輸入車
更新日:2022.10.28 / 掲載日:2022.10.28

復活のジープ コマンダーは3列SUVのダークホース【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ジープ、内藤敬仁

 ジープファミリーに新しい仲間が加わりました。コマンダーです。この名前を聞いて「復活?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。2006年から2009年にかけて売られていたジープ史上初の3列シート装着車がこの名前でした。ユニークな顔立ちの四角いボディが印象的です。

 当時そのクルマは突然変異のように登場しました。前年のニューヨークショーで発表されたとはいえ、かなり唐突だったと思います。

 ですが、フィラデルフィアで行われたメディア向け国際試乗会で開発陣にインタビューするといろいろなことがわかってきました。実はそのコマンダーは次期型グランドチェロキーとして最後まで残ったデザインだったのです。実際は正常進化のごとく二代目グランドチェロキーは2004年にフルモデルチェンジし三代目にバトンタッチしましたが、その影にコマンダーがいたんです。デザインの評判が社内でかなり高かったことを受け、首脳陣はグランドチェロキーとしてではなく、別のクルマに仕上げたというわけです。60年代にジープ・コマンドーというクルマがありましたが、それとは関係なさそうですね。

 よって、その当時のコマンダーと三代目グランドチェロキーのプラットフォームは共通で、パワートレインも共有していました。つまり、極端にいえばエクステリアデザインだけの違い。ちなみに、そのデザインのコンセプトになったのは日本でも爆発的に売れたXJ型チェロキー。あの四角いボディを継承したのが、当時のコマンダーだったのです。プレゼンテーションでは1983年にリリースされたXJ型チェロキーをジープのひとつのアイコンとして捉えたと説明していました。まぁ、そう言われればわからなくもないような……。

 話がだいぶ寄り道しましたが、新型コマンダーについてお知らせしましょう。

 このクルマはこれまで売られてきた五代目KL型チェロキーの後継として導入されました。あの鋭い目をしたイタリアンチックなモデルは販売終了です。よって、ボディサイズはチェロキークラスらしく4770×1860×1730mmにおさまります。見た目は大きく感じますが、日本でも扱いやすそうなサイズにとどまりました。ぱっと見の印象からするとライバルはキャデラックXT6やレクサスRXクラスですがね。実際はその下のカテゴリーになります。

 それでいて3列シートなのが特徴となります。子供用と考えた方がいいですが、ちゃんと2名分用意されました。普段は使わなくとも年に数回6名以上乗車を求められる方にはいいでしょう。

 エンジンは2L 直4ディーゼルターボのみでグレードも”リミテッド”に限定されます。最高出力は170ps。駆動方式は4WDですが、エンジン横置きのFWDを基本とします。で、調べてみると、このクルマはコンパスとプラットフォームを共有します。生産はブラジルとインド。アメリカ本国では販売されず、世界数カ国だけで扱われるようです。ちょっと特殊なケースですかね。

 では走りはというと、乗り心地はマイルドで乗用車的。オフローダーにありがちなゴツゴツしたところは感じられず、街乗りを基本形にして開発されたように思われました。ハンドリングも軽快です。ただ、このパワーユニットにディーゼル特有の力強さはあまり感じませんでした。低回転域でのトルクはそこまで太くなく、そのまま回転を上げたくなります。イメージ以上にアクセルを踏み込まないと思ったような加速にはなりません。スピードが乗ってきればスポーティな走りもできますが、もう少し低回転からターボを効率よく使って欲しいと感じました。

 でもデザインはかっこいい。新型グランドチェロキーや日本には導入されない新型ワゴニアの系統となります。ジープのアイコンをオーセンティックながらモダンに仕上げた感じですね。細い目と7スロットグリルを組み合わせたマスクとリアピラーが個性的です。それにインテリアも悪くありません。ダッシュボードセンターに10.1インチの大型タッチスクリーンを配しながら、うまい具合に高級感を出しています。基本設計はコンパスと同じですが、配色などが異なります。

ジープ 新型コマンダー

 価格は597万円で、サンルーフは16万円だそうです。最近の輸入車はどれも高いですから逆にこのくらいに抑えられたのはインポーターの努力かもしれません。もはやグレードにもよりますが、グランドチェロキーは1000万円の壁を軽く超えていますから。その点でもダークホース的に評判が上がりそうな一台かも。発売後のマーケットの評判が気になります。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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