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更新日:2025.09.17 / 掲載日:2025.09.17
コンパクト化したメカを搭載する新型BEV【スズキ eビターラ発表会】

文と写真●内田俊一
スズキは9月16日、バッテリーEV(BEV)の新e ビターラを2026年1月16日より日本で発売すると発表した。価格は2WD、49kWhバッテリーを搭載したXグレードの399万3000円から。なおクリーンエネルギー自動車導入促進補助金の交付額は全機種で87万円となる。
BセグSUV市場にめずらしい4WDもラインナップ


e ビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開され、2025年1月にインドのBharat Mobility Global Expo 2025で発表されたスズキのBEV世界戦略車第一弾だ。“Emotional Versatile Cruiser”を商品コンセプトに、BEVの先進感とSUVの力強さを併せ持つデザインと、BEVらしいキビキビとしたシャープな走りを実現するBEVパワートレイン、悪路での走破性のみならず、よりパワフルな走りを実現する電動4WD“ALLGRIP-e”、BEV専用に新開発したプラットフォーム“HEARTECT-e”を採用したSUVだ。
駆動方式は2WDと4WDが用意され、2WDには49kWhと61kWhの2バリエーションのバッテリーがラインナップ。4WDには61kWhのバッテリーが搭載される。
パワートレインで注目すべきは、モーター、インバーター、トランスアクスルを一体型にした“eAxle”だ。これら構成部品を一体にすることで、エネルギー効率を高めると同時にコンパクトな設計を実現している。また、アクセルペダルの操作のみで加減速をコントロールできる“イージードライブペダル”に加え、“NORMAL”“ECO”“SPORT”の3つのドライブモードを設定。さらに安全性が高く、バッテリー寿命も長いリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(BYD傘下のフィンドリームバッテリーから供給)を採用した。

電動4WD機構の“ALLGRIP-e”は、前後に独立した2つのeAxleを配置することで4WD化。“オートモード”と“トレイルモード”の2つのモードが設定可能で、“オートモード”は、路面状況に応じて各制御を最適化し、優れた操縦安定性と悪路走破性を実現。前後駆動力配分を緻密に制御することでタイヤのグリップを最大限活かし、さまざまな道での安定した走行、走る、曲がる、止まるを実現している。そして“トレイルモード”は、タイヤが浮くような路面でも空転したタイヤにブレーキをかけ、反対側のタイヤに駆動力配分(LSD機能)することで、悪路からスムーズに脱出を可能とした。
新開発されたBEV専用プラットフォーム“HEARTECT-e”は、軽量な構造、高電圧保護、ショートオーバーハングによる広い室内スペースを実現。高ハイテン材の使用率を従来のプラットフォームより上げることで重量低減が図られた。また、メインフロア下メンバーを廃止することで、バッテリー容量を最大化。最小回転半径は、ロングホイールベース、タイヤの大径タイヤを採用しながらも、タイヤの切れ角を大きくすることで、5.2mを実現している。
クルマとしての基本性能を作り込むことが重要

発表会においてスズキ代表取締役社長の鈴木俊宏氏は、このeビターラについて、「地域や市場に応じた多様な選択肢をご提供するスズキのマルチパスウェイ戦略の一環としてすでに販売を開始した欧州を皮切りに、グローバルモデルとして世界100以上の国と地域へと入するスズキ初のバッテリーEV SUV」と紹介。
そしてe ビターラのチーフエンジニア、小野純生氏は開発にあたり、「BEVである前に、クルマとしての走る・曲がる・止まるの基本性能を徹底的にブラッシュアップ。日本にあるスズキのテストコースだけでなく、世界中のお客様が実際に使用するような環境下での評価を積極的に実施した」と語る。同時に、「他社のBEVを徹底的にベンチマークするとともに、EVユーザーが日々経験されている不便さの解決のためにそのユーザーの声を聞くことにも努めた。結果、全社一丸となりさまざまな環境でテストを重ねることで、どんな環境でも最高のパフォーマンスを発揮できるように仕上がっている」とクルマの基本性能とともに、最後発ゆえのBEVの完成度の高さに自信を見せる。

そして、「BEVは特別の乗り物ではないと思っている。お客様にたくさん使ってもらい、楽しく乗っていもらうことが一番だ。そのため、新型e ビターラでは安心して乗ってもらえるように、バッテリーを積んでも室内空間を犠牲にしないことなど、お客様の立場に立ってチームスズキで作り上げた」と述べる。
また、スズキ初のBEV SUVを投入するということで、スズキに日本営業本部本部長常務役員の玉越義猛氏は、販売現場では、「急速充電器を約100店舗に設置、普通充電器は約800店舗に設置を完了。また、設置している店舗のうち8割以上では、キロワットアワー従量課金を導入し、充電した量に応じた料金を支払う方式も採用」と述べる。当然設備だけではなく、「販売スタッフ向けにEV販売の研修を徹底して行っている。初めてEVを検討するお客様にも安心して購入してもらえるよう一台一台丁寧に販売していく」とのこと。
また、購入後も快適なEVライフを送れるように、「スズキのEVを購入いただいたお客様向けの充電サービスを用意する予定だ。新型e ビターラの発売に合わせて提供できるよう開発中だが、スマートフォンアプリと専用充電カードを用意する」とコメントした。
最後に鈴木社長は、「スズキはこの新型e ビターラを皮切りに競争が激しいEV市場に参入していく。その中で日本をはじめとした各地域のお客様が実際にクルマをどのようにお使いいただいているのかをしっかりと把握した上で、今後も適所適材のバッテリーEVを導入したい」と今後の見通しを語った。


