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更新日:2021.12.23 / 掲載日:2021.09.27
新型フェアレディへの期待が高まるワケ
文●岡本幸一郎 写真●日産
次期フェアレディZの情報を掲載したWEBサイトの記事はがぜんPVが高まるらしい。それだけ注目度が高いことにほかならない。すでにかなり具体的な情報も出ているとおりで、「Z34」という型式は踏襲するものの、見てのとおりデザインも中身も大幅に変わるので、「7代目」と呼んでかまわないだろう。
思えば約1年前の2020年9月、突如として披露されたプロトタイプに多くのファンが歓喜した。これが意味するのは、次のZのデザインはこれでいくという意思表示と、すでにそれなりに進んでいたであろう次期Zの開発に社内でも正式にGO!サインが出たと見てよいということだ。
それから約1年たらずの2021年8月、ニューヨークで米国市場向けの「Z」が初公開された。当初のプロトタイプに対してディテールが微妙に変わり、より現実味のあるものとなっていた。これまでどおり日本と違って車名に「フェアレディ」は付かない。発売は日本国内2021年冬、北米が2022年春の予定であることも明らかにされた。もうすぐだ。主要マーケットである北米で半年前のタイミングでお披露目したのは、まもなく売り出すから、他に目移りしないで、もう少し待って欲しいという思いもあるだろう。
ついに明らかになった市販モデルのスペック
思えばこの7代目となるZについては、これまでさまざまな情報が流れた。中でもプラットフォームやパワートレインをメルセデスと共有するというのは、当時ちょうど宿命のライバルであるトヨタのスープラがBMWとの協業で開発されたこともあり、現実味を持って受け取られた。
あるいは、生誕50周年となる2019年に次期Zがワールドプレミアされるという情報もあった。ひょっとするとこれらのプランもあるところまでは現実的に存在していたのかもしれないが、実際にはそうならなかった。登場までだいぶ待つことになったものの、いずれにしてもすべて日産の手で開発されたことに、安堵したファンは少なくないことだろう。
最高出力405ps、最大トルク475Nmを発揮する3.0リッターV6直噴ツインターボのVR30DDTT型は、インフィニティQ60やスカイライン400Rでもその鋭いレスポンスや伸びやかな吹け上がりが高く評価されている。Zにターボエンジンが搭載されるのはZ32以来のこと。Z33やZ34の大排気量の自然吸気V6らしい豪快な走りも悪くなかったが、ややガサツな印象もあったのは否めず。そこは大きく印象が変わるはずだ。
これに組み合わされるのは改良版の6速MTと新設定の9速ATとなる。6速MTは大トルクへの対応を図るとともに、新設計のシンクロナイザーを採用するなどしてもので、実のところこれまでシフトフィールにはあまり評判のよろしくなかったMTの印象も上向くことが期待できる。
一方の9速ATは、「9速」と聞いてピンと来た人はスルドイ。既存のジヤトコ製の7速ATの改良版ではなく、パワートレイン戦略で技術提携していたダイムラーの「9G-TRONIC」をベースに変速比やロックアップ制御等の最適化を図ったもので、ジヤトコ製の7速ATに対しても同等以下のサイズと重量を実現しているという。
さらには、MT、ATとも最大限の発進加速性能を引き出す北米市場で人気のローンチコントロールシステムが日産の後輪駆動車として初めて設定される点も特筆できる。
シャシーについても大改良が施される。スカイラインやフーガなども含め、一連のFR-Lプラットフォームを用いたモデルを含め、ストローク感に乏しく、突き上げが強いなどといった、ドライバビリティ面ではあまりよろしくない声が少なくなかった。
そのあたり、前出のスカイライン400Rでは電子制御ダンパーを用いて既存車とは異質の洗練された走りを実現していたのが印象的で、このプラットフォームでも突き詰めればよいものになることがわかったのだが、スポーツカーであるZには、新設計の大径モノチューブダンパーが採用されるほか、サスペンションジオメトリーの見直しやバネ下重量の軽減が図られる。長年使っているこのプラットフォームの弱点はさすがにもう開発陣も熟知しているはずで、これまた期待したいところ。むろんこれには土台となる車体がしっかりしていることが不可欠なのだが、そのあたりもぬかりはないようだ。
実のところ、大昔のことはよく存じ上げていないものの、Zというのは常にシンボリックな存在ではありながらも、あまり走りの面では褒められてこなかったように思う。ところが7代目はどうやら様子が違いそうな雰囲気を強く感じる次第である。
フェアレディZそのものといったデザイン
そしてなによりデザインだ。筆者はクルマに目覚めるのが早かったので、初代S30の頃からZのことはずっと気になっていて、当時の他の日本車たちとはまったく違う雰囲気を持ったS30を非常に印象深く思っていた。
2代目のS130はその発展形であり、3代目のZ31でひとあじ違った方向性を模索した。4代目のZ32で見せた斬新なスタイリングは、いまでも高く評価されている。しばしのインターバルののち登場した5代目Z33では原点回帰を図り、価格の安さもあって日産自身の予想を超えるヒット作となった。そして6代目のZ34ではよりスポーツカーとしての資質を磨いた。
思えばZは50年あまり前の誕生から一貫して、独自の存在感を発揮しつづけている。Zには他の並み居る多くのクルマたちが欲しくてもなかなか手に入れられないヘリテイジがある。そして集大成となる7代目では、よりわかりやすい形でそれが表現されている。しかも内容のわりに価格が控えめ(Z32はそうでもないかもしれないが…)であることもZのよき伝統だ。
これまで明らかにされた情報を知るにつけ、デザインも走りもその他諸々も非常に期待できそうな7代目Zの登場が待ち遠しくてならない。
執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)
1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。