車のニュース
更新日:2025.10.24 / 掲載日:2025.10.24

モビリディショーリボーン【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文●池田直渡 写真●ユニット・コンパス、トヨタ、ホンダ

 かつて東京モーターショーは、米国のデトロイトショー、ドイツのフランクフルトショーと並び、世界の3大モーターショーと言われていた。しかし時代は推移。スイスのジュネーブや北京(上海と隔年開催)が躍進しつつ、デトロイトと東京が沈むなど、紆余曲折を経ながら、昨今ではモーターショー全体の地盤沈下が進んでいた。雰囲気としてはもはやモーターショー自体が過去の遺物になりかけていたのである。

 東京ショーを例に取れば、1991年の約202万人動員をピークに、下落が進み、2000年から乗用車と商用車が隔年開催に分離されたことを機に一気に100万人代前半を低迷し始めたのである。それに追い討ちをかけたのが2009年。前年のリーマンショックの影響を受けた経営難から海外メーカーのほとんどが出展を見合わせ、国内メーカーも予算規模を縮小したことから、一気に100万人を切る61万人まで落ち込んだ。もちろん社会全体がリーマンショック後の不景気の最中であったことも影響しているだろう。

 折悪しく、北京ショーが日の出の勢いだったタイミングとぶつかり、アジアのナンバー1ショーの座を中国に一瞬で奪われることになったのである。あの当時、「もはや東京ショーは終わった」という印象は、筆者のような、日本の自動車産業に贔屓目を持つ人間ですら、認めざるを得ない雰囲気に満ちていた。

 これに危機感を覚えた主催者の日本自動車工業会(JAMA)は、会場をそれまでの幕張メッセから、アクセスの良い東京ビッグサイトに移し、巻き返しを図ったが、動員は84万人と期待ほどには回復しなかった。

 もはや東京のみならず、グローバルに見てモーターショー自体がオフトレンドという諦めが漂う空気の中で、2019年、当時の豊田章男会長の方針の元に再度巻き返し戦略を推進。東京ビッグサイトの東館がリニューアルで使用できないことを逆手に取って、お台場地域全体を会場に使い。入場券なしで見られる無料展示を野外で展開した。

 この作戦が成功し、無料エリアを含むとは言え、130万人の動員に成功。2007年以来12年ぶりの100万人越えを記録した。ところが2021年には新型コロナのパンデミックが発生。開催中止を余儀なくされ、東京モーターショーの復権政策は出鼻を挫かれる形になった。

 そこで2023年に打ち出されたのが、大型リニューアルである。これまで自動車産業に限られていたモーターショーを、モビリティ産業全体へと広げ、「ジャパン・モビリティ・ショー」へと発展させた。2019年には192社であった出展社は一気に475社まで拡大。スタートアップまで含むモビリティに関わる広範囲の出展企業を募り、無料エリア無しで111万人の動員を記録した。これは計画を上回る快挙であり、世界のモーターショーが挽回の手を打ちあぐねている中で、実は東京だけが健闘中であることはあまり知られていない。

Japan Mobility Show 2025 ホンダブースでは、“夢”の力が生み出した「陸・海・空」の幅広いモビリティを展示する

 さてそうした中で、この10月30日から、東京ビッグサイトで「Japan Mobility Show 2025」が開催される。今更公然の秘密なので書いてしまうが、いわゆるメディアに向けては、各メーカーから事前にショー出品車両のお披露目会が行われる。雑誌や新聞ならページの用意、テレビや動画なら時間枠を用意するという関係上、これがわからないと、事前の用意ができない。JAMAにしてみても、結果的に報道されないのは困るので、そういう手打ちがあるのである。

 ちなみに、このお披露目には出されない隠し球があることもあるし、呼ばれたメディアは当然守秘義務契約書を交わして参加することになるので、ショー当日までここで見たことは全部秘密ということになる。

 筆者ももちろん見てきたが、言うまでもなくその中身は書けない。けれども、今回のJMSには期待して良い。各社各様ではあれど、中々に期待できる多くのクルマが出品され、かなりワクワクできそうだ。枠組みを広げてモビリティ全般をテーマにした前回は、意識がそちらに向いている分、クルマ以外に比重が置かれている感じがあったが、今回はそうした枠組みの拡大はそのままに、中核となるコンセプトカーをあらためて充実させている印象がある。個人的な印象で言えば、かつて盛況であった頃の東京ショーが戻って来ると共に、モビリティショーで追加された新しいケミストリーも加わった華々しいショーになりそうな予感がある。

 そういう意味ではリーマンショックから17年を経て、明るく楽しい東京ショーが戻って来る感じがしている。かつてのショーの浮かれた楽しさを知っている人は、大いに楽しめるのではないかと思う。

 と聞いて少々でも行く気になった方々に、ティップスをいくつか。当日券は3000円、前売りは2700円(どちらも高校生以下無料)に加えて、16:00以降のアフター4チケットなら半額の1500円になる。仕事帰りに立ち寄るには、なかなか良いチケットだと思う。

 あるいは芋洗い状態がしんどいと思う筆者と同世代層には、一般入場より1時間前に入って、空いた見どころブースをゆっくり見られるアーリーエントリーチケットが3500円とリーズナブルなのも見逃せない。ただしこのアーリーエントリーチケットは1日限定5000枚だ。そりゃそうだゆっくり見られないようなら意味がない。

 ということで、チケットの種別を上手く活用して、久しぶりの東京ショーを堪能してみてはいかがだろうか? ちなみにチケット購入についての詳細は以下のリンクから。

JMS公式チケット情報(外部サイト)

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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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