輸入車
更新日:2022.07.22 / 掲載日:2022.07.22

ヒョンデのパフォーマンスモデル戦略「N」とは【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ヒョンデ

 かつて“ヒュンダイ”と呼ばれたカーメーカーが“ヒョンデ”となって日本に再上陸したのはご存じの通り。神奈川県で行われたIONIQ 5とNEXOの試乗会の時はワタクシもその原稿を書きました。その時も説明しましたが、ヒュンダイはそもそも英語読みだそうで、それを今回は韓国語読みに変えたということらしい。英語のスペルで書くとヒュンダイの方が書きやすいんですけどね。まぁ、そこは慣れるよう心がけますか。

 で、そのヒョンデからお誘いをいただき韓国に行って来ました。目的はヒョンデをもっと知ること。そのため、彼らが運営する施設を訪問。その後IONIQ 5を試乗、そして釜山モーターショーでのワールドプレミア立ち合い、デザインセンターを視察して参りました。ヒュンダイ時代から遡っても初めての本格的な本国取材ですから楽しみがいっぱいです。

 ではそのプロファイルを簡単に説明すると、ヒョンデグループは関連会社56社からなる大コンツェルン。自動車パーツ製造から建築、金融と、あらゆる分野に広がっています。そしてその中心にあるのがヒョンデ・モーター・カンパニー。1967年設立で、世界中に12万人もの従事者がいるそうです。製造工場は9カ国で展開、年間500万台の生産規模を持ちます。R&Dも世界展開しており、韓国以外ではドイツ、中国、インド、日本、アメリカに拠点を持つとか。なるほど、思いのほか手広くやっています。

 今回最初に訪れたヒョンデ・モータースタジオもそうした中の関連施設で、韓国内に数カ所設けられます。ここは自動車をネタ元にしたテーマパーク。あらゆる角度からクルマに接することができます。アート作品として、最新映像の被写体として、テクノロジーの進歩の題材としてクルマを捉えられます。クルマ好きはもちろん、家族で来ても楽しめそうな空間です。日本のメーカーも単に新車を並べるだけでなくこういう場所を作ればいいのに、なんて思っちゃいました。

 この他ではR&Dセンターに行き、デザインセンターを見せてもらいました。広い空間で1/1サイズの試作車を眺める場所です。これまで色々なメーカーのデザインセンターに足を踏み入れましたが、ここもなかなかの広さです。

ヒョンデが公開した「Nビジョン74」(左)と「RN22e」(右)

 そしてこの時、発表前のあるモデルのデザインスタディを見せてもらいました。某モデルの‘N“です。”N“とはナニ?と思いますが、これはメルセデスで言うところのAMG、BMWでのMに当たるネーミングだそうです。要するにヒョンデのパフォーマンス部門。これまでレーシングカーを主に手がけてきた経験から市販車のパフォーマンスモデルを世に送り出すことになったそうです。レクサスでの”F“、フォルクスワーゲンでの”R“ですね。ちなみに”N“の由来はR&Dのあるナムヤンの地名の頭文字と、ニュルブルクリンクの頭文字からとったそうです。今後の展開が気になるところです。

 日本での展開はまだ2モデルですが、モデルのカテゴリーを増やすのではなく、こう言うパフォーマンス系の展開ってのもおもしろい気がします。まだヒョンデにはモータースポーツのイメージは強くないですから。WRCの実績はありますが、それほど多くの日本人が理解しているとは思えませんし。やっぱ将来的にはF1に参戦してもいいのではないでしょうか。一気にレーシーなイメージが付きます。でも時代が時代ですからね。IONIQシリーズがありますから、フォーミュラEの方でしょうか。いやその前にやっぱF1かな。

 この他ではIONIQ 5以降の6や7を見込んでの充電施設に興味を持ちました。E-pit(イーピット)と呼ばれるのがそれで、マスブランドでは初の800Vの急速充電を行います。80%までの充電はわずか18分と言うから驚きです。実際にその作業を見せてもらいましたが、みるみる充電されていくデジタル表示が印象的でした。これなら急速充電待ちでいざこざは起きないでしょう。とにかく早い。

 なんて感じで、今のヒョンデの一部を見せてもらいました。色々な面で独自性があり、技術面でも考え方にしても進んでいるのがわかります。あとはその先行技術をどう世界にアピールするかですかね。その辺はもう一捻り工夫が必要な気がします。まぁ、日本では始まったばかりですから、焦らずゆっくりブランディングしていけばよろしいのではないでしょうか。クルマの出来はいいですからね。“N”ブランドの上陸を含め、今後の展開に注目です。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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