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更新日:2018.12.06 / 掲載日:2018.12.06
【新型vs従来型】DELICA D:5注目ポイント比較

デリカシリーズは指名買いが多いことでも有名。11年ぶりの大進化を果たした新型はユーザーからの期待も高く、デリカからデリカへの買い替え需要もかなりの規模になるはずだ。ここでは新型と従来型を見比べることで、その違いを明確にしてみたい。
●文:川島 茂夫
●写真:奥隅 圭之
イメージ一新ながらコンセプトは変わっていない
フロントマスクのイメージチェンジには少々驚かされた。従来型が登場したのは10年以上前ということもあるが、従来型のエクステリアは大きなヘッドランプと傾斜したボンネットでワンモーションとタフネスな印象を融合させたスタイリング。いかにもファミリー&レジャー向けのミニバンだった。一方、新型は細く切り上がったランプグラフィックや、盛り上がったボンネット形状で凄みが増している。見比べると、その印象は段違いである。
ここまでイメージが変わったとなると、そのコンセプトも大きく変わったのか? と考えてしまうが、実はそこに大きな変化はない。従来型で磨き上げた多用途性はしっかりと”継承“されており、デリカD:5のオーナーが安心して乗り替えられるように、パッケージングもハードウェアもしっかりと考えられて仕上げている。
新型と従来型の車体寸法を比べると、新型の全長が拡大している。ただこの程度ならば使い勝手への影響はない。むしろ気になるのは、デリカシリーズの特徴の一つであるオフロード性能も考慮した最低地上高だ。新型は185mmと従来型より25mm低いがこれは計測方法の違いだという。諸元データのみで考えると、オンロード志向が強まったとも言えるのだが、それでも最低地上高は一般的なクロスオーバーSUVの標準以上であり、さらにライバルの1BOX型ミニバンと比べて、だいたい30mm前後の余裕がある。従来型同様にアウトドア趣味のレジャーワゴンとして用いるには十分だろう。
走行性能に大きく影響するハードウェアは、新型に投入されるのはディーゼルターボの4WD仕様のみとアナウンスされている。国産1BOX型ミニバンとしては唯一無二の存在だったディーゼル車は従来型の強みであり、底堅いセールスを記録した理由でもあった。集中と選択の結果、現時点では新型はディーゼルモデルに絞り込んできたのだろう。搭載されるディーゼルターボユニットは、従来型と同型を採用するが、排気ガス浄化装置に三菱車としては初となる尿素SCRシステムを採用。従来型に比べると、最高出力は若干低くなったが、最大トルクは高まった。さらに環境性能の向上は著しく、2022年から実施される排ガス規制にもいち早く対応している。従来型では6速AT(ディーゼル車)を用いたミッションは、新開発の8速ATに変更されている。
【Check Point 1】エクステリア&パッケージ

大胆フェイスの演出で1ランク上を巧みに主張

フロントピラーから後方はウインドウグラフィックやシルエットに従来型の面影を残しているが、フロントビューは別物の印象である。新旧いずれも登場当時のトレンドに沿ったフロントマスクだが、LEDヘッドランプならではのランプグラフィックと押し出し感の強いグリルデザインにより1ランク上の車格を思わせるデザインだ。
【従来型】定番の特別仕様車が後期の定番チョイスだった

従来型も専用カラーパーツや内装でアウトドア志向を高めたアクティブギアが、後期の定番グレードとして人気を集めていたが、新型と比べると、存在感は控えめに映る。
【新型】標準仕様もアーバンギアも個性的なフェイスをアピール

新型には標準仕様と、街中での存在感や上級志向を意識したアーバンギアが用意されるが、いずれも従来型の大人しいイメージとは異なる、個性的なシルエットを楽しませてくれる。
新型デリカD:5 vs 従来型デリカD:5【諸元比較】

【Check Point 2】キャビン&ラゲッジ
丁寧な造り込みに加え、素材感も1ランクアップ
液晶モニターの横に配した空調吹出口やインパネシフト&メーターなど、基本レイアウトは踏襲しているが、従来型のSUV的機能感を軸にしたデザインに対して、新型はドアトリムまで回り込む木目調加飾パネルの採用など、寛ぎや高級感を高めたデザインとなった。フロントマスクで演出された車格感をそのままに投影したインテリアだ。
【従来型】

従来型後期で人気を集めたアクティブギアのキャビン&シート。専用パネルやオレンジステッチで特別感を高めているが、新型の洗練さにはやや及ばない印象だ。
積載性は今でも合格点。
サードシートの左右跳ね上げ格納に難を感じる部分もあるが、セカンド/サードシートのスライド機構を備えるなど、ラゲッジユーティリティは新型と同等。
【新型】
基本的なレイアウトは従来型の流れを汲むが、個々のパネルやシフト、スイッチ類などは専用設計。素材感の巧みな演出のおかげもあり、上質感は大幅に向上している。
ラゲッジルーム拡大時のサードシートは、従来型と同様に左右に跳ね上げ格納式を採用するが、座面が分厚い点はやはり気になる。最新設計を採用したライバル勢に比べると、少々見劣りを感じる。
【Check Point 3】パワートレーン&メカニズム
改良の恩恵は大きく質感アップが期待できるはずだ
新型は排ガスクリーン度を高めるために触媒に尿素SCRを採用。また、最高出力は若干低下したが最大トルクは2kg・m増加している。性能面で最も大きな変更はミッションだ。6速ATの従来型に対して、新型は8速ATを採用。ディーゼルの大トルクと多段トルコンATの組み合わせは、走りの質感アップにも大きく貢献しているだろう。
【従来型】

従来型のディーゼルモデルは、148PS/36.7kg・mを発揮。さらにパジェロ譲りの本格4WDシステムが組み合わされる。悪路走破性などは新型と同様のポテンシャルを持つ。
【新型】
新型のディーゼル車は、従来型と同様の2267cc直4DOHCディーゼルターボを搭載。最大出力が僅かに低下(145PS)したが、最大トルクとJC08モード燃費が向上(13.6km/L)している。
アンモニアを使って窒素酸化物(NOx)を減らす尿素SCRシステムが採用されたこともトピックス。これにより2022年から導入される環境基準をクリアしている。
【Check Point 4】装備
最新仕様にふさわしい充実装備も新型の強み
新旧で大きな差が出るのが安全&運転支援装備である。ミニバンクラスのトップレベルとは言い難いものの、エクリプス クロスやアウトランダーPHEVと同じ装備を採用。つまり、三菱車の最新仕様となった。一方、従来型は先進安全装備はもちろんのこと、ナビなどのAVシステムやエアコンなどにも古さを感じる。その差は想像以上に大きい。
【従来型】

ナビゲーションは共にディーラーOPでの対応になるが、新型は10.1インチ、従来型は7インチと基本性能のみならず、モニターサイズでも差がある。フィッテング面も新型が明らかに上だ。
【新型】
「e-Assist」は、レーザーレーダーとカメラ、電波式レーダーで障害物検知を行う最新システムを採用。
先進安全機能は、まさに飛躍的な進化を遂げた。
新型デリカD:5 vs 従来型デリカD:5【装備比較】

【結論】新型は上級志向を強化、アル/ヴェル路線に近づいた

トヨタのミニバンとの比較になるが、新型デリカの車格設定は、ヴォクシー/ノア/エスクァイアの2L級と、アルファード/ヴェルファイアの2.5L超級の中間に位置する。ただし従来型はファミリー色の濃い2L級に近いキャラ設定だったが、新型はフロントマスクや内装が示すとおり、2.5L超級に近い位置付けと考えるべきだろう。ディーゼルエンジンと8速ATの採用も上級クラスにふさわしいものだ。ただし、パッケージングあるいは機能的には従来型を踏襲しており、あくまでもその本質は、ファミリー&レジャー用途向けの実践的な1BOX型ミニバンである。
ズバリ、買い替えはアリか? ナシか?
従来型デリカD:5(前期)■買取相場の目安:30万~100万円
前期型はガソリン車のみのラインナップ。さらに2011年式でも7年以上が経過しているだけに、買取相場も値ごなれが進んでいる。高値買取は期待薄。
従来型デリカD:5(前期)■買取相場の目安:50万~300万円
ガソリン車に比べるとディーゼル車のリセールは1ランク上。10万kmに限りなく近い個体でもそれなりの買取金額が期待できそう。1~2年落ちのディーゼル車ならば、今が売り時だ。
後期のディーゼル車は、高値買取が期待できる
今回の新型でも「デリカ」から「デリカ」のような買い替え需要が見込めるだけに、気になるのは従来型デリカD:5の買取相場だろう。2013年のディーゼル車投入を境に前期/後期を分けてみると、ガソリン車のみとなる前期型は年式相応の相場だが、ディーゼル車が中心となる後期型は150万円~と、なかなかリセールは優秀。買い替えがおススメだ。