輸入車
更新日:2024.07.13 / 掲載日:2024.07.13
やっぱり普通じゃない、スーパーカーのハイブリッド事情【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ランボルギーニ
みなさんは“ハイブリッドシステム”とはどんなものだと思いますか? そうです、環境対策のひとつの答えとして生まれました。クルマを走らすすべての行程を化石燃料を燃やす内燃機関に委ねるのではなく、電気の力でモーターを回しそれを補助するのです。これにより、燃費が良くなり、二酸化炭素や窒素酸化物の排出を低減することができます。
内燃機関、いわゆるガソリンエンジンやディーゼルエンジンにモーターが組み合わされるメリットは何か? それは排気量を小さくできること。いわゆるエンジンの“ダウンサイジング”ですね。小排気量化することで、燃費が良くなるのは当然のこと、エンジン自体がコンパクトになり軽くなるメリットが生まれます。つまり、良いこと尽くめ。ここ数年、世界中のほとんどのカーメーカーがその流れに沿ってクルマ開発を進めてきました。
ですが、“ハイブリッドシステム”を「もしかしたらそれとは違う意図で使っているのでは?」と思えるクルマが最近目立ってきました。「モーターを過給器のようにパワーを増幅させるために使っているのか?」というクルマです……。

それを感じたのは、ランボルギーニの試乗会でした。ステアリングを握ったのはレヴエルト。彼ら初の本格的ハイブリッドモデルですが、試乗前のプレゼンテーションを聞いているとだんだんそう思えてきました。
注目のパワーソースは、6.5リッターV12自然吸気エンジンにモーターを装着したハイブリッドシステム。システム最高出力は1015hpに達します。ついに4桁突入!って感じで、レーシングカーを軽く超えています。なんなんですかね、この数値。V12ユニットは単体で825hpですからもはやモーターは「パワー増幅マシン」に思えてしょうがありません。
何が言いたいかというと、前述した通常行われるはずのダウンサイジングが行われず、大排気量エンジンをベースにパワーアップしているんです。これはツッコミどころでしょう。

例えばベントレーを見てください。彼らは最近まで2つのプラグインハイブリッドモデルをラインナップしていました。両方ともV6エンジンをベースとします。W12エンジンもV8エンジンも使わず、V6を選択しました。フライングスパーハイブリッドとベンテイガハイブリッドがそれです。しかもW12エンジンの生産終了をアナウンスしています。同じVWグループなのに違いますね。価格帯は似ているのに。
なんて思っていたら、新しく発表されたコンチネンタルGT/GTCスピードを見て驚きました。なんとベースになったのはこれまで使ってきた4リッターV8ツインターボエンジン。V6ではなくV8の方でプラグインハイブリッドモデルを登場させました。

それじゃ周りはどうなのかと見回すと、フェラーリがありました。こちらは4リッターV8ターボベースのSF90と3リッターV6ターボベースの296GTB/GTS。つまり、約10年前のラフェラーリ以降12気筒エンジンのハイブリッドはなし。先だってジャパンプレミアされたドーディチチリンドリはその名前の通り“12気筒”ですが、モーターはついていません。つまりハイブリッドではない。まぁ、それはそれで不思議ですけどね。このタイミングでまだガソリンエンジン車を堂々と世界に向けて発表しているのですから……。しかも自然吸気。さすがフェラーリです。
なんて思っていたら、webでこんな記事を見ました。「公道最強のV12ハイパーカー『オーロラ』登場!」です。

記事によると、このクルマはデンマークのゼンヴォ・オートモーティブ(Zenvo Automotive)がグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2024で発表したものだそうです。名前はオーロラ。6.6リッターV12+4ターボをベースに3つのモーターを取り付けたハイブリッドカーだとか。最高出力はシステム全体で1850hp。レヴエルトで「ついに4桁突入か!」と思ったらもう2000hp近くまで行っていました。0-100km/h加速2.3秒、最高速度は450km/hだとか。もう何のこっちゃわかりません。
ということで、冒頭に記した「そもそも“ハイブリッドシステム”ってなんのためにあるんだっけ?」という疑問をわかってもらえたと思います。「本来とは違う意味で使ってない?」ってことです。まぁ、そうはいってもこういう話が楽しいんですよね。実用車と憧れのスーパーカーは違いますから。みんなの期待のさらに上をいくのがスーパーカー。いやはやお見事。脱帽です。