輸入車
更新日:2024.07.05 / 掲載日:2024.07.05

フェラーリも、BMWも…SUVの新キーワードは“スーパーカー&電気自動車”

ますます増加するSUVのラインアップ。そんななか、注目したい動きがスーパーカーメーカーや電気自動車という新たな方向性だ。

文●工藤貴宏 写真●フェラーリ、BMW、澤田和久、ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、一部はめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2024年8月号「SUVの魅力ってどこにあるのだろう?[SUV実態調査]」記事の内容です)

スポーティな走りから欧州のSUVが広まった

 SUVが最初に盛り上がったのはアメリカだ。しかし、欧州にも広がったSUVブームとでは大きく異なることがある。それはブームの中心となるクルマの成り立ちだ。
 アメリカのSUV市場はエクスプローラーなど大きめのモデルで火が付き、当初はオフロードも走れて荷物もたくさん積める実用車というイメージが強かった。一方で、欧州SUVの旗揚げ役となった2000年に発売されたBMW X5や2002年発売のポルシェ カイエンなどは、悪路走破性よりも舗装路でスポーティに走れることにこだわった。もちろんセダンやスポーツカーに比べると悪路にも強いのだが、メインステージはそこではない。高速道路や峠道で、まるでスポーツカーのようにキビキビと走って楽しく運転できることが重視されたのだ。
 つまり、欧州SUVがクルマ作りにおいて取り込んだのは悪路走破性ではなくSUVというパッケージング。あくまでスポーツセダンの延長で、トラックの派生ではないのだ。
 そんな欧州スタイルのSUVとして世界に衝撃を与えたのが、2017年に発表されたランボルギーニ ウルス。ランボルギーニといえばスーパーカーメーカーだが、そんなランボルギーニまでもがSUVを手がける時代となったのである。
 最高出力650馬力で最高速度はSUV史上初めての300km/hオーバー。まさにスーパーカーメーカーが生み出すモデルといえるとんでもない性能とともに、ランボルギーニ史上初めて実用的で快適な後席を備えたモデルと言っていいだろう。
 「あのランボルギーニがSUVを出すほどSUVが一般化した」と考える人もいるだろう。いっぽうで「あのランボルギーニが流行に乗っちゃうなんて」という人もいるかもしれない。しかし、SUVがスーパーカーメーカーにそんなクルマを作らせるほど変化しているという社会の変化と、SUVでも舗装路での過激なパフォーマンスを持つスーパーマシンが作れるほどの技術が向上しているのは事実でそれをしっかり認識するべきだ。
 そしてランボルギーニといえば、フェラーリ。フェラーリも2022年にプロサングエという同社初のSUVを発表し、新たにSUV市場へ参入した。ちなみに最高速度はウルスを超える310km/hである。
 ほかにもアストンマーチンやロータス、マセラティといったスポーツカーブランドや走りのラグジュアリーブランドもSUV市場へ続々と参入。その勢いは、もう誰にも止めることなんてできないだろう。
 一方、SUVを取り巻くもうひとつの流れがEV(電気自動車)化だ。大容量のバッテリーを(一般的には床下に)積む必要があるEVとSUVはパッケージング的に相性がいい。路面とのクリアランスを保ちつつ、室内を狭くすることなくバッテリーを搭載できるからである。
 また、重いバッテリーを床下に置くことで、セダンなどに比べると高くなりがちな重心を低くする効果もある。これは走行安定性にメリットをもたらすものだ。相性がいいだけに、EVのSUVのラインアップは今後も増えていくだろう。
 SUV全体に話を戻すと、「SUVだから運転しづらい」とか「SUVだから燃費が悪い」というのはもう過去の話になる。
 今後は、「トレンド」ではなく「定番」になる可能性が高い。だって、メリットが多いのだから。

スーパーカーのオススメモデル

[BMW XM]超高性能SUVは “Mモデル”だけを用意

 システム出力653馬力を誇る性能でBMWにおけるSUVの頂点となる「XM」。BMWの高性能車を手がける組織である“M”が手がけたモデルで、V8ターボエンジンにハイパワーモーターを加えたハイブリッドとなっている。サーキット走行も可能な“Mハイパフォーマンスモデル”だ。

照明で陰影を作る天井をはじめ室内は摩訶不思議な妖しさ。ゴールドをちりばめた外装を含め、特別な世界観を持つ。

BMW XM(8速AT) ●全長×全幅×全高:5110×2005×1755mm ●ホイールベース:3105mm ●車両重量:2710kg ●エンジン:V8DOHCターボ ●排気量:4394cc ●エンジン最高出力:489ps/6000rpm ●エンジン最大トルク:66.3kgm/1600-5000rpm ●モーター最高出力:145kW/6000rpm ●モーター最大トルク:28.6kgm/1000-5000rpm ●新車価格:2130万円〜2420万円(XM 全グレード)

[フェラーリ プロサングエ]SUVではあっても跳ね馬らしさは変わらず

 フェラーリは「フェラーリ初の4ドア4シーター」とのみ説明し“SUV”とはひとことも言っていない。しかし事実上「フェラーリのSUV」といえるのが「プロサングエ」だ。エンジンは排気量6.5LのV型12気筒自然吸気。ひと目でフェラーリだとわかるスタイルも含め、跳ね馬らしさが貫かれている。駆動方式は4WD。

奏でるエンジン音はさすがフェラーリ。725馬力を誇るエンジンは音に加えて見た目の芸術性も素晴らしい。

フェラーリ プロサングエ(8速AT・F1 DCT) ●全長×全幅×全高:4973×2028×1589mm ●ホイールベース:3018mm ●車両重量:2033kg ●エンジン:V12DOHC ●排気量:6496cc ●最高出力:725ps/7750rpm ●最大トルク:73.0kgm/6250rpm

EVのオススメモデル

[アウディ Q8 e-tron]アウディの旗艦は力強さに驚く大型SUV

 現時点では「2033年までにエンジン車を廃止する」としているアウディもまた、EVのSUVを多く用意する。なかでも「Q8 e-tron」は同社のSUVで最大級のボディを持ちつつも、それをグイグイ引っ張るパワー感が見事。アクセルを踏んだときの背中を蹴られるような力強さが凄い。

全長は「Q7」よりもわずかに短いが、天井を低めにしたフォルムでスポーティな印象。もちろん、室内スペースも広い。

アウディ Q8 55 eトロン クワトロ Sライン ●全長×全幅×全高:4915×1935×1635mm ●ホイールベース:2930mm ●車両重量:2600kg ●モーター最高出力:300kW ●モーター最大トルク:67.7kgm ●新車価格:1099万円〜1492万円(Q8 eトロン 全グレード)

[ボルボ EX30]スモールサイズのEVはインターフェースも斬新

 「2030年までに販売するすべてのクルマをEVにする」としている北欧のメーカーがボルボ。最新EVとなるEX30はコンパクトな車体サイズで、SUV非対応の機械式立体駐車場も利用できる全高に抑えているのも特徴だ。補助金を前提にすれば400万円台となるプライスも輸入EVとしては手頃。

室内はとにかくシンプル。多くの操作は中央のタッチパネルに集約し、まるで新興EVメーカーのような新しさだ。

ボルボ EX30 ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ ●全長×全幅×全高:4235×1835×1550mm ●ホイールベース:2650mm ●車両重量:1790kg ●モーター最高出力:200kW/6500-8000rpm ●モーター最大トルク:35.0kgm/5345rpm ●新車価格:559万円

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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