車の最新技術
更新日:2018.11.29 / 掲載日:2018.11.29
レンジエクステンダーの特徴と搭載車種まとめ

車と環境との共存が世界的な問題として取り上げられている昨今ですが、そんな時代の流れの中で注目を集めているのが、今回紹介する「レンジエクステンダー」です。日本ではまだ搭載車種が少ないのですが、未来への期待はその分大きく寄せられています。そんなレンジエクステンダーの特徴や、機能搭載によるメリットとデメリットについてまとめました。
レンジエクステンダーの概要と特徴
レンジエクステンダーの概要
「レンジエクステンダー(Range Extender)」とは、発電用の小型エンジンを積んだ機能です。日本語で”航続距離延長装置”と訳します。レンジエクステンダーを搭載した車のことを、レンジエクステンダーEV(EV=電気自動車)と呼びます。
電気自動車は環境性能の高い車ですが、航続距離の短さや充電時間の長さが問題視されがちでした。EVが持つそれらの短所を補う要素を持つ車が、レンジエクステンダーEVです。
特徴その1:発電用の小型エンジン搭載
レンジエクステンダーEVは、その名のとおり電気の力で走ります。エンジンを使った小型発電機を搭載してはいるものの、その目的は走行ではなく「補助発電」です。
補助なので通常の走行時は起動しません。小型発電機が動き出す時は「走行中のバッテリー残量が少なくなった時」です。バッテリーの残りが少なくなるとエンジンが起動し、エンジンから生じる電気を充電しながら走り続けることができます。
特徴その2:レンジエクステンダーEVの分類はPHV/PHEV
レンジエクステンダーEVは、日本をはじめとする諸外国で法律上PHV/PHEV(プラグインハイブリッド車)として扱われています。ただし実質的な分類上は、PHV/PHEVとは別の車であるとの認識が主です。
その理由は、PHV/PHEVは「ガソリンエンジンと電気の力」で動きますが、レンジエクステンダーEVの場合は「エンジンはあくまでも発電用で、走行は電気の力」という点が違うからです。
レンジエクステンダーのメリット
EVとPHV/PHEVの優れたところを取り込んでいるとも言えるレンジエクステンダーですが、果たしてそのことによるメリットはどのような点でしょうか。
充電ステーションがなくてもガソリンスタンドで燃料補給できる
レンジエクステンダーの場合、バッテリーの残量が少なくなると、小型発電機で電気の供給が可能です。そのため、走行中に万が一充電ステーションが見つからなくても、ガソリンスタンドで燃料を補給し、エンジンの力で走り続けることができます。
このような仕組みから、レンジエクステンダーにはEVの短所としてよく言われている「走行距離が延びるほど充電時間が増えるデメリット」も見られません。
純EVと構造が似通っているため、モデルチェンジがやりやすい
同じ車種のレンジエクステンダー搭載モデルと非搭載モデルを比べると、構造にはほとんど違いがありません。単純に言えば、小型発電機を乗せているか電池を乗せているかの違い程度です。そのため、小型発電機とバッテリーの開発が進むにつれ、良い性能の装置に付け替えることも比較的簡単にできます。
レンジエクステンダーのデメリット
レンジエクステンダーのデメリットはどのようなものでしょうか。
PHV/PHEVのように排熱を取り込んで再利用をすることが難しい
PHV/PHEVやハイブリッド車の場合、ガソリンエンジンの排熱を取り込んで再利用が可能です。しかしエンジンを走行時に使用しないレンジエクステンダーの場合、その排熱の再利用が難しいとされています。
長期放置することでガソリンの劣化が起こり得る
ガソリンを入れっぱなしでずっと放置しておくと、少しずつ劣化していきます。ガソリンの劣化を防ぐためには、一定期間内にエンジンを始動させなくてはいけません。「一定期間」の目安は、2~3か月程度です。
発電機の分、重量が増える
小型とは言え発電機を乗せているからには、その分非搭載モデルに比べると重量は増えます。例えば、現在発売中のBMWi3の場合、レンジエクステンダーモデルの方が非搭載モデルより約120kg重くなっています。大人二人分の負荷があるということは、その分燃費性能に影響が出ることは言うまでもありません。
レンジエクステンダー搭載車種・これから発売予定の車
ここからは、レンジエクステンダー搭載車種や発売が予定されている車種を紹介します。まだまだレンジエクステンダーEVは少ないものの、発売の予定が発表されている車や試作車、発売されるのではとの噂のあるブランドなど、レンジエクステンダーに関する話題は大変ホットなのが現状です。
【発売中】BMWi3

世界でもトップクラスのカーブランドBMWから発売されているEVです。レンジエクステンダーモデルと非搭載モデルがあります。先進的ボディデザインと運動性能のすばらしさは、BMWならでは。充電ステーションは、全国で2万か所以上設置されています。
・全長:4,020mm
・全幅:1,775mm
・総排気量:647cc
・乗車定員:4名
・価格:587万円~
アウディe-tron
こちらのアウディe-tronは2010年に開催されたジュネーブショーで出展されました。発電機と一体になったロータリーエンジンが使用されており、EV走行終了後にはリアシート下にあるタンク内のガソリンを使用することで、長距離の走行を可能にしています。
・全長:4,900mm
・全幅:1,940mm
・乗車定員:5名
【アウディジャパン公式】Audi e-tron Test Drive Movie Report
LEVC TX
長年に渡ってイギリスで使用されていたロンドンタクシーですが、電気自動車であるTXが2018年から採用されています。満充電時には130kmもの走行ができ、併せて搭載している発電機と燃料タンクによってさらに長距離ドライブが可能なのが特徴です。
・全長:4,857mm
・全幅:2,036mm
・乗車定員:5名
【LEVC公式】eCity technology: Watch the range extender back up the battery giving a total range of 377 miles!
【開発中】マツダ新型REレンジエクステンダー
2018年10月、マツダが新型のRE(ロータリーエンジン)レンジエクステンダー搭載モデルを開発すると発表。マツダのニュースリリースを参考にしたところ、通常時の発電に加えてLPガスによる緊急給電も想定しているとのことです。
2018年11月の時点で価格などの詳細は不明です。今後の続報に期待が寄せられます。
今回の記事は、レンジエクステンダーの特徴についてまとめました。走行距離に関する不安が小さくなる点が、レンジエクステンダーの大きな魅力です。ただし普段あまり長距離運転をしない人にとっては、デメリットが目立つ可能性も考えられます。本文でもお伝えしたように、2019年にはマツダから新型REレンジエクステンダーEVの登場も予定。他メーカーの動向も楽しみです。