車の最新技術
更新日:2026.07.10 / 掲載日:2026.07.10
柔軟性を追求するスバルのものづくり。時代の変化に対応するクルマ生産の“勝ちワザ”とは

クルマに関する気になる話題を掘り下げたり、ニューモデルの試乗記事を紹介するコーナー。最新トレンドをわかりやすく、詳しく解説します。
時代の変化に対応するため柔軟性を持たせた生産体制
複雑で先の見通しがきかない時代にどう対応していくのか。スバルが出した答えは、柔軟性だった。
世界販売台数は約100万台、シェア率約1%という、数ではなく質で勝負するスバルにとって、現在の自動車ビジネスにまつわる状況は嵐の中にいるような気分だろう。
2010年代に始まった自動車産業「100年に一度の大変革」は、電動化と知能化が競争の鍵となるという理解で広まり、電気自動車時代の幕開けというシナリオとしてスタートした。だが、10年が経過した世界状況は、当初の見込みよりも大幅にトーンダウンしている。電気自動車の普及速度は緩やかで、販売禁止説すら叫ばれていた内燃機関はモーターの補助を受けながらも、当分の間は主力となる見込みだ。
スバルはまさにそんな状況に翻弄されながらも、過剰な投資を抑えつつクレバーに立ちまわっている。
トヨタとの業務提携を活用し、投資を抑えながら電気自動車のノウハウを取得。将来に向けて開発は続けつつも、当面の稼ぎ頭であるハイブリッド車に注力していく考えだ。
それをものづくり面で支えているのが群馬県太田市にある矢島工場。かつてはレオーネやアルシオーネを、90年代からはレガシィやフォレスター、インプレッサといった主力モデルを生産してきた。
当初は北米向けの電気自動車を生産するために改修を行っていたが、状況の変化を受けてハイブリッド車も生産できるよう仕様を変更。さらにトヨタからもbZ4Xツーリングの生産を請け負う。
こだわりと柔軟性。先行きが見えない時代を生き残るための、スバルが編み出した勝ち技である。
[CLOSE-UP]矢島工場では2台の電気自動車と、1台のハイブリッド車を同時に生産【成り立ちの異なる3モデルを混流生産する技術】

クルマは、まるで川のように、上流から下流まで車体が進むにつれて完成していくライン方式で作られる。従来の価値観では、早く、多く、安く作るのが優れた工場だった。しかし、そういった工場は状況の変化に弱く、稼働率の低下は業績の悪化に繋がる。矢島工場では、バッテリー組み立て工場の設置など、電気自動車を生産できる環境を整えながらも、異なる車種、異なるパワートレインを混ぜて生産できる仕組みとした。車体を吊り下げるクレーンは、重量対策に加えて車体を固定する位置が変動できる構造を採用。部品を運ぶ方法も、ベルトコンベアから自動搬送ロボットにすることで、工程変化を高速かつ低コスト化。柔軟性を高めることで収益構造を強化した。
電気自動車[スバル トレイルシーカー]

スバルにとって初めて自社工場で量産する電気自動車。ソルテラ/bZ4Xのメカニズムを使いながら、スバルらしいステーションワゴンとして企画された。
電気自動車[トヨタ bZ4X ツーリング]

トレイルシーカーと仕様的には共通点が多いものの、独自パーツや工場でボディを吊り下げる際の位置や組み立て手順など、トヨタ基準の部分も多く、実質的に別車種。
ハイブリッド車[スバル フォレスター]

スバルの主力モデルで、日本およびアメリカの多くの工場で生産している。ガソリン車とハイブリッド車を展開する。2026年夏から矢島工場での生産を開始予定。
矢島工場が混流生産に対応した経緯
スモールプレイヤーだからこそ時代の流れに素早く対応
| 1. | 電気自動車時代を見据えて工場改修を計画 |
| 2. | 主要市場での電気自動車の需要が減速 |
| 3. | 状況の変化に対応できる柔軟な工場へ |
当初の計画では、矢島工場は電気自動車のみを生産するはずだった。しかし、環境の変化は大きく、スバルは独自開発中だった電気自動車についても開発を凍結した。稼働率が低いまま工場を操業すると経営効率は悪化する。そこでスバルは工場の構造を、変化に強い柔軟性の高いものに仕様変更。さらに他の工場とも連携して、生産の最大効率化を目指す方針を取ることとなった。
進化し続ける新工場で次世代モデルを生産

スバルは現在、大泉新工場を計画中。これは流通や生産技術にAIを積極的に盛り込む予定で、柔軟性を徹底的に追求した工場になるという。開発環境、生産環境、そしてクルマそのものも進化し続ける仕組みを作ることで、さらなる飛躍を目指す。
文●ユニット・コンパス 写真●スバル
(掲載されている内容はグー本誌2026年7月発売号「噂のクルマNEWS ニュースキャッチアップ/先行きの見えない時代に対応する【柔軟性を追求するスバルのものづくり】」記事の内容です)