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更新日:2019.06.28 / 掲載日:2019.06.28

DAIHATSU 新型タント詳報

DAIHATU 新型タント【プロトタイプ】:右=カスタム RSターボ/左=Xターボ

  • ティザー広告もスタートするなど、発売直前の新型タント。現在の軽スーパーハイト&ハイト系は、王者N-BOXがトップに君臨し、デイズ/eKが最新の運転支援で追撃するという図式だが、かつて販売首位をひた走ったタントは、再び王座に返り咲けるのか。新世代プラットフォーム「DNGA」の発表やクローズドコースでのプロトタイプ試乗から検証してみよう。

  • ●文:川島茂夫/まるも亜希子
    ●写真:奥隅圭之

2つの視点で徹底解説

プロトタイプ試乗を通して新型タントの実像に迫るのは、月刊自家用車が誇るジャーナリスト2名。メインライターの川島茂夫がフラットな視点から、まるも亜希子はママ視点を交えつつ、新型タントの本質を多角的に解説する。

  • 川島茂夫

  • まるも亜希子

※星取表について……評価基準は以下の通り。 星なし=軽クラス標準以下/★=軽クラス標準レベル/★★=先行するトップランナーに匹敵/★★★=クラストップを凌駕、王座奪取レベル

新世代「DNGA」第一弾! 軽カテゴリー王座奪還なるか!?

開放感と和みのタントに新世代技術を投入

 初代タント初試乗の時にはその魅力を捉えきれなかった。際立つ全高、だが座面地上高は並のハイト系レベル。無駄にヘッドクリアランスが大きい。妙な感じだった。2回目の試乗では心地よい違和感の原因を考えた。視界である。今まで走行中は見えなかったビルの上部まで見える。それは圧倒的な開放感であり、「走る観覧車」と喩えた。そしてぐらりと大きく揺れる乗り心地。全クラスを通してソフト。クルマの楽しみ方が変わる予感を覚えた。
 その後、タントに限らず、軽乗用車全体が高全高で、優しい乗り味へと進化し、初代タントが示した「楽しさ」は確実に根付いた。
 2代目では高速操安性向上に向けて硬めのサスチューンとなったが、その後は和み系に戻っている。広々視界に会話も弾む和みの乗り味は欠かせない要素であり、それらを維持しつつ時代の要求する性能や機能を練り込むのがタントだ。
 ただ、衝突安全基準の高度化やスライドドアの採用、さらにはダウンサイジング志向の強まりもあり、設計時の重量管理や基本走行性能向上への圧力も大きくなった。そこに次世代技術を導入したのが新型タント。ダイハツ新時代の幕開けモデルでもある。(川島)

現役王者&最新の刺客は……

icon HONDA N-BOX

●価格:138万5640~208万80円 ●現行型発表年月(最新改良): ’17年8月(未実施)

スズキ&ダイハツの2強を押しのけトップを奪取

 それまでのNシリーズを刷新。先進安全・運転支援の「ホンダセンシング」をゼイタクに採用して大ヒット。以来、販売トップの座を譲らず、走りや機能、装備、使い勝手など、内容もトップクラス。名実ともに現在の軽カーキングだ。

新型 N-WGNもスタンバイ

Nシリーズの最新作、新型N-WGNも登場間近だ。

icon NISSAN/MITSUBISHI デイズ/eK

  • NISSAN デイズ ●価格:127万3320~177万8760円 ●現行型発表年月(最新改良): ’19年3月(未実施)

  • MITSUBISHI eKクロス ●価格:129万6000~176万5800円 ●現行型発表年月(最新改良): ’19年3月(未実施)

軽初のプロパイロットは上位クラスに遜色なし

 タントやN-BOXのような売れ筋のスーパーハイト系ではないが、「マイパイロット(eK)/プロパイロット(デイズ)」の設定は見逃せない。登録車でも採用が限られる先進安全・運転支援機能を、軽乗用車で選択できるのだ。

プロトタイプ試乗インプレッション

柔らか、しなやか、不安なし! NAエンジンでも余力感あり

千葉・袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたプロトタイプ試乗会で、NA(自然吸気)/ターボ両タイプの走りを体験した。その実力は軽のトップを奪えるものだったのか……。

ロールしつつも粘り強く、高速でも意外に安定

川島

 サーキットでの試乗となったが、新型プラットフォームの実力を知るにはいい環境である。例えば高速からの急制動やコーナリング、高速スラロームが試せた。走行中の緊急回避想定だが、どちらも意外なほど安定している。
 操舵と同時にロールする挙動はタントらしいが、すぐにサスストローク速度が抑えられ、柔らかくも粘り強い。一気にフルロールまでもっていっても揺れ返し少なく収まる。これはフルブレーキングからの転舵でも同様だ。初期回頭から定常円まで操舵応答は適度な鈍さを示す。キビキビはしていないが、そこも安心感の要点である。
 一方、動力性能ではNA車が見所。100km/h巡航回転数は約3000回転だが、この速度域でも緩い加速くらいなら、回転上昇少なくこなす。一瞬「あれ? ターボ?」と思ったが、全開加速させればやはりNA。中庸域の回転上昇抑制がスペック以上の余力感を生み出している。
 ターボ車はさらに余裕。中庸域のコントロール性が良くNA的でもある。最近のターボ車は大体が同傾向なので、NA車ほどの進歩は感じなかったが、その安心感と扱いやすさが新型タントらしさだ。

プロトタイプインプレッション:★★★(王座奪取レベル)

乗りやすく、安心して開放感を楽しめる

まるも

 運転席に座ってまず感じたのは、タントらしい開放感はそのままに、目線にしっかり入るメーターや手が届きやすいスイッチ&操作系、踏み替えやすいペダルと、リラックスして運転できる空間になっていること。子育てに追われていると、どうしても焦って操作ミスを起こしがちだが、ひとつひとつの操作に正確性が増す感覚だ。
 NAモデルで走り出すと、軽快な発進は力不足を感じることなく、なめらかに加速していく。低速から路面をしっかり捉えるような安定感もあるのが好印象。新プラットフォームをはじめ、全方位に進化したというシャシーや曲げ剛性が30%アップしたボディの恩恵もあって、車線変更や急カーブなど、姿勢変化が起きやすいところでもジワリと荷重移動が行われ、足さばきもしなやかでまったく不安なく駆け抜けて行ける。上り坂でやや大きくエンジン音が唸る場面はあるものの、快適性は期待以上だ。
 ターボモデルに乗り換えると、発進加速の鋭さ、コーナリングでのガッシリ感は違いが明白。高速域での加減速コントロールもしやすく、静粛性の高さにも感心した。乗り心地ではN-BOXの上を行く感覚なので、乗り比べをしたい。

プロトタイプインプレッション:★★(トップランナーに匹敵)

シャシー/DNGAプラットフォームに一新

より軽く、より強く、扱いやすさと乗り心地が向上

 開発要点のひとつは軽量化と剛性向上の両立。ボディ周りはハイテン部拡大や薄板化、結合剛性の合理化により40kg軽量になり、車体の曲げ剛性は従来比30%向上している。サスは完全新設計となり中空アーム等により10kgの軽量化を図るとともに、ジオメトリーを一新。高速安定性を重視した機構設計に加えて、走行テストによる細かな改良で扱いやすさと心地よい乗り味を実現した。

新世代のクルマづくり思想であるDNGA(Daihatsu New Global Architecture)に基づき、車体を一新。これが今後のダイハツ車のスタンダードとなる。

  • 従来型

  • 新型

新ボディは着力点(作用点)を結合化。アンダーボディの主材がスムーズに結合され、サス応答性や安全/強度/快適性能が向上。

エンジン/型式はそのままにイチから見直し

燃焼から変速まで全面的に効率化し、動力性能と燃費が向上

 エンジンの技術的な見所はNAに採用された多孔スワールインジェクターとマルチスパーク。吸気ポート内の霧化促進と強タンブル流と相まって、燃焼促進による大量EGR(排気再循環)での安定した燃焼を実現。実用域の性能と燃費向上が狙いだ。ミッションは遊星ギヤを副変速に用いたD-CVTを採用。変速比幅を大きく拡大することで、幅広い速度域での効率と動力性能の向上を図っている。

  • ●NA(自然吸気)エンジン

  • ●ターボエンジン

  • ●D-CVT

  • ●スプリットギヤ

D-CVTでは動力はエンジン-ベルト-スプリット(遊星)ギヤ-ホイールと伝わる。ギヤの併用により伝達効率と変速比幅が向上。

運転支援も体験

  • ステレオカメラ

  • ソナー(標準系)

  • ソナー(カスタム系)

ACC[追従クルコン](アダプティブ・クルーズ・コントロール)

全車速ACCは、軽としてはぜいたくなほど

川島

 ステレオカメラで全車速ACCと中央維持LKA(車線維持アシスト)を実現。LKAのテストはできなかったが、ACCは追従停車まで体験。当たり前だが、適切な車間距離を維持しながら停車。ただし、停車時間は2秒まで限定。最新ACCには劣るが、軽乗用にはぜいたくなほど。また、新パワートレーンとの相性もよく、意外とゆったりとしたドライブフィールだ。

ACC:★★★(王座奪取レベル)

追従はスムーズ。停止保持を延長してほしい

まるも

 低速での追従走行のみだったが、不安になることもなくスムーズに追従してくれた。ただ停止保持が2秒しかなく、クリープに入ってしまうので再作動の操作が頻繁なのが面倒だ。高速道路での追従走行時に挙動がどうなるか、LKAによるステアリングアシストがどうか、というところを確認してからでないとライバル比較は難しいが、現時点では同等レベル。

ACC:★★(トップランナーに匹敵)

パーキングアシスト

  • 縦列駐車

  • 車庫入れ

周囲の状況把握により、高い安心感が得られる

川島

 システムを作動させればスマアシ用や周辺モニターのカメラの白線認識で駐車スペースを自動認識。駐車方法とスペースを決定すれば、(加減速と前後進はドライバーの操作によるが)自動操舵で駐車完了。運転が苦手な人の手助けが基本だが、モニターや直視による周辺監視の余裕で安心感は段違い。出入りの人も多い駐車場等では保険的機能でもある。

Pアシスト:★★(トップランナーに匹敵)

操作がシンプルで誰でも使いこなせそう

まるも

 これまで同様のシステムを他車で試してきたが、設定操作が複雑でモタモタしてしまい実用性が低いのが難点だった。それが新型タントではパッと検知してボタンを2秒長押しするだけ。ハンドル操作もほぼ1回で決めてくれるので、大幅に時間短縮される。画面も大きく鮮明で見やすく、これならデジタル操作が苦手な人でもすぐ慣れて使いこなせそうだ。

Pアシスト:★★★(王座奪取レベル)

見くらべ解説

月刊自家用車8月号発売段階ではDNGAの採用以外に新型タントについての正式なアナウンスはない。ただ、プロトタイプではあるが現車を見ることができたので、その印象などをお伝えしよう。

タントらしさは変わらないが、より上質な雰囲気を感じさせる

 標準系(左)/カスタム(右)ともにひと目でタントとわかる「らしさ」を備えつつ、より洗練された都会的な雰囲気を感じさせる。プロトタイプ試乗会に用意されていた現車を見る限り、カラードルーフのツートンカラーも用意されるようだ。左ページの新旧見くらべでもわかる通り、特にカスタムは派手な飾り付けを抑えつつ、スポーティさで標準系との差別化を表現している。

従来よりも大人っぽい雰囲気を感じる

川島

 車体平面寸法で最大のスペース効率を求めてきたためパッケージングはほとんど同じ。ミラクルオープンドア等のボディ構造も従来車を踏襲。小物収納性を向上させているが、ドライバーの体格やドラポジにかかわらず視認性が良好なメーター配置などの基本レイアウトも同じである。ただ、内外装ともちょっと大人っぽい雰囲気。とくに従来ファミリー色の濃かった標準系のほうがギャップが大きい。また、後席の着座感の向上など、見た目と使い勝手の両面で車格感アップが感じられた。

見くらべ:★★(トップランナーに匹敵)

路線踏襲のデザインだが質感は進化

まるも

 ひと目で「新しいな」と感じるトキメキや驚きはあまりないが、家族の空間を想起させるアットホームな雰囲気の標準デザインや、大黒柱のような頼もしさと存在感があるカスタムのデザインは、タントがずっと大切にしてきたもの。ターゲットとなる子育て世代の気持ちに寄り添うデザインなのだろう。一方で内外装の質感に関しては、はっきりと違いを感じる進化がある。とくにシートの肌触りや包まれるような座り心地は、満足度が高いものだし、インターフェースも時代に合った進化があった。

見くらべ:★(軽クラス標準レベル)

icon

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • Xターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

  • カスタムRSターボ【プロトタイプ】

新旧 見くらべ

標準系(向かって右が新型)

カスタム(向かって右が新型)

ティザーサイトでインテリアも公開!!

カスタム

ステアリング外に配置したメーターなど、基本構成は従来と同様。ただしメーターをドライバー側に寄せ、エアコンの吹き出し口を強調し、より立体的な新設計シートにアップデート。

【参考】旧カスタム

標準系

標準系もインパネやシート形状などがカスタムと同様に変更。カスタム=ブラック、標準系=アイボリーの配色は従来通りのようだ。

ミラクル ウォークスルー パッケージ

ティザー広告で前面に押し出されているのが車内移動や乗り降りのしやすさ。室内高の高さもあって、左側からも楽に乗り込める。

icon

  • 運転席ロングスライドシート(540mm/シートバックレバー付)を世界初設定。

  • 接近すると自動で開くパワースライドドア ウェルカムオープン機能を軽クラスで初採用。

結論/新型タントの王座奪還予想

実力なら戴冠確率80%だが、売れ行き集中となるかはまた別

川島

 最新車で、これだけの力作で、どこを取っても軽乗用ではトップクラス。スマアシで安全支援装備を一気に普及させたのと同様に軽乗用の基準を再び変える可能性が高い。クルマの出来からすればライバルがテコ入れしたとしても8割は堅そうだ。55%とはあまりに低すぎる気もするが、理由は単純である。ダイハツのラインナップの豊富さ。一車集中のような売れ方は考え難い。それよりDNGA新技術展開が興味深く、その点でタントは「軽乗用維新」の引き金になる可能性が高い。

奪還成功予想:55%

子育てを支える強い味方! 正式発表時の+αにも期待したい

まるも

 子育てに奮闘する私たちが欲しいのは、毎日を支えてくれる味方のようなクルマ。家族の安全や快適性を優先したい、という想いをしっかり受け止めてくれるクルマだ。ライバルが続々と出現する中、新型タントがどこに主眼を置いた進化を遂げるのか注目していたが、やはりそこは外していないと感じる。基本性能を飛躍的に高め、次世代を見据えたクルマになっていた。惜しいのは子育て世代以外から選ばれる決め手が、現時点の発表内容では希薄なこと。正式発表での挽回にも期待!

奪還成功予想:70%

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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