新型車比較・ライバル車対決
更新日:2026.07.08 / 掲載日:2026.07.08
《新型キックス vs ライバル》コンパクトSUVの選び方
新型キックスの登場でコンパクトSUV選びはどう変わる?
●文:川島 茂夫
※本記事の内容は月刊自家用車2026年8月号制作時点(2026年6月中旬)のものです。

NISSAN 新型キックス vs カローラクロス&ヴェゼル
実用性ではヴェゼルだが、その差は確実に縮まった
ノート系のプラットフォームから発展したキックスは、e-POWER限定の構成や上級志向の強さが特徴のコンパクトSUVだ。オーラと共にスモールから上級コンパクトまでを広くカバーする日産の戦略車であり、トヨタのラインナップに当てはめるならヤリスクロスとカローラクロスの中間、あるいはその両方を1車でカバーするような車格設定になる。
全長はカローラクロスより約90㎜短いが、ヤリスクロスよりは約180㎜長い。数値上はカローラクロス寄りの中間だが、単に両車の中間と片付けるのは間違いだ。新型キックスのホイールベースはカローラクロスをも凌駕し、コンパクトSUV最大級を誇る。基本骨格の拡大により、キャビン実用性は確実なステップアップを果たしている。
従来型キックスも、SUVパッケージを利したセミハイトワゴン的な設計で高い実用性を確保していた。この高い全高による室内高のゆとりが居住性や積載性の向上に直結しており、ひと昔前のショートワゴン代替カテゴリーとしての役割を十分に果たす。
実用性のバランスにおいて、このクラスの優等生と言えるのがホンダ・ヴェゼルだ。スペース効率に優れた設計に加え、フィット譲りのダイブダウンとチップアップが可能な後席格納を採用することで、一歩踏み込んだ使い勝手を実現している。
新型キックスにはそこまでの工夫は見られないが、ライバルのカローラクロスもシンプルな設計であり、キックスが劣っているわけではない。また、新型を「実用性特化モデル」と捉えるのも本質を見誤る。実用性は当然の備えであり、第一のポイントは市場をリードするための確固たるプレミアム性にある。
コンパクトトップ級の走り自慢が揃っている
カローラクロス、ヴェゼルとの3車でパワートレーンを比較すると、キックスはセレナにも搭載されるe-POWER専用の1.4ℓ3気筒をベースにしたシリーズ式を採用。カローラクロスのハイブリッド(HEV)は1.8ℓ4気筒のスプリット式、ヴェゼルは高速巡航時にエンジン直結となる1.5ℓ4気筒のシリーズ/パラレル式を採用する。
ハイブリッドシステムも三車三様だが、それ以上に明確な差となっているのが4WDシステムだ。新型キックスは、従来のe-POWER 4WDから、前後にパワフルな独立モーターを配して繊細な制御を行う「e-4ORCE」へと大幅にグレードアップしている。
カローラクロスもツインモーター式電動4WDを採用するが、リヤモーター出力は30㎾にとどまる。生活四駆としては十分だが、後輪の駆動力を積極的に用いて走りの質感を高める思想においては、新型キックスのほうが圧倒的に積極的だ。
一方、ヴェゼルは4WDに電子制御カップリングを用いた機械式を採用。複雑な機構を使わず四輪の同期性を制御できる利点はあるものの、電動化トレンドを背景にすれば非主流と言わざるを得ず、トルク配分の自由度や制御精度において日産のツインモーター式には及ばない。
完全電動駆動を活かしたシームレスで上質な走りこそが、最近の日産車に共通するセールスポイントだ。従来のe-POWER 4WDも電動ならではの緻密な制御で走りの質感向上を図ってきたが、新型キックスでは新世代eパワーの導入に伴って一新されたプラットフォームや、乗り心地と運動性能の高度な両立を図るe-POWERの採用など、内容的にはコンパクトSUVの枠を超えて走りのプレミアム性に振っている。
カローラクロスの実用燃費やコスパを含めたバランスの良さは極めて汎用性が高い。また、キャビンの実用性や日常の使い勝手の面ではヴェゼルも間違いなく優等生であり、両モデルが支持される理由もよく分かる。
最終的な走りの評価は新型キックスの試乗を待つ必要があるものの、日産が培ってきた電動技術の進化方向を鑑みるならば、走りの味わいや上質さを主眼に置くプレミアム志向のユーザーにとって、この新型キックスがクラス最有力候補になり得るポテンシャルを秘めていることは確実だ。
ベストバイはこれだ!
NISSAN 新型キックス

■主要諸元(G e-4ORCE) ●全長×全幅×全高(㎜): 4365×1800×1610 ●ホイールベース(㎜):2655 ●車両重量(㎏):1590 ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1433㏄直3DOHC(98PS/11.7㎏-m)+モーター(フロント:105kW/315Nm リヤ:50kW/140Nm) ●トランスミッション:一段固定式 WLTCモード総合燃費:20.1㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)/トーションビーム式(R) ●タイヤ:225/45R19



TOYOTA カローラクロス

■主要諸元(ハイブリッドZ 4WD) ●全長×全幅×全高(㎜):4455×1825×1620 ●ホイールベース(㎜):2640 ●車両重量(㎏):1560 ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1797㏄直4DOHC(98PS/14.5㎏-m)+モーター(フロント:70kW/185Nm ●リヤ:30kW/84Nm) ●トランスミッション:電気式CVT WLTCモード総合燃費:24.6㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)/ダブルウィッシュボーン式(R) ●タイヤ:225/50R18






HONDA ヴェゼル

■主要諸元(e:HEV Z 4WD) ●全長×全幅×全高(㎜):4340×1790×1590 ●ホイールベース(㎜):2610 ●車両重量(㎏):1450 ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1496㏄直4DOHC(106PS/13.0㎏-m)+モーター(96kW/253Nm) ●トランスミッション:電気式CVT WLTCモード総合燃費:21.3㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)/ド・ディオン式(R) ●タイヤ:225/50R18





