新型車比較・ライバル車対決
更新日:2018.12.02 / 掲載日:2018.01.30

新型アルファード/ヴェルファイア完全解剖

2015年1月に登場したトヨタのミニバン最高峰モデル3代目「アルヴェル」が、初のマイナーチェンジを実施した。ジャンルを代表する人気者ゆえに、プレミアムミニバンを検討しているユーザーならば気になるはずだ。徹底取材で分かったその進化ぶり、全てをお教えしましょう。
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之

乗員最優先の設計は新型でさらに磨かれた

新形アルファード/ヴェルファイアのグレード別価格表

 ミニバンの最大の武器はユーティリティである。特に1BOX型はその傾向が強い。しかし、最上級クラスのプレミアムミニバンともなると事情は少し異なってくる。
 今回の主役、アルファードヴェルファイア(以下アルヴェル)を筆頭に、このジャンルのミニバンは最大級のキャビン容量を誇るモデルが揃う。だがそのゆとりは利便性や多用途性ではなく、上質や快適性といった「贅」のために使われる。だからこそ多人数乗車を必要としないユーザーでも、”あえて選ぶ“ケースが出てくるわけだ。なかでもアルヴェルは、そんなユーザーから積極的に選ばれているモデルとして知られている。
 今回のマイナーチェンジでは、そんな「贅」を、さらに高める内容が与えられた。定番の内外装の意匠変更に加えて、第2世代型トヨタセーフティセンスの採用やV6車のパワーユニットを一新するなど、中身の部分も強化。マイナー前の従来型モデルで抱えていた弱点をきっちりと解消してきた。
 豪華なキャビンや走行性能など、従来型も車格に見合う内容を持っていたが、新型は乗員最優先はそのままに、”その上“を意欲的に狙う。プレミアムミニバンの魅力が、さらに高まっている。

変貌したフロントフェイス。従来型より精悍さが高まる

 舳先が掻き分けた波が船体に沿って流れるような、フロントフェンダーから連続する曲面や大開口を演出したラジエターグリルなど、基本要素は大きく変わっていないが、フロントビューは従来型より強面な印象である。
 ヘッドライトはアルファードがグリルから連続したメッキモールが加わり、ヴェルファイアはバンパーラインからフェンダーに連続する車体同色面で上下に2分される。共に目付きが鋭くなっている。ヴェルファイアは従来型から同様のヘッドランプデザインだったので、どちらかと言えばアルファードのほうが新旧の差が大きい。
 また、ラジエターグリルもアルファードがバンパー部を黒色とする上下一体デザイン、ヴェルファイアがバンパー部で二分するデザイン。これも従来型から踏襲されているが、両車ともメッキ加飾の使い方が異なるデザインとなった。
 これもアルファードのほうが変化は大きく、従来型ではタイルを貼り込むようにメッキで被っていたが、新型では光沢黒基調としてメッキの太い桟を格子に配している。メッキ部の面積は新型になって減ったわけだが、黒/メッキのコントラストが強まり、押し出し感あるいは高性能感が高まった。
 こういった演出の変化はエアロボディ車ではさらに鮮明になる。エアロ仕様と言っても空力パーツをテンコ盛りするのではなく、専用のバンパーやサイドマッドガードを装備しスペシャリティな趣を高めた、別仕様バージョンである。フロントバンパーとマッドガードには、縁取るようにメッキモールが走り、これが遠目にもかなり目立つ。インパクトは相当だ。
 標準ボディ車に対してエアロボディ車は価格面では上級設定となるが、装備設定では標準系と同等レベルで、パワートレーンも全て選べる。ルックス優先でも選びやすいことは好感が持てる。

新型アルヴェルはここが見所!

  • トヨタ最新の先進安全装備 「トヨタセーフティセンス」を全グレードに標準装備。

  • 内外装デザインは新意匠に変更より精悍&存在感あるプレミアムミニバンに進化。

  • V6モデルのパワートレーンが最新ユニットにアップデート。新V6車の走りにも注目すべし!

icon アルファードExecutive Lounge S

標準ボディ車でも十分な存在感だが、エアロボディ車はそれがさらに高まる。圧倒的なオーラすら感じるスタイリングは、エアロボディ車ならではだ。なおホイールなどの一部を除く基本デザインは、どのグレードも共通。どれを選んでもアルファードの世界観を楽しめる。全長は4950mmと国内ミニバン最大級。そのため市街地での使い勝手を心配する人もいるが、切れのよいハンドリングもあって、想像よりも不自由はしない日常性も兼ね揃える。

  • アルファードのアイコンであるビッググリルは、新型でも健在。左右インテークまわりの形状を変更することで、従来型との差別化が図られる。

  • リヤビューの印象を決めるリヤガーニッシュ&リヤコンビネーションランプ。今回のマイナーで形状変更が実施され、ダイナミックなイメージを高めてきた。

  • 新型はライト形状も変更。エグゼクティブラウンジに装着されるヘッドライトは最上級仕様となる3眼LEDヘッドランプ。他グレードでもOP設定で選択することが可能。

  • ホイールは合計5タイプが用意されるが、ハイブリッド車系に採用される17インチアルミは、陰影を効かせたスパッタリング塗装が施される。足もとのオシャレ感も抜かりがない。

icon ヴェルファイア ZG

ボディサイズやピラー、ガラスといった基本デザインはアルファードと共通だが、リヤコンビライトなどをヴェルファイア専用とすることで、差別化が図られる。ヴェルファイアのエアロボディ車のデザインアイコンは、左右の大型インテークダクト。旧来のミニバンとは一線を画す強烈な印象が見所だ。ホイールは18インチの切削光輝+ブラック塗装仕様を装着。

標準仕様ボディ車も全てのパワートレーンで選択可能

  • アルファード

  • ヴェルファイア

アルファードもヴェルファイアも、やや大人しめなデザインが採用される標準ボディ車を設定。エアロボディ車ほど大胆なデザインは……、というユーザーのニーズもしっかり考えたグレード構成を持つ。なお、3種あるパワートレーンともエアロボディ車、標準ボディ車を選ぶことが可能。

チェックポイント【インテリア】

 あり余る存在感のエクステリアデザインも魅力だが、アルヴェルの一番の魅力であり、他モデルを大きく引き離すアドバンテージであるのがキャビンである。3.2mを超える室内長に1.4mの室内高。悠々たるキャビン容量を寛ぎに向ける設えは、どのような高級セダンにもないゆとりの空間をもたらしてくれる。
 そういった基本は従来型から大きく変わっていない。シートの基本デザインやレイアウト、機能も同様である。サードシートはミニバン系でも最もゆとりあるサイズと厚手のクッションを備え、長時間走行も苦としない。もちろん、セカンドシートと比較すれば座り心地でも開放感でも1ランク劣るのだが、ミドルミニバンクラスのセカンドシートに近い居心地を備えている。
 贅を求めればセカンドシートは当然キャプテンシートだが、アルヴェルにとってキャプテンシートは標準設定と考えてもいい。ベンチシートに限定されるのはベーシックグレードのみ。エアロ仕様のベーシックグレードではベンチ/キャプテンの2仕様が設定され、それ以上のグレードはキャプテンシートに限定される。
 セカンドキャプテンシートは超ロングスライドや横スライド機能を備えたリラックスシート、パワーリクライニングやパワーオットマン、大型アームレストを採用するエグゼクティブパワーシート、そしてシートヒーターやアームレスト格納式コントロールスイッチなどまで備わるエグゼクティブラウンジシートの3タイプを用意。
 最上級仕様のエグゼクティブラウンジシートは、従来まではエアロボディ車には設定がなかったが、今回のマイナー時より標準系のエグゼクティブラウンジに相当する新グレードが設定され、エアロ仕様でも最上級内装の選択が可能となった。

  • エグゼクティブパワーシート

    オットマン付きの電動キャプテンシート仕様。前後スライドなど一部の操作こそ手動になるが、贅を尽くした造りが魅力。今回のマイナーでシートヒーター機能が追加された。

  • エグゼクティブラウンジシート

    温熱&ベンチレーション機能も兼ね揃える、ゆったりとした寛ぎの空間を追求した最上級シート。今回のマイナーで従来のベージュ&ブラック系に加えて、ホワイト内装仕様を選べるようになった。

  • リラックスキャプテンシート

    アームレストは小ぶりとなり、シート操作も手動かつオットマンもシンプルな構造になるが、ベーシックなキャプテンシート仕様もクラス平均を軽く凌駕する豪華さを持つ。

  • 6:4分割チップアップシート

    8名乗り車のセカンドシートは左右分割機構を持つベンチシート仕様になる。座面が跳ね上がるチップアップ機構や、最大720mmのロングスライドなど、使い勝手の良さも魅力。

両ドアから繋がるパネル形状が広がり感を巧みに演出。メーターフードが皮素材になるほか、今回のマイナーではパネル意匠の加飾も変更されている。

  • メーターが発する情報を表示するディスプレイ機能は、一部機能が強化されたほかは従来型と同様。視認性の良さが際立つ配置だ。

  • 全グレード本革巻きだが、複数のカラー違うが用意される。中級グレード以上にはステアリングヒーター機能も備わる。

  • シフトまわりの意匠パネルもグレードごとに差別化。細部にいたる部分まで細かく意匠が異なることもアルヴェルの特徴だ。

  • 最上級のエグゼグティブラウンジ系はナビシステムが標準になるが、それ以外のグレードはOP設定。高機能ゆえに高価なアイテムだ。

  • 前後にガラスを配する、トヨタミニバン伝統のツインムーンルーフはOP設定。リヤ側は電動スライドも可能だ。

  • エグゼクティブパワーシートに備わるオットマン機構は電動式。十分な厚みもあり脚を優しく持ち上げてくれる。機能面に不満なし。

  • 大型ボディの余裕は主にキャビンに当てられるため、荷室のユーティリティは平均レベル。サードシートを最大限前にスライドしても手狭感がある。

  • 大型ボディの余裕は主にキャビンに当てられるため、荷室のユーティリティは平均レベル。サードシートを最大限前にスライドしても手狭感がある。

サードシートは跳ね上げ格納式。居住性最優先の分厚いシート座面の影響で、相応に張り出し幅が出てしまう。ユーティリティは割り切って考えるのが正解だ。

エグゼクティブラウンジ系のキャビンは ファーストクラスの快適空間を楽しめる

 最上級のエグゼクティブラウンジ系でしか選べないが、エグゼクティブラウンジシートが生み出すキャビン空間は、豪華さや快適さなど間違いなく国産車トップレベル。個人ユーザーでも、この仕様を求めてエグゼクティブラウンジ系を選ぶケースが増えている。

  • 緩やかに脚を持ち上げてくれる電動オットマン。ナッパレザーが生み出す座り心地もあって、他のキャプテンシートとは違った極上さ味わえる。

  • アームレストにはテーブル機構も組み込まれている。小型サイズながら造りはしっかりとしており、ちょっとした小物を置く分には十分だ。

  • テーブル機構付きアームレストの反対側には、集中コントロールスイッチが配される。温熱シートやベンチレーション機能に加え、リヤモニターなどの操作もここから行える。

【チェックポイント】安全装備&メカニズム

 中間グレード以上には前席パワーシートやパワーリヤゲートを標準装着し、高機能型のナビや後席用AVシステムを設定する充実装備は従来型からの見所だが、新型で注目されるのは第2世代に進化したトヨタセーフティセンスである。
 ミニバンではAEBS(プリクラッシュセーフティ)やACCをいち早く導入していたが、対応範囲の狭いセーフティセンスP以前のタイプ。しかも上級グレードに限定されていた。新型ではAEBSの対応速度上限を対車両では180km /h、対歩行者(自転車)では80km/hとし、対車両で約50km/h、対歩行者で約40km/hでは緊急自動制動で衝突回避が可能となった。
 またACCは停止までサポートする全車速型(上限は180km/h)を採用。発進はリジュームスイッチ等のドライバーの操作が必要だが、高速道路の渋滞走行などで運転負担を大きく軽減する。
 高速走行での運転負担軽減のもうひとつの大きな武器がLKAである。ACC作動時の半自動操舵による車線維持支援を備えるだけでなく、前走車や縁石などの認識精度を向上し、多様な状況下での車線逸脱抑制機能を向上している。また、進入禁止や追い越し禁止、一時停止、制限速度の交通標識認識機能や先行車発進告知機能もトヨタセーフティセンスの新機能として追加された。
 グレード別の設定では走行中の後側方の車両を検出するBSMや後退時に接近車両を検知するRCTA、クリアランスソナーをエグゼクティブラウンジ系に標準、その他のグレードにOP設定し、安全&運転支援機能では全グレードで同等装備が可能となっている。
 走行メカ関連では全車に関連するのは車体の改良。骨格や足回りの基本構造に変更はないが、構造用接着剤の使用範囲の拡大や高剛性ウインドウ接着剤の使用により車体剛性を高め、乗り心地と操安性の向上を図った。
 走りの改善のハイライトはV6車である。搭載エンジンは同じ2GR型ながらヘッド周りなど主要部分に設計変更を加えた新世代型の2GR-FKSに変更。パワースペックに加えて、燃費性能も向上させた最新仕様である。また、組み合わせられるミッションも従来の6速ATから8速ATに変更。多段化を進めただけでなく、内部抵抗の軽減や大幅なロックアップ領域の拡大により、燃費の向上やスポーツATに匹敵するリズミカルな変速を可能とした。FFとFRに違いはあるが、クラウンシリーズのクラウン・アスリート3・5L車と同等以上の先進設計である。

  • トヨタセーフティセンスの検知方式は、従来のセーフティセンスPと同様のミリ波レーダー+単眼カメラ式だが、性能が高まりより高度な検知が行えるようになった。

  • ミリ波レーダーとカメラが高性能化 検知機能が大幅に強化された。

  • 完全な自動運転ではないが、高速道路などの単一車線で強力なステアリング支援を行うレーントレーシングアシストを備える。ロングドライブ時にありがたい機能だ。

  • 高速道路で半自動運転を実現する、最新の運転支援装備を搭載。

  • プリクラッシュセーフティは歩行者検知式にアップデート。また夜間などでの検知能力が向上したことも大きな特徴。従来のセーフティセンスPよりも大きく性能が高まっている。

  • 先行車や対向車にライト光が当たる部分だけ遮光する先進のアダプティブハイビームシステムは、各自動車メーカーが普及を進めている先進安全装備のひとつだ。

  • 単眼カメラで得た周囲情報を元にして、メーター中央のセンターディスプレイに速度規制値や道路標識を表示するロードサインアシストを搭載。

  • 後方からの車両の接近を検知するブラインドスポットモニター。最大60m後方までモニターすることが可能。エグゼクティブラウンジ系以外のグレードはOP設定なのが少し残念だ。

  • 車両後方に配されるカメラで検知した映像を映すデジタルインナーミラーも設定。後方視界が格段に広くなる実践的な装備だ。エグゼクティブラウンジ系以外のグレードはOP設定。

  • V6車のエンジンは、直噴とポート噴射を併用するD4Sのシステムを新たに採用。301PS/36.8kg・mを発揮する。JC08モード燃費も10.6~10.8km/と高まっている。

  • ハイブリッド車のパワーユニットは、従来型と同じ2.5L直4+ツインモーターの組み合わせ。洗練された走りが魅力だ。

  • 現行型が登場した時に2.5Lにアップデートされた直4ユニットを引き続き採用。JC08モード燃費は11.4~11.6km/LとV6車との差が縮まってしまった。

開発者に聞いた!新型アルファード& ヴェルファイアの強み

●トヨタ自動車 CV Company CV製品企画 ZH主査 吉岡 憲一氏

 高級ショーファーカーとしての要求が高まったため、高速走行時の横揺れ低減や静粛性を高める工夫を凝らしました。具体的には構造用接着剤の使用範囲を広げたほか、高剛性ガラス接着剤やショックアブソーバーの新型バルブ採用などでボディ剛性や減衰特性を最適化しています。また、第2世代となる予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備したことも大きなトピック。夜間の歩行者や自転車の検知も可能となっており、従来のLKA(レーンキーピングアシスト)から大きく進化したLTA(レーントレーシングアシスト)は、高速道路の同一車線センター付近を自然に走れるようになりました。パワートレーン関連では、アクセルと加速フィールのダイレクト感を追求した3.5L+8ATの組み合わせにぜひ注目していただきたいですね。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ