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更新日:2024.09.21 / 掲載日:2024.09.21

新型シビック“RS”の魅力とは?

2024年夏、シビックにマイナーチェンジが実施されることになった。フロントフェイスのデザイン変更なども行われるが、一番の見どころは新たに追加されたグレード「RS」だ。タイプRもラインナップされるなかで、一体どんな立ち位置になるのか。そんな気になるシビックRSの魅力を解説していこう。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

6速MTと専用チューニングで爽快なモデルに! 「ロードセーリング」復活!

HONDA新型CIVIC RS

9月正式デビュー! 爽快な走りと実用性が両立され、現代に蘇ったシビックRS

ファントゥドライブを追求したシビックRS

ひと昔前なら市場の中心だった4・5m級全長のミドルセダンもキャビン実用性に優れたSUVが台頭したことで標準的なポジションを浸食され今や国内市場では絶滅危惧カテゴリー。そこで孤軍奮闘するモデルのひとつがシビックだ。もっとも、セダンに分類されるものの車体構造は5ドアHBであり、3BOXの伝統的なセダンとは異なっている。深く前傾したファストバック様のリヤゲート周りを見ても分かるようにスポーティ&スペシャリティなキャラ付け。そのキャラを強化すべく誕生したのがMCで追加される新グレードのRSである。

シビックには究極のFFスポーツを目指し開発されたタイプRが存在するが、車体もパワートレーンも専用仕立てのモデル。一方、RSはシビックのラインナップとして展開されるモデルであり、ブッシュ類まで変更したRS専用のサスチューンや専用のハードウェアを採用。明らかにはされていないが、エンジンは標準と同じ1・5ℓターボでまず間違いない。突出したパワースペックを備えたモデルではない。

NA2ℓ級に相当するダウンサイジングターボだが、低回転から6000回転超まで安定したトルクを発生し、レブリミット近くでも軽快なエンジンフィールを示す。実用動力性能だけでなく、回しても心地よく、実用とスポーティを上手に両立している。

RSの操り心地へのこだわりは相当なものだ。ミッションは6速MTのみの設定。スポーツモデルを分かりやすく主張するだけでなく、従来のMT車に対して慣性モーメントを30%減らした軽量フライホイールを採用し、変速の小気味よさを向上。さらにはタイプRにも採用されているダウンシフト時に自動的に回転合わせを行うレブマッチシステムも加わる。また、大径化されたブレーキディスクなど加減速のコントロール性を総合的に向上させる変更も追加される。

スポーツモデルにおいてパワートレーンの第一の評価点は速さだが、RSがその点で特別なモデルでないのは前述したとおり。しかし、MTを選択する意義を実感できる操作感に特別なシビックを思わせる。ヒール&トウの空吹かしの反応もよく、いわゆるピシッと決まる変速感なのだ。

ならばレブマッチシステムは不要かというとそんなことはない。今回はクローズドコースの試乗ということで限界近いスポーツドライビングも試したが、同時に一般道走行を模した走り方も。ブレーキの踏み込みが少ないとヒール&トウのアクセル操作に神経を使うが、こんな状況ではレブマッチシステムに任せっきりがいい。クラッチを繋ぐ直前に回転合わせを行うのでクラッチの踏み込み時間が長くなってもダウンシフトは驚くほどスムーズ。しかも、ダウンシフト後の回転数が6000回転前後でも自動調整している。つまり全開走行にも対応。試乗後半では大半をレブマッチシステムにお任せ。ならば2ペダル仕様を用意しても、と素朴な疑問も頭に浮かぶ。個人的にはMT変速モード付CVTの追加も望むのだが、今のところとはいえMT専用とするのも開発陣のこだわりなのだろう。ちなみにMC前では標準系にMT車が設定されたが、MC後のMT車はRS限定となっている。

変速感中心にパワートレーンが気持ちよければフットワークも気持ちいいのがRS。タイプRのデチューン版と言えないこともないのだが、中庸域で無駄な動きを抑えていなしと収まりを高めているのが見所。限界近くまで追い込まないと本領が発揮されないハードコアスポーツとRSの根本的な違いはそこにある。

前記したとおり一般道を模した走り方も行ったわけだが、サスのストローク感や滑らかな収束は緩やかな加減速や横Gの変化にも感じられる。追い込んだ時と穏やかな走りで特性を大きく変えない。幅広い負荷領域で変わらぬRSの扱い心地と乗り味が得られる。

スポーツモデル故に標準系よりも乗り心地は硬めだが、車軸周りの揺動感やサスストロークでの揺れ返しの減少もあって、乗り心地の質感は標準系よりも高まっている。「しっかり&滑らか」という類の乗り心地であり、同乗者に嫌がられることもないだろう。

パワートレーンもシャシーも幅広い速度域と負荷域で心地よい操り心地があり、普段使いや長距離ツーリングにも織り込める良質なファントゥドライブはマニア以外にも勧められる。

クルマを操る楽しさと扱いやすさを追求した走り

RSの走りは、スポーツ走行よりもファントゥドライブを意識した味付け。小気味のよいMTを操る感覚や専用にチューンされた足回りで、爽快なフットワークを日常の速度域で楽しめる。
RSは、軽量フライホイールや16インチにサイズアップされたブレーキディスクなどを採用。普段使いはもちろん、スポーツ走行でもその実力を発揮する。
写真から見てもエンジンはEXグレードなどと同じ1.5ℓターボの搭載はまず間違いなさそう。北米仕様から考えると最高出力は200PSを超えそうだ。
ドアミラーやシャークフィンアンテナなど、エクステリアの各部にRS専用のブラック加飾が施され、スポーティさを強めたスタイリングに。
MCでより精悍になったフロントフェイス。専用バッジを配し、一目でRSと分かる。
18インチアルミホイールも黒く塗装されており、スポーティな印象に引き締める。
運転に集中しやすい水平基調のインパネ。ステアリングなどの細部には、スポーティさを感じさせる赤色が配されている。
RSのドライブモードには、レスポンスがアップするSPORTと任意で特性を設定できるIndividualの2つが追加された。
赤のステッチが配されたシフトレバー。握りやすく、爽快なシフトチェンジを楽しめる。
アルミペダルを採用し、足元をスポーティに演出。雨の日でも滑りにくく安心だ。
Googleを搭載し、さらに使い勝手が増したディスプレイオーディオを採用。
赤のステッチが光るフロント/リヤシート。スポーツ走行に特化したバケットシートではないのがRSのキャラクターを表す。
日常生活でもRSは大活躍。荷室も十分に確保されており、荷物が多くても安心だ。

e:HEVモデルもマイナーチェンジ

新たに追加されたボディカラー「シーベッドブルー・パール」に身を包むe:HEV EX。RS以外のグレードも端正な印象を与えるフロントフェイスに変更された。
水平基調のインパネデザインはRSと共通。e:HEV EXには、上質さを感じさせる専用のグレー内装が展開される。
今回のマイナーチェンジにより、e:HEVモデルのホイールはシャープな印象を強めるデザインに。

シビック用純正アクセサリーも公開!

ホンダアクセスからシビックの魅力を高める純正アクセサリーが登場。実効空力を追求したテールゲートスポイラーや、エクステリアにアクセントを加えるアイテムがラインナップされている。

ホンダのRSとは…

●初代シビックRS(1972〜1979年)

 RSはロードセーリングの略。なめらかで快適な走りというような意味が込められている。RSのグレード名は初代シビックのモデルライフ途中から追加されている。ただし、シビックのスポーツモデルとして定番化されたわけではなく、シビックでは2代目以降途絶える。世界戦略車の基幹車種としてシビック自体も車格やコンセプトを変えていたこともあり、RSのグレード名は初代シビックに近いコンセプトや車格となるフィットに引き継がれる。フィットRSは2代目からラインナップされ、空白期はあるものの以後4代目まで設定される。なお、シビックも含めて現在展開されるRS系では唯一MTが設定されない。

 他ではN-ONEにも先代後期型からRSが設定され、現行モデルではシリーズで唯一MTを選択できるグレードでもある。

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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