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更新日:2025.11.12 / 掲載日:2025.11.12
お菓子会社が自動運転バス?! 家電メーカーがEV?! モビショーで見た異色企業のクルマたち

国内外の自動車メーカーが多くのコンセプトカーなどを出展し、自動車の未来を垣間見ることができたジャパンモビリティショー2025。今回は、家電メーカーやIT企業など異業種がコンセプトカーや実用モデルを出展する姿を目立った。それぞれの企業の参入の狙いや背景を紐解き、近未来の自動車業界の変化について考えてみたい。

日本屈指のモビリティの祭典「JAPAN MOBILITY SHOW (ジャパンモビリティショー)2025」が2年ぶりに開催!
2025年10月30日(木)~11月9日(日)の期間、東京ビッグサイトにて開催される。ここでは、最新情報から独自企画などジャパンモビリティショーにフォーカスした記事を一覧でご覧いただけます。
ロッテは韓国で運用中の自動運転シャトルを展示、クリーンエネルギーにも積極的
日本ではお菓子メーカーとしてのイメージが強いロッテだが、韓国でのロッテグループは1960年代から化学製品の製造を行い、2010年頃から自動車用などのバッテリーも開発。
韓国は日本以上に少子高齢化が進んでおり、元々の主力製品であったお菓子の売り上げが鈍化。その中で、多角化を進め、自動車分野にも参入した。
例えば、自動運転トラックによる物流は、当初、工場からロッテマートなどの小売店へと商品を運搬する自社物流から始まったものだが、これを有償サービスとして他社へも展開を図った。
往復計713㎞のうち94%にあたる668㎞を自動運転トラックで輸送。この距離は韓国内最長で、事故の軽減や燃費の改善にも貢献。さらに水素トラックの導入なども進めている。

さらに2021年からは最高時速40㎞でまちなかを自動運転シャトルの運行も開始。この車両をジャパンモビリティショー2025で展示し、VRを使って走行時の仮想体験を行った。
自動運転シャトルは現在、6都市で活用されており、混雑を把握して新しいルートの設計をしたり、充電場所を車両が把握して、最適な充電を行う機能を持っている。



また、ユニークなのはEVバッテリー用の部品。同社が「薄さと丈夫さを両立し、伸びも良い」と胸を張る、陰極に使われる銅箔は、ロッテの代表商品であるガムの包装を作っていた部門が開発したという。

このほか、化学製品の開発を生かした水素の生産などクリーンエネルギーにも力を入れており、水素トラックの活用などにも活かされている。次世代の自動車燃料としても注目されるアンモニアのインフラについては9万3000tの貯蔵が可能という大規模なものが施設を蔚山に構えており、そこから福岡県の北九州市までの距離は220㎞ほど。日本での需要にも対応する構えだ。


シャープは家電の技術を活かしたEV「LDK+」を提案
シャープは、クルマを持っているものの、普段、そんなに乗っていない、という層をターゲットにしたEV「LDK+」を公開した。親会社である台湾の鴻海(ホンハイ)のEVをベースに、日本市場や家電メーカーとしての知見を活かし、国内向けに提案したものだ。

同社は以前にもコンセプトEVを発表しており、LDK+が第2弾。いずれも、駐車中の時間にフォーカスしているという点は共通している。前回のモデルは国産商用バンに近いサイズだったが、今回はより実用的にダウンサイジングした形だ。
エンジンの音や振動を気にせずに快適に過ごせる空間を目指しているという部分では、キャンピングカーに近いものにも感じるが、アクティブに出かける人に向けたキャンピングカーと、自宅のガレージで楽しむ用に作られたLDK+はコンセプトが正反対。
キャンピングカーが大きなバッテリーや電源、キャンプやアウトドア用品を積む広い荷室やベッドを備えているのに対して、LDK+は電源は自宅から取る前提で、室内もすっきりシンプル。シャープの代名詞であるプラズマクラスターを使用した快適な空間で、スクリーンで映画を楽しんだり、第二の書斎としてリモートワークをしたり、車内で趣味に没頭するのに適している。


シャープは2027年中にバッテリーEVを市場投入する計画を発表しており、このLDK+は市販モデルを意識した内容になっているとみられる。クルマの価値は走っている時だけではない、という新しい価値観がどれだけの人の教官を呼ぶか。それによっては、クルマの在り方が大きく変わるかもしれない。
KDDIは自動運転と遠隔監視システムで都市部のロボタクシー実現へ
KDDIは高速道路の自動運転トラックやシャトル型の自動運転バスの遠隔監視システムの実証実験を実施。その経験なども活かし、都内でのロボタクシー運行を目指している。

ジャパンモビリティショーで展示された車両は、KDDIが出資するオープンソースのソフトウェア開発を行う企業「ティアフォー」のもの。レベル4の自動運転を搭載している。
都心で頻繁に人が乗り降りすることや小道を走ることを想定し、ボディはコンパクトに、乗車スペースはゆったりと作られているのが特徴だ。KDDIは、得意とする通信とAIの技術を掛け合わせることで、この車両の安全な運行をサポートする。



運転席は存在せず、基本的には遠隔でスタートや停止をコントロール。監視を行う画面では、位置情報や車載カメラのリアルタイムの映像が常に把握できるだけでなく、異常が発生するとアラートとともに対処法も画面に表示される仕組み。どうしても人が対応しなければならない時のみ、PCやコントローラーを接続して対応する。
実際にタクシー運行をする際には、配車用のアプリや本人認証のシステムも導入するという具体的な話も聞け、都内で自動運転タクシーが走る未来もそう遠くはなさそうだ。
カーリースなどのSMASは自動運転で地域の交通課題解消へ
カーリースなどを手掛けるSMAS(住友三井オートサービス)が展示した車両は「ROBOBUS」。中国の自動運転EV企業「PIX Moving」社製の車両で、レベル4の自動運転を搭載した6人乗りのモデル。ソフトバンクの子会社である「BOLDLY」とSMASは、ドライバー不足でバスの減便などが進む中、地域交通を守ろうと、このROBOBUSを活用し、全国の自治体と協力して実証実験を行っている。

カメラやセンサ、GNSS(衛星測位システム)などを活用し、事故状況などを把握して自動運転を行うこの車両は、運転席がなく、ステアリングのようなものは見当たらない。非常時には、家庭用ゲーム機のコントローラーのようなもので操縦するというのも近未来的だ。




そのため、室内をめいっぱい、乗客のためのスペースに使え、車両のサイズの割にゆったりと移動できるようになっている。大きな窓や天窓などの開放感のあるデザインも特徴的で、景色を楽しんだり、お出かけの高揚感を演出する効果を狙っている。
SMASでは「来年度中の実用化を目指している」と話しており、高齢化により人口減少の進む地域での活用が期待される。
SCSKはIT企業ならではの技術と柔軟性でEVを開発

SCSKは環境負荷低減や地域交通の最適化などの社会課題解決を目指してモビリティ事業にも取り組むIT企業。ソフトウェアによって自動車の重要な機能や性能が定義され、製造・販売後も継続的に進化するSDVへと自動車業界が進む中で、IT企業の技術力や柔軟性を活かして、自動車開発に取り組んだ。海外パートナーとの水平分業によりエコシステムを構築し、9か月でEVを完成させた。

このEVはパーソナライズされる車内空間「インテリジェントコックピット」が特徴の1つ。没入感のある体験のできる8K画像の44.6インチのピラートゥピラーディスプレイは、運転席や助手席、後部座席で別々のコンテンツを楽しむことも可能だ。
また、パーソナライズドAIエージェントサービスを搭載し、ユーザー一人ひとりの嗜好にマッチした行先提案や社内空調制御なども行う。例えば、「おすすめの場所を教えて」のようなアバウトな内容でも、これまでの履歴などから好きなことや食べ物などを把握して、適切な候補を挙げてくれる。

このほか、ジャパンモビリティショー2025の会場では、スマホと連動して非接触で開閉するスライドドアも展示。利用者の歩くスピードに合わせた速度で開閉し、雨が強い時は車内に降り込まないように、開く幅を最小限に設定することもできる。32ビットのマイコンではなく16ビットのマイコンを使い、ローテクでハイパフォーマンスを実現したという部分も特徴だ。
現在の有名自動車メーカーの中にも、異業種をルーツに持つ企業はいくつもあるが、クルマのIT技術の高度化や電動化などが進む中で、今後、さまざまな分野からの参入が見られるかもしれない。
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