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更新日:2023.06.29 / 掲載日:2023.05.12

【フィアット ドブロ】ファミリーフレンドリーなミニバンが登場

文と写真●大音安弘

 ステランティスジャパンは、2023年5月11日、都内にてフィアットのミニバン「ドブロ」を発表し、同日より販売を開始した。価格は、399万円~429万円となる。

 ドブロは、そのプロポーションから分かるように、ステランティスのフランス車「シトロエン ベルランゴ」と「プジョー リフター」とコンポーネントの多くを共有する姉妹車だ。

 ただし、クルマのキャラクターを示すフロントマスクは、完全に専用化されており、スクエアなヘッドライトとグリルレスによるシンプルかつ親しみやすい顔つきを与える。そして、ギア感を高めるブラックバンパー仕様となるのも特徴的だ。

 サイドプロテクションモールの形状からも分かるように、どちらかといえば、ベルランゴに近い仕様となっており、足回りもベルランゴと基本的には共通となるが、それでも灯火類やシート表皮などのデザイン上の差別化はしっかりと図る。

 また先行する2台との異なる点としては、5人乗りの標準ボディと7人乗りのロングボディ「マキシ」を同時発売したこと。さらに3車種の中では、装備を厳選することで、もっとも価格も抑えているのも魅力のひとつだ。

標準ボディの「ドブロ」(右)とロングボディの「ドブロ マキシ」(左)を同時に発表

 いずれのボディタイプもモノグレードのみとなり、メーカーオプションの設定はない。分かりやすい内容となっているが、先進の安全運転支援機能やApple CarPlayとandroid Autoに対応した8インチタッチスクリーンなど時代が求める必須アイテムは、しっかりと押さえている。

ロングボディの「ドブロ マキシ」

 ボディサイズは、標準車が全長4405mm×全幅1850mm×全高1800mmで、ホイールベースが2785mmとなる。7人乗りロングボディ「マキシ」では、全長4770mm×全幅1850mm×全高1870mmで、ホイールベースが2975mmとなる。

 サイズ面でもリフターとベルランゴとほぼ同じだが、全高だけわずかな差があり、ドブロが最も背が低い仕様となっている。

 ボディカラーは、標準色「ジェラートホワイト」に加え、特別塗装色の「メディテラネオ ブルー」と「マエストロ グレー」の3色を設定。

 インテリアはグレーのファブリックシートとなるが、チェック柄やステッチ、一部の生地の色味が異なるなど、シンプルさを重視しながらも単調とならないデザインとなっている。

 MPVとして必須の積載性も強みで、標準車では、標準で約597L~最大で約2126Lを確保。

 さらに可倒式助手席の活用で、約2700mmの長尺物を収めることが出来る。さらにロングボディ「マキシ」だと、3列目シートに130mmのスライド機構を与えることで、荷室容量を209L~322Lの調節を可能としたほか、3列目を着脱し、5人乗り仕様とすることで、1050Lまで拡大。さらに2列目シートを格納することで、最大2693Lに。またボディの大きさを活かし、長尺物も約3060mmまで対応可能としている。

 車内の収納は、前席上部の大収納トレーや大型センターコンソールなどを完備している。

 パワートレインも、ベルランゴとリフターと共通の130ps/300Nm仕様の1.5Lクリーンディーゼルターボを搭載し、8速ATを組み合わせる。駆動方式もFF車のみだ。燃費は、どちらのボディでも18.1km/L(WLTC)となり、ディーゼルエンジンのトルクの太さと経済性の高さも武器とする。

ステランティスジャパンの打越 晋 氏

 ステランティスジャパンの打越 晋 氏は、導入の狙いを「フィアットブランドのパーソナリティには、ファミリーフレンドリーが掲げられている。日本でファミリー向けのクルマといえば、ミニバン。さらに今は、キャンプなどアウトドアブームで、そのシェアをさらに拡大している。それなのに、家族が親しみやすいとするフィアットに、ミニバンが無い。それは問題ではないかと考えていた。その課題の解決策としてドブロを導入しました」とし、フィアットブランドにとって、ミニバンの展開が重要であることを示した。

 フィアット初導入となるミニバン「ドブロ」は、上記したように、基本的を「シトロエン ベルランゴ」や「プジョーリフター」と共用しているが、価格やキャラクターは、最も親しみやすい存在という位置づけだ。デザインもイタリアンベーシックに仕上げられ、印象の変化も与えている。価格的も、他の2台より抑えるだけでなく、ルノーカングーを意識したと見られる。

 何しろ、ルノーのディーゼル車が419万円に対して、同じ5人乗りだと、399万円だ。ベルランゴとリフターの価格が上昇した今、ステランティスのミニバンエントリーとしての役割の大きさも感じさせる。

 その一方で、フィアットブランドの主力となっているコンパクトカー「500」は、価格が上昇したとはいえ、262万円~344万円(※最高値は500Cのもの)となっており、ドブロは、フィアットとしては高額車だ。そのためもあってか、先行して、400万円台に足を踏み入れたクロスオーバー「500X」の売れ行きも緩やかだ。手頃なフィアットというイメージがあるなかで、新たなミニバンをファミリー層にどうように訴求していくのか、その戦略も注目される。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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