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更新日:2018.10.20 / 掲載日:2018.09.26

クラウンRSに挑め! カムリWS

以前から噂になっていたカムリのスポーティグレード「WS」が、ついに発売された。足回りを徹底的に煮詰めたという評判通り、その走りは完全に別物。となると気になるのはクラウンとの違いだ。どちらがトヨタ・スポーティセダンNO.1にふさわしいのだろうか?
●文:川島 茂夫 ●写真/奥隅 圭之

TOYOTAスポーティセダンの王者はどっちだ!

  • 最新技術が惜しみなく注がれた国産最高峰のスポーティセダン

    【2L直噴ターボ】
    ●価格帯:500万400~559万4400円
    【2.5Lハイブリッド】
    ●価格帯:541万6200~601万5600円
    【3.5Lハイブリッド】
    ●価格:690万6600円

    ■主要諸元(2.5ハイブリッドRS)●全長×全幅×全高(mm):4910×1800×1455 ●車両重量(kg):1770 ●パワートレーン:2487CC直4DOHC(184PS/22.5kg・m)+モーター(105kW/300N・m) ●JC08モード燃費:23.4km/L ●燃料タンク容量(L):66[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.5 ●最低地上高(mm):135

  • カムリの最上位グレードは良質な走りに自信あり

    ●価格帯:367万2000~434万1600円

    ■主要諸元(WS)
    ●全長×全幅×全高(mm):4910×1840×1445 ●車両重量(kg):1570 ●パワートレーン:2487CC直4DOHC(178PS/22.5kg・m)+モーター(88kW/202N・m) ●JC08モード燃費:28.4km/L ●燃料タンク容量(L):50[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.7 ●最低地上高(mm):145

カムリWSはここが違う!

  • カムリは北米では誰もが認めるベストセラー。バリエーションも幅広く、彼の国ではスポーツ仕様がわざわざ用意されるほど人気が高い。

  • WSのエアロパーツは北米スポーツ仕様の流れを汲むものだ。

  • WS専用色として4種類のツートーンカラーを設定。色の塗り分けはコストアップの要因だが、特殊な工法を用いることで、リーズナブルな費用(OP価格:5万9400円~)で楽しめる。

  • WSの専用ダンパーは極微低速域での摩擦特性と減衰力を最適化。カローラスポーツで採用された新ダンパーをベースにし、路面の凹凸を感じさせないカーペットライドを実現している。

足回りにひと工夫加えて標準車との差別化が図られた

 カムリにはどうしても地味なイメージが付き纏う。それはセダンだからという理由ではなく、すべてがあまりにもバランスが良く優等生すぎるからだ。しかし、クルマ選びの多様化が進む中、優等生だけでは埋没してしまう。セダンにとって4名乗車の実用性は大切だが、いまや実用性重視でセダンを選択するユーザーはかなりの少数派。結果的にセダンでもプレミアム&スポーティ志向を追求するのが、最近の流れである。
 カムリに追加された新グレード「WS」はプレミアム&スポーティの魅力を向上させたモデルだ。専用のフロントグリルやリヤスポイラーを装着し、従来グレードとの差別性を演出する。とはいえ、その演出は程よい按配で、カムリの端正さと上手く適合したスポーティさには好感が持てる。また見た目だけでなく、走行ハード面も専用仕立てとすることで、一味加えていることもWSの特徴だ。
 パワートレーンは標準系と共通の2.5L直4+モーターのTHS IIのハイブリッド。大きな違いを見せるのはWS専用となる、新開発のダンパーの採用。これはピストンの動き出し時の減衰力を摺動抵抗で補い、ピストンスピードの速い領域の減衰力を低く設定している点が特徴だ。
 このダンパーはカローラスポーツにも採用されており、それと同じというと、足はガチガチに固めたイメージを持つかもしれないが、ロールのサスストローク量やストローク速度は標準車より多少抑えられている程度で、硬さはほとんど意識しない。
 ハンドリングの変化も、操縦特性で見れば僅かである。操舵時に一気に横Gが立ち上がるとかの演出めいたキレはない。操作した分だけ適度な穏やかさをもって反応する。ただ、挙動の繋ぎがいい。操舵にやや遅れて過剰気味に反応したほうがキレを意識できるのだが、WSは早く反応して穏やかに移行する。この絶妙のハンドリング特性は、ドライバーにはハンドリングの質の良さ、あるいは安心感として確実に伝わるはずだ。
 乗り心地も同様だ。重量とサイズの違いもあり、新ダンパーの効果はカローラスポーツほど感じられないが、路面から受ける細かな揺れの吸収がよく、連続的かつ滑らかなストローク感を感じることができる。微小ストローク域での振動の吸収のよさは、標準サス車との大きな違いだ。やや極端な表現だが、ハンドリングも、乗り心地も、タイヤからボディまでひとつの振動体として振る舞っているような感がある。

健闘しつつも、乗り味はクラウンRSには及ばない

 そこで比較したいのが、WSが投入されたことで、走りの質感はクラウンに迫ったか? という問題だ。結論から言えば、それはちょっと厳しい。重厚感もダイナミックさもクラウンが上回っている。トルク変動の吸収や重質な乗り心地、細かな振動の抑制、遮音感など、細部の磨き込みにも車格の違いが顕著に現れる。
 また、クラウンのスポーティ系となるRSには電子制御サスのAVSが採用されている。カローラスポーツの設定も同様で、スポーティ系はAVSである。新ダンパーは、あくまでも標準系サスのために開発された技術。スポーツ性と快適性の両立ではAVSが勝る。なお余談になるが、WSの新ダンパーの技術はいずれAVSにも導入される予定。つまり、WSのフットワークは、次世代トヨタ標準車の先取りとも言えるものだ。
 ちなみにWSのグレード名は「Worldwide&Sporty」を意味するのだが、スポーツセダンの醍醐味を求めるには薄味過ぎる。だが、クラウンに次ぐトヨタ上級セダンとしての魅力はレベルアップを果たしている。カムリ本来の良質セダンの味わいを求めるならば、WSは最適な存在だろう。

上級セダンにふさわしい落ち着きのある乗り味を楽しめる

 専用のフロントマスクの採用やパドルシフトの追加など標準系との差別化を図っているが走りの方向性は変わらない。サスの硬さで言えば現代の標準レベルであり、標準サス車と大きく変わらない。ただし、ハンドリングも乗り心地も滑らかさと落ち着きが向上している。細かな動きの収束もよくなったため、フットワーク全般がすっきりした味わいだ。刺激的な走りというよりも、走りの質感や心地良さを高めた仕様と考えるのが正しいだろう。

  • スポーティを謳うが、サスの硬さはセダンとしては標準レベル。足回りの穏やかな動きにより、走りの質感を高めている。市街路から高速道路まで良質の走りを楽しめる。

  • パワートレーンは標準車と同じ2.5L直4DOHC+モーターのハイブリッドを搭載。ステアリングにパドルシフトが備わるが、THS IIの制御も基本的に共通だ。

 縦置きと横置きの違いはあるが、2.5Lハイブリッドのパワートレーンはカムリと共通。ただし、加減速時の滑らかさにFRレイアウトの有利さが現れている。また、加速時に駆動輪に荷重が掛かる感覚もスポーティな印象を高める。AVSはスポーツモードを選択しても荒っぽさはなく、要点だけを締められる電子制御サスの特徴を最大限に活かしている。乗り心地も静粛性も重みは十分で、プレミアムとスポーティを高水準で両立している。

  • 素直なラインコントロール性と安定性を高めたハンドリングは、FRレイアウトならではの強み。AVSが生み出す足回りは収まりが良いという言葉がぴったり。良質なツーリング性能を持つ。

  • 2.5Lハイブリッド車のエンジンは、カムリで初採用されたダイナミックフォースエンジンの縦置き仕様。巧みな制御特性を持つ最新のTHS IIと組み合わされる。

【パッケージ比較】寸法的にはカムリの方がゆとりある設計を採用している

  • 全長は4910mmとカムリと同等だが、全幅は日本の道路事情に配慮した結果、1800mmになっている。

  • クラウンとほぼ同サイズ。

  • エクステリアデザインは、低重心設計&6ライトの採用など数々の新機軸を採用。

  • 全幅は1840mmとワイド幅なのは、世界戦略車である証し。キーンルックのフロント顔も派手な印象が強く、日本では大いに目立ちそうだ。

  • リヤシートの足元のゆとりは過去最大の広さになったが、カムリには及ばない印象。ただ手を触れる部分の素材感や造り込みは明らかに上。乗員快適性も一歩リードの感が強い。

  • FF車らしい広々としたキャビンは、カムリを選ぶ理由の一つ。特に後席のゆとりは、国産セダンのトップクラスだ。ただ細部の仕立てや本革シートの素材感などは車格相応だ。

【メカニズム&装備】共に最新技術を導入するが内容はクラウンが上

  • クラウンにもトヨタセーフティセンスが標準装備。ただ、こちらは高速道路での路線中央維持機能のレーントレーシングアシスト(LTA)も備わる上級仕様。安全装備も1ランク上だ。

  • この夏の一部改良で先進安全装備の名称はトヨタセーフティセンスになり、上級グレードにはインテリジェントクリアランスソナーなども標準となったが、BSMなどはOP設定のまま。

  • クラウンのシャシーにもTNGA技術は導入済みだが、ベースとなったのはレクサスLSなどに採用されるGL-Aのナロー版。カムリに比べると1クラス上のシャシーが用いられている。

  • カムリのシャシーは低重心設計に加え、各所にホットスタンプ材(超高張力鋼板)を多用するなど、軽量かつ高剛性を実現したトヨタ最新のTNGAシャシーを採用している。

【結論】性能重視ならばクラウンだがWSのコスパの良さも見逃せない

  • クラウンRSは3種類のパワートレーンが選べるが、最も廉価な2Lターボ車でも518万4000円~、2.5Lハイブリッド車なら541万6200円~と価格的にかなり高価だ。

  • 一方、カムリWSは367万2000円~と車格相応の価格設定。利便系装備もクラス平均以上が備わるなど、コスパの良さは歴然。お買い得な1台だ。

 カムリWSと2.5LハイブリッドのクラウンRSの価格差は100万円を大きく超える。カムリの標準車とWSの価格差は約12万円である。走りの質感はクラウンRS、カムリWS、カムリ標準車の順番。もちろん、内外装の仕立ての差もあるが、骨格や駆動方式まで異なる両車の間には埋め難い差がある。ACCやLKAの機能もクラウン対比ではカムリは若干見劣りする。最良を求めればクラウンだろう。
 だからといってWSがダメというのではない。室内や荷室はクラウンより一回り広く、実用のモノサシを当てればカムリのほうが優等生だ。もちろんWSはこの長所をそのまま引き継いでいる。ドレスアップにパドルシフト、そして専用ダンパーを採用して、約12万円の価格差ならば、コストパフォーマンスはすこぶる良好。スポーティな雰囲気を楽しめる良質セダンとしての費用対効果は、クラウンRSを上回っている。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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