車の最新技術
更新日:2025.01.10 / 掲載日:2025.01.10
インターネット時代のクルマはこんなに進化!輸入車のコネクテッド最新事情

[輸入車のコネクテッド最新事情]ちょっと先に行く、海外勢の現在地
文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、MINI
(掲載されている内容はグー本誌2025年1月発売号「[輸入車のコネクテッド最新事情]ちょっと先に行く、海外勢の現在地」記事の内容です)
もはやインターネットのない生活は成り立たない。SNSやメールといった人とのつながりや日常で利用するサービスの多くが、インターネットを利用することを前提として作られている。クルマの進化もその方向にあるが、最先端を走るのが輸入車だ。ここでは、そんな輸入車のコネクテッド事情を紹介する。
社会とつながるクルマを目指して進化した輸入車
2016年にダイムラー社(当時)が中期経営ビジョンとして発表した「CASE」は、自動車の進化を示すキーワードの頭文字を並べたもので、多くの自動車メーカーに強烈な影響を与えた。その最初の一文字「C」が指し示すのがコネクテッド。単にクルマが便利になるだけでなく、クルマから集まったビッグデータを活用することで、交通渋滞や事故を減らすことにもつながるという大きなビジョンが込められていた。
そこに関係してくるのがクルマの自動化と電動化。「CASE」のAとEだ。電気自動車が普及すれば行く先での充電も必要になるため、ナビゲーションに充電ステーションのリアルタイム情報を盛り込みたい。さらに自動運転技術とも連携すれば、自動バレー駐車システムが実現できる。ドライバーは駐車場の入り口でクルマを降り、戻ってきたらスマホでクルマを呼び戻す。そんな近未来がそこには描かれていたのだ。
欧州の自動車メーカー、特にドイツブランドはここ数年、基本的にこうした方向性でクルマ作りを行ってきた。持続可能性のあるクルマ社会を、ドイツ主導で実現するというのが彼らのモチベーションだ。
ドイツの自動車メーカーは販売価格が高いプレミアムブランドであるため、最先端の技術を搭載しやすいという背景もある。
というわけで、日本で購入できる輸入車には、先進的なコネクテッド技術が搭載されている。クラウドやAI技術を活用した車載システムは、クルマと会話するような感覚で各種機能にアクセスできる。
各種インターネットサービスも利用できるため、まさに走るスマホのように生活を便利にしてくれる。
「Hi!、メルセデス」で有名になったコネクテッドあれから7年、現状は?

さまざまなサービスがスマホを使わず利用可能
2018年に日本に導入されたメルセデスのAクラスは、コネクテッド技術を活用した「MBUX」という画期的な機能を搭載したことで話題になった。特に「Hi!(ハイ)、メルセデス」のキーワードで起動するボイスコントロールは、その象徴としてCMでもフィーチャーされた。現在ではMBUXは第3世代に進化。サードパーティ製アプリに対応したことで、スマホを経由せずにいつも利用している音楽ストリーミングやオンライン会議が利用可能になった。また、人工知能を使ったコンシェルジュ機能により、おすすめの目的地や渋滞情報などの各種情報を提供してくれる。

スマホがあれば鍵なしでもエンジン始動できる

BMWは、2013年にコネクテッド技術を輸入車として初めて搭載。2021年には、車両と連携するスマホアプリ「My BMW」をリリースしている。2024年11月に登場した新型X3では、「BMWデジタル・キー・プラス」を標準装備。これは対応するスマホまたはスマートウォッチが車両のキーとなるもの。鍵の開け閉めだけでなくエンジンスタートも可能で、ついにクルマの鍵を持ち歩く必要がない時代がやってきた。また、通信料無料で音楽などのストリーミングサービスも利用可能。

海外ではこんな機能もいずれは日本でも一般的に?

コネクテッド技術の進化でクルマはさらにスマホ化
本国ではさらに一歩先を行くコネクテッドサービスが提供されている。
日本と海外でサービスの内容が異なる理由はいくつかあるが、代表的なのが、国ごとに規制が異なり、認可の取得に時間やコストがかかるという問題だ。また、サービスの内容が日本エリアで提供されていない場合も多いにある。コンテンツ系のサービスはそういう傾向が強い。
ここでは、まだ日本では体験できない輸入車のコネクテッド技術を紹介する。基本的な考え方としては、スマホでできることの多くをクルマでもできるようにするといった思想だ。
背景にあるのが、将来的な自動運転時代に向けてのサービスだ。自動運転レベル3以上になると、一定の条件下であれば、ドライバーも動画視聴やメールのやり取りができるようになる。そうした時代を見据えて、すでにプレミアム系ブランドを中心に、車内での過ごし方を充実させるサービスが広がってきている。
だから最近発表されるプレミアムブランドのモデルはセンターディスプレイが大型化し、助手席にも専用のモニターを備えるモデルが増えてきている。1人・1モニター時代だ。
注目は車内決済で、ガソリンスタンドや駐車場などサービスを利用したときに財布を出すことなく支払いが可能になる。地味ではあるが、間違いなく便利だし、防犯的にも有効。
こうしたコネクテッド技術は、いずれ日本にも上陸するだろう。

映画やスポーツまで広がるコンテンツ

大型化しているセンターディスプレイを使う動画コンテンツの視聴については、ただ視聴できるというレベルを超えて、どんな作品が見られるかという段階での競争となっている。大手映画会社との提携や人気サッカーリーグの試合中継など、有料レベルのコンテンツを取り揃えている。
最新ゲームタイトルを車内の画面でプレイ

大きくて美しい画面があればそれでゲームを遊びたいというニーズは当然出てくるもの。メルセデスは、クラウドゲームのプロバイダーと提携。クラウドゲームとは、サーバーでゲームを実行した内容をストリーミングするシステムで、話題性の高い人気タイトルも車内でプレイできる。
アップルウォッチからクルマをリモート操作

スマホキーからさらに進化。メルセデスは、ウェアラブル端末であるアップルウォッチに対応するアプリを発表した。スマホを使うことなくキーの施錠、開錠や位置情報、走行可能距離などを確認できる。
観光地に近づくと音声で解説が開始

メルセデスが採用した「セレンス・ツアーガイド」は、AI技術を使った自動ツアーガイド機能。機能をオンにした状態で観光地に近づくと、高品質な音声で観光地の見どころなどを紹介。現在、3400箇所の情報を提供する。
クルマが決済端末になり車内で支払いが可能に

クルマに生体認証システムを搭載することで、車内にいながら各種サービスの決済が可能になる機能をメルセデスは搭載。まさにスマホ感覚だ。利用シーンとしてはガソリンスタンドや駐車場などを想定している。
コネクテッドはクルマだけでは完結しない大きな課題がある
非常に高機能な輸入車のコネクテッド。しかし、充実したサービスを提供するためには、インフラや他業種との連携が不可欠だ。輸入車の課題はそこで、日本市場のためにサービスをどれだけ構築できるかが課題になってくるだろう。