車のニュース
更新日:2026.01.24 / 掲載日:2026.01.24
忠実な復元か、新たな価値の創造か。東京オートサロンで見た最新レストアの世界
「ネオクラ」や「ヒストリックカー」などと呼ばれるクルマに注目の集まる昨今。一方で、「乗ってみたいけれど故障が心配」「傷や使用感などが気になるものが多い」という懸念点も。そこで、旧車と長く付き合っていくための参考に、東京オートサロン2026に展示されたレストアの事例を振り返ってみたいと思います。

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オリジナルに敬意を表しつつ、現代風に再解釈「Porsche 911 Reimagined by Singer」

手掛けたのは、空冷ポルシェのレストアの名匠として知られるシンガー・ヴィークル・デザイン。高級輸入車ディーラーのコーンズ・モータースが展示した。インパクトバンパーやホエールテイルウイングなどポルシェ930ターボの象徴的なデザインを大切にしつつ、外装をドア以外、カーボン素材に変更(ドアはスチール製)して大幅に軽量化。

テールランプ横のゴム製クッションをカーボン製にして、ターボの排熱の役割を持たせるなどオリジナルのコンセプトを守りながら、現代的な解釈を加えて、バージョンアップを施しました。

車内空間についても印象的な5連メーターを中心に、一見すると930ターボのインテリアを忠実に再現しているような雰囲気。しかし、見えにくい部分にスマホホルダーを設置し、音楽を楽しめるようにするなど、オリジナルの世界観を壊さないように配慮しながら、時代のニーズにも沿った機能が加えられています。

●シンガー・ヴィークル・デザイン公式HP:https://singervehicledesign.com/ja/
自作の部品やトヨタの協力で蘇ったオリジナルに忠実な「ダルマセリカ」

1974年製のトヨタ・セリカ(通称・ダルマセリカ)をきれいに復元したのは、トヨタ自動車大学校の7人の学生。要した期間は3~4か月だという。
レストアは車体下の錆を落とし、アスファルトシートをはじめ、内装をすべて外してメンテナンス。エンジンも使用歴を感じさせないほど、きれいに仕上げた。

苦労した点を学生に尋ねると、「錆で崩れ落ちたものをコーキングしてあったり、ビスがスムージングされていたり、ごまかしのような部分があったこと。そして、部品がなかなか見つからなかったこと」と話してくれた。
見つからなかった部品については、フロント周りのパーツは学生たちが自作したり、ワイパーアームについてはトヨタ自動車の佐藤恒治社長に提供してもらうなどして、復元させた。

ホイールも標準装備のものではないものの、当時販売されていたものを装着。車高を下げすぎず、ムチムチのタイヤを履かせたのも、ダルマセリカのオリジナルの雰囲気を引き立たせていた。

●トヨタ自動車大学校HP:https://www.toyota-jaec.ac.jp/
「サニー」のボディに「ハコスカ」のフェイス、先輩へのオマージュを込めた「サニースカイライン」

日産自動車大学校の生徒が手掛けたのは「サニー・スカイライン」と名付けられた1台。KB10サニークーペをベースに、ハコスカのフェイスを移植。「あの頃の輝きをもう一度」というコンセプトには、ハコスカという名車を再び輝かせたいという想いと同時に、かつて同校の1期生がレストアしたサニーを復活させたいという想いも込められた。
エプロンやグリルはFRPで型を取って作り、グリルは3Dプリンターを駆使して製作。特徴的なオーバーフェンダーも発泡ウレタンやFRP、パテを使い、イチから作った。ワイパーは元々、装着されていないクルマだったが、公道を走れる仕様にするのにあたり、穴開け加工をして設置した。

独特なボディカラーは「トーマレッド」。ブライトレッドなどを主にパールを加えて生み出した学生たちのオリジナルだ。キラキラしすぎず、エンジに近い深みもあって、クラシカルで高級感のあるクルマとマッチしている。
一方で、エンジンヘッドの鮮やかなブルーは1期生のサニーに積まれたSR20エンジンに施されていたのと全く同じ塗装。先輩へオマージュを捧げている。

内装についてはダッシュボードやセンターコンソールを自作。木目の部分についてはシートではなく、木から加工して作っているのもポイント。そんなウッディーでクラシカルな室内に、敢えてタッチパネルを取り付けたのは、現代的なアレンジを加えたかったからだという。

●日産自動車大学校公式HP:https://www.nissan-gakuen.ac.jp/
ボディカラーもオリジナルを復活「ホンダ・ライフ」

NATS日本自動車大学校の学生14人がレストアしたのは1974年製のホンダ「ライフ」。千葉・袖ヶ浦の実習場に置かれていた車両をオリジナルに忠実に復元した。
ベース車は、「長年使われずに保管されていた元実習用車両」だと言うが、年式の割には保存状態は良く、古い修理方法で直されていた部分があったり、一部で鉄板を切り継いだりする作業が必要だったりはしたものの、大きな欠損はなかったそうで、作業期間は約3か月ほどだ。

今回のレストアで一番のポイントはボディカラー。実習車は黄色に塗られていたが、レストアをしていくうちに、元々は薄緑色であったことが判明。ホンダモビリティ南関東の協力で色情報を得たり、塗料メーカーの協賛でその色に限りなく近い塗料を入手して、再現に至った。

このほか、ホイールをアルミから敢えて鉄蓋に変えたほか、当時のカタログなどの情報と見比べていく中で、例えば、ホーンの数など、グレードと違う装備になっていた部分も、本来の姿に戻して、オリジナルを追求した。

●NATS日本自動車大学校公式HP:https://www.nats.ac.jp/
まるで動かなかった3代目クラウンをシボレー・エルカミーノ風のトラックに

関東工業自動車大学校が出展した、「エル関東ミーノ」は3代目クラウンを、アメリカンなトラックに変身させたユニークな1台。歴代のクラウンの中で3代目にだけ、ピックアップトラックの設定があったことを知った学生たちがレストアの域を超えた大胆な制作に挑んだ。
使用した3代目クラウンは学校の敷地の片隅で野ざらしになっていたという。10年以上前に車検が切れて放置されていたとあって、ボディもタイヤもボロボロで、燃料タンクは中に残ったガソリンが腐敗。とても走れるような状態ではない状態から、16人の学生が約半年かけて作品を作り上げた。

セダンタイプの車両をベースとしたため、一度、インナーとアウターを分けて、給油口の位置を移動したり、Bピラーの位置にCピラーを移設して補強するなどの大掛かりな改造が行われた。フェイス部分については、3代目クラウンの特徴である丸目4灯のヘッドライトの再現を最優先として、グロリア(Y32)のライトとグリルを移植した。

学生たちに話を聞くと、「3代目クラウンのピックアップトラックをそのまま再現するのではなく、エルカミーノ風にしたのは、クラスの中にアメリカンなクルマが好きな人が多かったから。純正シートなどインテリアの部分を中心にクラウンらしさを残しました」と話していた。
●関東工業自動車大学校公式HP:https://kanto-koudai.com/
オリジナルの復元も、今風のアレンジを加えるのも自由!
発売当時の姿を忠実に再現するのか、現代に合わせた実用性を加えてブラッシュアップするのか、はたまた、新しい価値観を加えるのか。東京オートサロン2026のいくつかの事例を見ただけでも、レストアに対する考え方はさまざまで、正解・不正解というものは無いように見えた。今から、旧車を買おうと思っている方は、ぜひ、自分のスタイルで楽しんでほしい。
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