車の最新技術
更新日:2023.06.12 / 掲載日:2023.06.10

「最新安全装備」の現在地

加速するクルマの進化は雨でも役立つ!

今では当たり前となったクルマの先進安全装備。
その進化はめざましく、わたしたちの運転を快適にアシストしてくれる。
でもそれって、雨でも性能を発揮してくれるもの?
そんな疑問を雨の高速道路を実際に走り、たしかめてみた。

文/渡辺陽一郎 撮影/渡部祥勝、茂呂幸正

(掲載されている内容はグー本誌 2023年6月発売号掲載の内容です)

進化を重ねる先進安全装備は雨のなかでも優秀なのか?
 設計の新しいクルマを購入するメリットのひとつは、先進的な安全装備や運転支援機能を得られることだ。この分野は過去10年ほどの間に急速に進化して、今でも改善を続けている。その進化は、自動運転が実現するまで続いていくだろうから、道のりは長いが今後も期待できる。
 衝突被害軽減ブレーキと車間距離を自動制御できる、アダプティブクルーズコントロール(ACC)をいち早く普及させたのはSUBARUだ。1999年にADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)を開発し、2008年には最初のアイサイトに進化させた。「ぶつからないクルマ」というキャッチフレーズのCMが注目され、他社も含めて衝突被害軽減ブレーキの本格的な普及が始まった。
 ただし、この時代は車種ごとの差も大きく、たとえば2012年に発売された初代(先代型)CX—5で採用された衝突被害軽減ブレーキは、赤外線レーザー方式で、作動速度の上限が時速30㎞だった。それがマイナーチェンジで改良され、現行型ではさらに進化して、最新の全車速追従型のACCが採用されている。
 このように、先進安全装備は登場してから、めざましいスピードで進化を重ね、今やその性能も大きく向上していることが広く認識されているわけだが、ふと、ここで気になることが……。これから梅雨や雷雨など、雨の多い時期となるが、それら先進安全装備は雨のなかでも変わらず性能を発揮するのか? また晴れた日と比べて車両の制御には何かしらの差があるのだろうか?
 そこで今回、新型(現行型)エクストレイルのプロパイロットを使用して、実際に雨のなかを走ることで、先進安全装備の雨の日事情について、確認することにしてみた。

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運転時、晴れと雨天の差とは

今どきの最新安全装備搭載車の実力を雨天時のドライブで検証
 雨天時には当然、さまざまな危険要素が増してしまう。まず視界が悪くなり、事故に通じる危険な要素を発見するのが遅れがちになる。高速道路では、遠方で発生した渋滞もわかりにくく、危険に気付いてブレーキを踏むと、雨天時は路面が滑りやすく制動距離も伸びる。ステアリング操作で回避するときの反応も鈍くなりがちで、進行方向を変えにくいなど、晴れの天候と比べると大きな差があることを認識しなければならない。

雨でもクルマの制御に大きな変化はなく、快適な運転が可能。先代型からの進化は間違いない!

※安全装備はドライバーの安全運転を補助するものであり、あらゆる状況での衝突を回避するものではありません。システムの能力には限界があり、天候や路面状況などによっては作動しないことがあります。

多少の雨なら制御に影響なし、白線を検知しにくい場合も……
 エクストレイルのプロパイロットは、前方を検知するセンサーとして、フロントカメラ、ミリ波レーダー、ソナーを搭載する。カメラは対象物を映像で捉えるから、路上の白線なども検知しやすい。ミリ波レーダーは反射を利用するから、視界が悪化する天候にも対応できる。同じくミリ波レーダーを使った前方衝突予測警報は、2台先を走る車両の急な減速も検知して警報を発するから、事故防止の性能も高い。
 高速道路に入り、プロパイロットのスイッチを入れるとクルーズコントロールが作動。アクセルやブレーキペダルを操作しなくても、設定速度の範囲内で先行車に追従走行する。エクストレイルはハイブリッドのe—
POWERを搭載し、反応の素早いモーターがホイールを駆動する。先行車が加速しても、ほとんど遅れずに自然な感じで追従状態を保つ。
 天候が雨に変わっても、車両の制御に大きな変化はない。油断はできないが、ミリ波レーダーにより先行車の検知を続ける。ただし、ステアリング操作を支援する機能は、路上の白線を検知しにくいときには制御が解除されてしまうことがあった。

雨天時の【車間距離①】追従走行はどうか?

機敏な反応と自然な運転感覚がグッド
雨天では視界が悪化し、トンネルを抜けたときの横風も水分を含むから強い力で進路を乱す。ドライバーは晴天時に比べて疲れやすい。このときに追従走行できる運転支援機能があると、疲労が軽減されて安全性も向上する。

雨でもgood !
先行車が加速したときの反応が機敏で、運転感覚も自然な印象。ステアリングホイールのスイッチで行う操作性も優れている。

1世代前と比べると…
以前の運転支援機能は、反応が鈍かった。視界の開けた場所で先行車がいなくなると、後続車が自車も加速すると予想して速度を高めてくる場合もある。反応が鈍いと接近されてしまうことも……。

雨天時の【車間距離②】自動ブレーキはどうか?

先行車に合わせて自然な減速を行う
プロパイロットはあくまで運転支援機能で、自動運転ではない。先行車が急に減速したときは、ブレーキを踏まねばならない。それでもエクストレイルは反応が素早いから、自分で運転しているような感覚で減速を開始する。

雨でもgood !
先行車に続いて停車するときのブレーキ制御も進化。停車寸前にブレーキ力を若干緩めて、乗員が前後に揺すられるのを防いでいる。

1世代前と比べると…
初期のタイプは反応が遅かった。先行車の急な減速に対応できず、警報が発せられて、ドライバーが慌ててブレーキペダルを踏むことがあった。そこが改善された。

雨天時の【車線維持】レーンキープの機能はどうか?

アシストは十分! 荒天時は解除も想定しよう
ステアリング操作の支援は、カメラセンサーで路上の白線を検知して行う。雨天でカメラの視界が悪化したり、路面が濡れてライトを反射すると、検知が困難になることも。その場合は、操舵の支援は解除されることがある。

雨でもgood !
作動の仕方は不自然ではない。ステアリングホイールの操舵角が45度程度までなら、ドライバーが積極的に操舵する必要はない。

1世代前と比べると…
以前のステアリング制御は、直線路でもまっすぐ走らなかった場合も……。液晶画面に「疲れていませんか? 休憩しましょう」などと表示された経験も。

雨天時のカーブでの車速のコントロールはどうか?

適切なタイミングで安心感のある減速
ナビリンク機能付きのプロパイロットでは、カーナビの地図データに基づき、必要に応じて自動的に減速。設定速度が時速100㎞で、前方に車両がいないときでもカーブ手前で自動的に安全な速度まで下がる。雨天でも同じ。

雨でもgood !
運転支援機能が作動中、カーブで速度が高すぎるから減速しようとするタイミングで、それに見合うブレーキングが行われて感心した。

1世代前と比べると…
以前のシステムでは、先行車に追従していたらカーブの手前で速度を下げたが、いない場合は突き進んでいくことも。それに気付いて慌ててブレーキペダルを踏むこともあった。

先進安全装備は雨でも活躍。安心感のある移動をアシストしてくれる!

ナビリンク機能付きの運転支援で高速道路をさらに快適なものに
 車間距離を自動制御できる運転支援機能で最も注意すべき点は、先行車の有無によって制御が変わることだ。先行車がいれば、一定の車間距離を保って追従走行するから、カーブの手前では必然的に運転支援機能も減速する。この追従状態に慣れると、ドライバーはカーブの手前ではつねに減速すると思い込んでしまう。先行車がいない場合、車両は設定された高い速度で減速せずにカーブへ進入するから、ドライバーは慌ててブレーキを踏むことにもつながる。
この操作を雨天時に行うと、路面が濡れたカーブに過剰な速度で進入して、急なブレーキを作動させてしまう可能性があるため危険だ。
 ナビリンク機能が付いたプロパイロットは、カーナビの情報やカメラセンサーの映像により、あらかじめカーブやジャンクションを把握し、状況に応じた適切な速度コントロールが行われるので安心感は高い。
 ただし、運転支援機能は、つねに完璧ではない。白線を検知してステアリング操作を支援する機能は、荒天や夕日などの逆光、白線の劣化などによって正確に検知できないときもある。運転支援のブレーキ制御も、状況次第では解除されることがある。したがって、右足の靴底はつねに前方へ向けておき、ブレーキペダルを踏める状態にしておくことが大切だ。

雨の日のドライブ前にはタイヤの溝を一度チェックしよう!

雨天時に安全に走るには、乾燥路面以上にタイヤの役割が重要になる。摩耗していると、タイヤが水の上に浮いた状態になり、路面を正常にグリップできない。タイヤの接地面にスリップサインが現れたら必ず交換する。空気圧も1ヶ月に1回は点検して、指定値になっているかをたしかめたい。

試乗したのはこちら!

[日産]エクストレイル
日産SUVの主力車種で、現行型の4代目は2022年に発売された。全車がハイブリッドのe-POWERを搭載して、発電用のエンジンには、圧縮比を変化させる機能を備えた直列3気筒1.5ℓターボを使う。居住性は後席を含めて快適で、安全装備も充実している。
中古車価格帯 369.9万〜598.9万円

中古車価格はグーネット 2023年5月調べ。価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。

e-4ORCEがもたらす制御が秀逸
エクストレイルの4WDは「e-4ORCE」と呼ばれる。前後にそれぞれ別個のモーターを搭載して、駆動力の綿密な制御を行う。操舵角に応じて、正確に曲がることが可能だ。

プロパイロット パーキングなら雨天でも安心
自動的に車庫入れを行う機能で、モニター画面上に駐車場所を指定して、スイッチを押す。ステアリングホイール、アクセルとブレーキが自動制御されて車庫入れを完了する。

総括

運転支援は雨でも健在
ただし、油断は禁物

今回、雨のなか高速道路を走り、先進安全装備の車両の制御について確認してきた。大した雨量ではなかったため、晴天時と比べてもプロパイロットは特に大きな差もなく、自然な感覚で運転をしっかりアシストしてくれた。結果、快適な運転を楽しめたわけだが、あくまで補助するものということを前提として忘れないようにしたい。

※安全装備はドライバーの安全運転を補助するものであり、あらゆる状況での衝突を回避するものではありません。システムの能力には限界があり、天候や路面状況などによっては作動しないことがあります。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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