車種別・最新情報
更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.01.20
アウディが新型電気SUVのQ4 e-tronを発表、EVシフトを進める

文と写真●大音安弘
アウディジャパンは、2022年1月17日、都内にて「Audi New Year Press Conference 2022」を実施した。毎年恒例となった所信表明であるが、EVへの大改革を進めるアウディだけに、その内容の中心は、日本でのEV戦略となった。

記者発表会に登壇したマティアス・シェーパース氏は、現在、アウディだけでなく、フォルクスワーゲン、ベントレー、ランボルギーニの日本で展開されるグループのブランド全てを統括するフォルクスワーゲン・グループ・ジャパンの代表取締役社長だが、今回はアウディジャパン ブランドディレクターとして、昨年の振り返りを始め、今後、積極的に取り組んでいくEV戦略について語った。
昨年となる2021年の日本販売では、上半期は、登録ベースで前年比+38%の12854台を記録したものの、半導体不足による生産への影響などもあり、納車が進まなかったため、多くのバックオーダーを抱えることに。このため、年間登録台数は、前年比+1%の22,535台に留まった。ただ新型モデルへの反響は良く、A3とQ3が販売をけん引。さらに絶対数は少ないものの、アウディを象徴するハイパフォーマンスモデル「RS」シリーズが、過去最高台数となる1,323台を記録。前年比では250%という偉業を成し遂げた。シェーパース氏は、「アウディを象徴するモデルとして、しっかりと販売を続けていきたい」とする。EVでは、昨年末発表したe-tron GTが好調で、高性能なRS e-tron GTを含め、2022年販売分も完売しているという。台数自体は多くはないが、2022年の割り当て分を1月の時点で完売しているという。

そんなe-tron GTの好調を後押しするように、2022年導入の新型EVが、当日に日本初披露された。昨年、日本でもモックアップが展示され、導入が予告されていた「Q4 e-tron」シリーズだ。アウディのEV「e-tron」シリーズの第3弾となるプレミアムコンパクトモデルで、SUV「Q4 e-tron」とクーペSUV「Q4 e-tronスポーツバック」の2タイプのボディを設定する。
電気自動車専用プラットフォーム「MEB」を採用した初のモデルで、アウディSUVラインでは、「Q3」と「Q5」の間に位置する全長4588mm×全幅1865mm×全高1632mm(※SB:1614mm、全て欧州値)のボディサイズとなる。既に導入済みのSUV「e-tron」と4ドアクーペ「e-tron GT」と異なり、「e-tron」シリーズ初のコンパクトモデルであることも大きな特徴だ。
パワートレインは全仕様共通で、ワンモーターで後輪のみを駆動する。その性能は、最高出力150kW、最大トルク310Nmを発揮。0-100km/h加速は、8.5秒と公表される。フロア下には、82kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、航続距離が516km(欧州値)というロングレンジとなる。充電機能については、200Vの普通充電は最大8kWまで対応。急速充電は、CHAdeMO規格で125kWまで対応する。例えば、125kWの急速充電器を利用する場合、5%から80%までバッテリーを回復するのに必要な時間は、38分という。
価格は、599万円~716万円と、他の「e-tron」シリーズよりも大幅に引き下げられているため、アウディEV販売の主役に位置付ける。販売店でのプレオーダーに加え、限定車「ファーストエディション」のオンライン予約の受付も開始。納車開始は、今秋以降を予定している。



アウディの戦略では、2030年までにサスティナブルな企業に代わるべくことを目標に、各国での商品を展開していく。日本でも2024年までに15車種以上のEVの投入を計画。もちろん、販売構成比率も段階的に拡大していき、2025年で全体の35%をEVとし、1万台以上を販売することを目指す。その実現のための重要なカギに、急速充電器を位置づける。現在、アウディでは、e-tron販売店50か所に急速充電器を設置しているが、これらは50kW出力が中心。それでは実用的ではないと考え、今夏までに150kW出力のものを増設していく方針だ。さらに将来的には、全アウディ店舗に150kW出力の急速充電器の設置を目指す。「150kW出力であれば、10分程度の充電でも、100kmを超える航続距離分の電気を蓄えられる。気軽に店舗に充電し、満充電ではなく、使いたい分だけを蓄えて貰える利便性を提供していく。そのために、VW店舗にも急速充電器を拡大したい。そうなれば、全250店舗の規模となり、90kWの急速充電器を備えるネットワークとしては最大となる。」とシェーパース氏はVWグループのスケールメリットを強調する。これらの急速充電網は、アウディ、VW、ベントレー、ランボルギーニのオーナーが共有できるようにしていくという。さらに旅先での充電環境も強化すべく、提携ホテルやゴルフ場に、8kWの普通充電器の設置にも取り組むとし、こちらはVWグループ以外のEVも利用できるようにすることで、EVインフラの拡大に協力していくとした。
日本だけでなく世界でも、EVシフトが急速に進む状況とはいえないことを承知の上で、アウディは5年、10年先を見据え、EVシフトに取り組んでいく。そこに異業種参入の可能性が強まる中、自動車メーカーとしての生き残りを掛ける。アウディのエンジン車は、2025年が最後のニューモデルとなり、2026年以降の新車は全てEVとすることを発表している。シェーパース氏は、「アウディは、プレミアムブランドで最多となる4車種のEVを導入済み。これは、日本でEVを本気で売っていくという強いメッセージだ。日本でのプレミアムEVブランド、ナンバー1を目指し、挑戦していく」と、EV販売拡大を急速に進めることで、プレミアムカーの頂点を狙う強い決意を示した。


