車のニュース
更新日:2022.04.01 / 掲載日:2021.12.10
【大人の自動車遊び】スポーツカーでスポーツ【九島辰也】

文と写真●九島辰也
先日、サーフィン雑誌でちょっとおもしろい試みをしました。ポルシェ911に10フィートのロングボードを載せたのです。撮影はわかりやすいように真横から。なかなかかっこいいシーンが生まれたと思います。
協力していただいたのはスウェーデンのルーフキャリアブランドTHULEです。ルーフとの接続部にあたるフット、バー、パット、アタッチメントを用意していただきました。ただはじめはよく理解してもらえなかったと思います。「サーフキャリアをポルシェ911にですか?」といった感じ。確かにそうです。聞き返すのは無理もありません。SUVやステーションワゴンならともかく、スポーツカーにロングボードを積みたいという要望ですからね。同じポルシェでも、カイエンやマカン、パナメーラなら話は早かっと思います。なので、愛車911の写真を見せ、さらに絵コンテを作って後日説明しました。それで「なるほど」と納得してもらえたようです。
僕の頭の中のスポーツカーのイメージは万能です。もちろん、2+2のシートに大人が4人乗ってスポーツギアを目一杯積んで、なんてのは無理ですが、ひとりで乗っている時はスペースは思いの外あります。以前ゴルフ雑誌の編集長をしている時も、第一特集で同じような企画をしました。「今、ゴルフに行くならスポーツカー!」というタイトルで、FRフェラーリの助手席にゴルフバッグを積んでゴルフ場のエントランスで撮影しました。ロータス・エリーゼと一緒に。
スポーツカーでゴルフへ行くメリットはたくさんあります。助手席にゴルフバッグを積むので、誰も迎えに行かなくていいし、誰も送らなくてすみます。よって時間をコントロールできるので、ラウンド後次の約束があればシャワーを浴びる時間をカットできます。要するにラウンド前後の時間を自分勝手に使えます。
それにそもそもスポーツをしに行くのですから、スポーティな走りが役に立ちます。早朝から高速道路でレーシーなエキゾーストノートを聴けば頭は覚醒しますし、身体もいい感じに動き出します。というか、テンション上がりますよね。まぁ、そんなこんなで目的地に早く着きますし……。

話をポルシェに戻します。
今回、911(997型)にルーフキャリアを付けることでまた少し勉強しました。ルーフ側にフットを装着するポイントが隠れていることと、THULE側にそれに対応するフットがラインナップされていることです。しかも、タイプは3種類あり、好みで選ぶことができます。まさか選べるほどあるなんて思わなかった。
また、装着が思った以上に簡単なことも知りました。キャリアのセットに専用のねじ回しが含まれているので、工具を出す手間さえ省けます。

ということは、911にルーフキャリアを装着するのは特別なことではないということです。日本にいるとあまり見かけませんが、商品ラインナップがあるということは、ヨーロッパではそれほど珍しくないのでしょう。きっと、ドイツやイタリア、フランスあたりではスキーの板を積んでスキーリゾートに行く人もそれなりにいるのでは、と想像できます。目的地はモンブランあたりですかね。それともオーストリアのインスブルックかな。リヨンから東に走れば高級スキーリゾートがいくつかあります。
そういえば、ポルシェAGが発行しているポルシェオーナー向けマガジン“CHRISTO PHORUS”の第一号の表紙がそんな写真でした。スイスのクラウゼン峠で撮られた写真には、雪道に置かれた356とその横でストックを木に立てかけながらスキーブーツを履いている女性が写っていたと思います。

そんなビジュアルが頭のどこかに残っていたのでしょう。思い切ってルーフキャリアを取り付けロングボードを積みました。確かに、スピードはそれほど出せませんし、走り出しはかなり慎重になります。でもアタッチメントとなるロープをしっかり括り付ければそれほど心配はなさそう。それに今回は10フィートでしたから気を使いましたが、ショートボードであればもっと気軽に走れるに違いありません。
いずれにせよ、スポーツカーだからルーフキャリアを付けるのは邪道ということはないと思いました。しっかり固定すれば問題ないし、いつもみたいに走りたければキャリアを取ればいいだけです。前述したように脱着は至って簡単。慣れれば5分の作業です。
それより“スタイル”としてスポーツカーをガンガン趣味に使うのはかっこいいと思います。他人とは違う唯我独尊のオリジナリティあふれたライフスタイルを送れます。でも正直不自由はありますけどね。それを含め“大人のスタイル”ということで、お許しくださいませ。ご興味あり方はぜひお試しを。