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更新日:2025.09.16 / 掲載日:2025.09.16
どこでもテラス席としてのオープンカー【BMW 4シリーズカブリオレ】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●BMW
先日とある自動車雑誌の撮影で、BMW M440iカブリオレxDriveに乗りました。昨年手が入ったモデルで、2020年にリリースされた現行型の進化版です。このところSUVの新型車に注目が集まる一方、この手のモデルについて行けてないのが正直なところ。屋根開きのような派生モデルはメディア向け試乗会を行わないこともあるので、ステアリングを握る機会は減ります。

とくに、BMWやメルセデスはラインナップを拡大しながらネーミングの変更があったりするので、キャッチアップするのも大変。例えばメルセデスの“EQ”。サブブランド的な扱いなのかと思いきや、“EQ テクノロジー”なんて使い方が発生しました。BMWも同じ。“i”と“X”と“M”の関係が一瞬わからなくなることがあります。“iX”とか“XM”とか。数字の手前の文字の組み合わせで脳がフリーズすることも。まぁ、これだけいろいろ変更があるということは、メーカーもかなりコンフューズしているのでしょう。なんたって100年に一度の過渡期ですから。

それはともかく、現在の4シリーズのカブリオレを整理すると、モデルは3種類あります。420iカブリオレMスポーツとM440iカブリオレxDrive、それとM4カブリオレです。特徴はやはりパワーソースで、2リッター直4ターボ、3リッター直6ツインスクロールターボ、3リッター直6ツインパワーターボとなります。最高出力はそれぞれ187ps、387ps、530ps。420iだけRWDとなりますが、それ以外はAWDというのも特徴です。
もはや背の低い方のレンジもAWDがデフォルトになりつつあります。これは高出力のパワーユニットを搭載する場合、4つのタイヤにトラクションを配分した方が効率的にクルマを走らせられるといったロジックです。ベントレーやランボルギーニなどVWグループもまたその傾向はあります。
なんて話はさておき、ここではカブリオレの存在意義をお話ししたいと思います。
カブリオレのことを日本ではオープンカーと言い換えます。アメリカだとコンバーチブル、2シーターだとロードスターと表現されます。そのオープンカーと言えばかつての花形ですが、ここ数年はクーペ同様シュリンクしています。SUVクーペやクロカン、クロスカントリーなど背の高い方の派生モデルは増えていますが、背の低い方はイマイチな感じです。
その理由はオープンカーに憧れがなくなってしまったのではないかという気がします。かつてのそれはエレガントな雰囲気を持つ極上の乗り物でした。まさに庶民の憧れ。助手席のレディの髪が多少乱れようと関係ありません。それを含めて高貴なクルマに位置付けられました。
ただそこに救世主が現れます。映画「君の名は」で主人公の真知子が生み出した「真知子巻き」です。ショールを頭から首に巻いたスタイルは髪の毛が風に煽られても大丈夫。長い髪が逆立てられるようなオカルトチックな状態になることはありません。映画公開は1953年というからまさにオープンカーには役立ったことでしょう。1960年代にはMGやオースチンなどが日本に上陸し、ダットサンフェアレディが国内でも誕生しました。
そんなオープンカーも21世紀に入るとカリスマ性が下がります。SUVやミニバンといったたくさん乗れる便利なクルマがメインストリームになったからです。髪は乱れるし、人数は乗れないし、荷物もあまり積めない実用性に欠けるクルマに用は無し!といったところでしょう。時代ですかね。趣味性が重視されなくなりました。
ですが、今回BMW M440iカブリオレxDriveを走らせるとやはりいいんです。走りも良ければ、スタイリングも良い。それに屋根を開けた時の開放感がたまりません。もちろん、今年の夏を振り返るとその時期に屋根を開けるのは無茶です。どんなに冷房を強めてもあの暑さには敵いません。頭のテッペンが熱をもつ感じは地獄です。それじゃ冬なら大丈夫なのか。確かに、それはいけます。シートヒーターと暖房でオープンエアモータリングは楽しめそうです。ダウンジャケットにマフラーを巻いて完璧な防寒ができます。
ですが、今回新時代の正しいオープンカーの使い方を考えました。それは「屋根を開けては走らない!」ということ。

開けるのは停めている時だけで、景色のいい場所限定とします。例えば海沿いの駐車場とか山の中腹にある絶景のパーキングエリアとか。そこを目的地としてオープンカーを楽しみます。もちろん走っている時は屋根を閉めて。でもって目的地に着いたら屋根を開け、ポットに入れたカプチーノとパニーニをつまみます。車内は自前のカフェ状態。これだと風で髪が乱れたり、街中でジロジロ見られたりすることはありません。
どうですこれ。暑さも寒さも我慢しない、季節のいい時に見晴らしのいい場所で、時間を気にせずくつろぐ。これが新時代のオープンカーの使い方。贅沢な使い方かもしれませんが、このクルマはそもそも贅沢な乗り物なんです。