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更新日:2020.10.08 / 掲載日:2020.10.08
【マツダ MX-30】デザイン、技術に新しく挑戦した意欲的なクーペライクなSUV

マツダ MX-30
マツダは10月8日(木)、新型MX-30を発表した。2019年の東京モーターショーで公開されたモデルの市販版で、日本市場へはEVに先駆けてマイルドハイブリッド仕様からの投入となる。価格は242万円から339万3500円(100周年特別記念車を含む)。「わたしらしく生きる」をコンセプトに開発されたブランニューモデルは一体どのようなクルマなのか。すでに実車取材を行なっている自動車ライターの工藤貴宏氏がレポートする。
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
これはまさにSUVのクーペだ。
マツダのニューモデル「MX-30」を見て、触れて、そう確信した。その最大の理由はマツダが「フリースタイルドア」と呼ぶ、いわゆる観音開きドア。車体側面には片側に2枚のドアがあるが、後部のドアはあくまで補助的なもの。フロントドアを開いている状態でのみ開けることができ、一般的なリアドアに比べると小さく、そのドア単独で乗り降りすることはできない。かつてマツダが販売していた「RX-8」と同じ仕掛けである。「2ドアよりは便利だけど、4ドアほど実用性は高くない」という位置づけだ。感覚的には「2ドア」といっていいだろう。
まるで2ドアクーペのような挑戦的なスタイリング

マツダ MX-30
いま、クーペスタイルのSUVが流行している。しかし、その多くはルーフやリアウインドウを寝かせて流麗なシルエットを実現するにとどまり、ドアを狭めたMX-30ほど思い切ったクルマはほぼない。多くは「クーペスタイル」といっても便利に使えるリアドアを備えていて、いわば「4ドアクーペ」だ。販売面を考え、守りに入っているのである。しかしMX-30は2ドア感覚のクーペで、それらとはチャレンジングスピリッツがまるで違う。ここまで開き直ったSUVにはなかなか出会えない。強烈な個性があるけれど、それに惚れた人、とことん気に入った人、ハートを撃ち抜かれた人に選んでほしいという自由なクルマなのである。
マツダ MX-30
マツダ MX-30
マツダ MX-30
MX-30は「新しい価値観を持ってマツダの幅を広げるクルマ」

MX-30の開発を取りまとめた竹内都美子さん
「新しい価値観を持ってマツダの幅を広げるクルマ。もっと気軽にマツダを楽しんでほしい。」開発をまとめた竹内都美子さんはそう説明する。ちなみにマツダが一般的にSUVは「CX」というネーミングとしているが、このクルマは「MX」。「ロードスター」の北米名称である「MX-5」として使われ、かつて販売していたクーペ「MX-6」としても存在したこの2文字は「その時代ごとの自動車の常識にとらわれることなく、新しい価値の創造と提供に挑戦する車種」というのがマツダの公式見解。シャシーなど基本設計を共用するCX-30がSUVとしての直球勝負なのに対し、MX-30はチャレンジングなモデルなのだ。
「デザインを押し付けない」という新しい価値観

マツダ MX-30
マツダはいま、ラインナップするクルマのエクステリアデザインの統一化を図っている。だからコンパクトカーのMAZDA2(旧「デミオ」)からMAZDA3、SUVのCX-30やCX-5、そしてフラッグシップMAZDA6(旧「アテンザ」)までデザインテーマが統一されていて、誰が見ても一目でマツダ車だとわかる意匠になっている。
しかし、MX-30のそれは「あれ?」と思うほどそのレールから外れているような気がしてならない。顔つきは主張が控えめで、全体を通してシンプルでクリーンなのだが、全身から発する“これぞマツダ車”という個性は希薄だ。しかしこれは「デザインを押し付けない」というマツダの新展開。「肩の力を抜いて自分らしく。お客様が乗り込んではじめて完成するデザイン」という開発責任者の言葉の意味がその方向性を正確に表しているように思える。
マツダ MX-30
マツダ MX-30
こだわりの素材など新しい試みが詰まったインテリア

シフトレバーはマツダで初めての電子式、ダッシュボードとの間に空間があるフローティングタイプのパネルもユニーク
いっぽう車内は、マツダとしてはいくつかの新しい試みが採用されている。シフトレバーはマツダで初めての電子式であり、手が届きやすく自然に操作できる高い位置への設置としたことでスポーツカーのような雰囲気。その前方はダッシュボードとの間に空間があるフローティングタイプのパネルとして、空調操作用のタッチパネルも搭載。またインテリアにコルクをコーディネートするのも新しい提案だ。コルクはマツダの前身である「東洋コルク工業」が生産していた製品。いわばマツダの原点である。
想像以上に居心地のいい後席空間

後席に荷物を置くときにも、フリースタイルドアはアクセスがいい
見た目からすると意外なのは、後席居住空間がしっかり確保されていること。大人2人が不足なく座れるスペースだ。ただし、窓が小さいので閉塞感は若干ある。また後席は自由に開閉できないのでアクセス性にも難ありだが、そもそも「2ドアクーペのSUV」という前提で考えればまったくもって欠点にはならないだろう。クルマのキャラクターを尊重し、後席を「必要であれば人も快適に座れる荷物置き場」と考え、「リアドアは後席に荷物を置くのに便利」と捉えて接すれば便利なパッケージングだ。
チャイルドシートの装着例
純正オプションのベビーシートは、タイヤ部分と合体させるとバギーに変身
ペットとのお出かけをイメージしたセットアップ
まずはマイルドハイブリッドからスタート

マイルドハイブリッドシステムを採用した「eスカイアクティブG」
ところで、発表されたパワートレインをみて「どういうこと?」と感じたのはボクだけではないだろう。パワートレインは2.0Lのガソリンエンジンで、そこに小型のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで「eスカイアクティブG」と呼ぶ。それはそれで異論はないのだが、昨年秋の東京モーターショーで初公開された時は「マツダ初の量産電気自動車」だったはずだが……。
実は欧州仕様は電気自動車だが、日本向けはまずマイルドハイブリッドを発売し、“今年度内”に電気自動車をリース販売する計画なのだという。おやおや?
理由は、開発責任者の言葉を借りると「いろんなパワートレインを用意して、場所にあわせて提供する」ということらしい。現実として考えれば、そのほうが市場には受け入れられやすいし、実際に買うハードルが下がるから賢明な判断だろう。242万円からと手頃な価格(しかしながらベースグレードはハンドルすら本革ではないほど装備はシンプル)も、電気自動車に比べると大幅に低いはずだ。「ただし、必ず電動化技術とセットで」(開発責任者)というのがMX-30のこだわりのようだ。だからマイルドハイブリッドというわけである。
でもそれならそれで、2.5Lターボエンジンにモーターを加えたマイルドハイブリッドも用意したら「クーペSUV」としてのキャラがいっそう際立つのではないだろうか? 「限界の走りをするクルマではないので、パワー競争はしない」と開発責任者は言うけれど……。
使い勝手のよさは、小さな子供のいるファミリーにもマッチ

フリースタイルドアには子供が勝手にドアを開けることによるトラブルを防げるというメリットも
いずれにせよ、MX-30は「普通のSUVでは満足できない」という人に最高のマッチングとなるだろう。フリースタイルドアは後席のチャイルドシートに子供を座らせるのに都合がいいから、小さな子供のいるファミリーとも相性がよさそうだ。
マツダ MX-30 100周年特別記念車 4WD(6速AT)
■全長×全幅×全高:4395×1795×1550mm
■ホイールベース:2655mm
■車両重量:1520kg
■エンジン種類:直4DOHC+モーター
■排気量:1997cc
■エンジン最高出力:156ps/6000rpm
■エンジン最大トルク:20.3kgm/4000rpm
■モーター最高出力:6.9ps/1800rpm
■モーター最大トルク:5.0kgm/100rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前・後:Vディスク・ディスク
■タイヤ前後:215/55R18