車の最新技術
更新日:2025.02.21 / 掲載日:2025.02.21
スズキの近未来。日本からインド、そして世界へ!

文と写真●ユニット・コンパス
近未来のスズキ車が見えてきた。
スズキは2月20日に2030年までの中期経営計画を発表。乗用車だけでなく、2輪や船外機なども含めた企業としてのスズキが、これからどのようなプランで事業を継続していくのが語られ、新しいコーポレートスローガン「By Your Side」がお披露目された。
今回は、この発表内容から今後のニューモデルについて考察していく。
インドでの生産台数を2030年までに400万台に拡大

その前に、スズキの自動車ビジネスについて簡単に説明しよう。
スズキは静岡の浜松に本社を構える日本企業だ。設立は1909年で、創業当時は織物の機械を販売する「鈴木式織機株式会社」としてスタート、その後自動車ビジネスを手がけるようになり、1954年に「鈴木自動車工業株式会社」に社名変更。現在の「スズキ株式会社」となったのは1990年のことになる。




そしてもうひとつのスズキが、インドに本拠地を持つ「マルチ・スズキ・インディア」。1981年の設立からすでに40年以上もの歴史を歩んでいる子会社だ。子会社といってもその規模は大きい。2024年における生産台数約330万台のうち、日本の102万台を大きくうわまわる206万台となっているのだ。販売はもっと存在感が大きい。なんとインド市場向けの販売台数はスズキの世界販売台数の50%を上まわっている。マルチ・スズキとインド市場は、スズキの自動車ビジネスにおける屋台骨なのだ。
ここまでの説明を読んで、最近のニューモデルに詳しいひとは膝を叩いただろう。小型SUVのフロンクスや発売直後にオーダーストップになったジムニー ノマド、どちらもインド生産である。
中期経営計画によれば、スズキは今後インドの生産台数を400万台まで引き上げるという。インドで生産されたクルマが、インド市場だけでなく日本を含めた世界各国へと輸出されていくことになる。
世界で愛されるコンパクトカーブランドとして

では、これからスズキはどのようなニューモデルを開発していくのか。
ヒントになるのが鈴木俊宏社長が壇上で繰り返した「社是と3つの行動理念にそった考え方や行動を徹底していく」というメッセージだ。
社是の最初の言葉である「お客様の立場になって価値ある商品を作ろう」、そして「小・少・軽・短・美」、「三現主義」、「中小企業型経営」が3つの行動理念。それを端的に表現すると、鈴木社長が発した「こんなクルマが欲しかった!とお客様に思ってもらえること」に集約されるのだろう。フロンクスもジムニーノマドも、まさしくそういったクルマに仕上がっている。
開発方針については、クルマの知能化と電動化が進むトレンドを見据えながらも、多くのユーザーが求める技術を採用していくとのこと。
とくに電気自動車については、補助金といった「インセンティブを前提としている商品は健全ではない」と主張。引き続き開発は続けるものの、ユーザーニーズに合わせて選択肢を複数用意するマルチパスウェイで進めていくとした。そこはまさに「By Your Side」ということなのだろう。
スズキがユニークなのは、北米と中国という2大市場でクルマを販売していないところだ。どちらも成熟市場で、付加価値の高い商品が人気だが、それはスズキのキャラクターとマッチしないという考え方なのだろう。その割り切りがすごい。スズキはこれからも、インドを筆頭として日本を含むアジアやアフリカ、中東、中南米といった地域で、ひとびとの暮らしを支え、人生を楽しくするクルマを作るという。それはただ安くて便利なクルマを作るという意味ではもちろんない。
2021年6月からの新体制でもっとも変わったのが、組織が縦割りからコミュニケーションを大切にし、お互いを尊重する「チームスズキ」になったことだと鈴木社長は胸を張る。きっとそういうチームから生まれたクルマであれば、世界各国で人々から愛されるに違いない。