました。「URBAN DAWN(都会の夜明け)」、「URBAN DUSK(都会の夕暮れ)」、「URBAN LIGHT(都会の灯り)」がそれにあたります。それぞれ特別な装備に覆われ、フツーのレンジローバーとは異なるのは一目瞭然です。

例えばそれはエクステリアカラーからして特別です。英国のSVデザインチームと連携し、テーマごとに異なる3種類のカラーを開発しました。一色わずか4台のためにこれだけやるのですからすごい。どれも光の当たり具合で色々な表情を見せる仕上がりです。またモデルによっては24金の手仕上げされたスクリプトバッジを装着するものもあります。インテリアもそうですが、ディテールにこだわっているのがよくわかります。


こうしたビスポークプログラムはハイエンドに位置するブランドであればおおよそ用意されています。ロールス・ロイス、ベントレー、アストンマーティン、フェラーリ、ランボルギーニ、AMGなどなど。ある程度プログラム化されているものもあれば、今回のレンジローバーのエクステリアカラーのようにゼロベースで開発するものもあります。ロールス・ロイスのファクトリーで聞いた話では、奥さんのバッグの色と同じにして欲しいといったオーダーが合ったとか。サンプルとしてバッグを持ち込めばそんなことも対応してくれます。
ところで、この“ビスポーク”という言葉ですが、語源は「be spoken」になります。そもそもはオーダーメイドでスーツを作る時の用語で、カスタマーとテーラーが話し合いながら作り上げることを意味します。「ラペルの幅は何mm」とか、「袖のボタンは幾つで、少し重なるようにつけてくれ」とか。スーツの世界も奥が深いですからね。興味のある方はテーラーの門を叩いてください。銀座のダンヒルなんかおすすめです。
海外ですと、やはり本場ロンドンでしょう。背広の語源になっているサヴィル・ロウが本家本元です。メイフェアにある有名なストリートですね。個人的にもここが好きで、ロンドンに行くときは必ずこの道を歩きます。目的は各テーラーのショーウィンドウ。このディスプレイがおしゃれなんです。ギーブス&ホークス(Gieves & Hawkes)やハンツマン(Huntsman)、そしてヘンリープール(Henry Poole)あたりが好みです。ハンツマンは映画「キングスマン」の舞台になった場所なので、入り口に「Kingsman」の看板が立っています。期間限定かと思いきや今年5月に訪れた時もまだ看板は立っていたので、これからでも見られそうです。興味のある方はぜひ足を運んでください。
ちなみに、オーダーメイドは和製英語なので、海外では通じないかもしれません。まぁ、そういった場所であれば意味はわかってもらえるかもですが。イタリアではビスポークではなく、“スミズーラ”というイタリア語がそれにあたります。ナポリでスーツを仕立てるならこの言葉は必要です。イタリアのカーメーカーはこの言葉を使えばいいのにと思いますが、まだ見ません。ちょっとニュアンスが違うのかもしれませんね。
それはともかく、今回のコレクションのようにビスポークチームが提案する場合もあるので、そういったモデルを選択するのはいいと思います。その道のプロの提案ですから奥が深い。そして希少性が高いのですから、今回実車を目にできただけでラッキーでした。