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更新日:2018.10.02 / 掲載日:2018.07.27
MITSUBISHI アウトランダーPHEV2019モデル プロトタイプ試乗
世界初のSUVタイプのプラグインハイブリッド車であり、毎年のようにアップデートを施しているアウトランダーPHEVの2019モデルプロトタイプを試乗した。デビュー5年目でのマイナーチェンジではPHEVシステムが大幅進化。その詳細をお伝えしよう。
アウトランダーPHEV 2019モデル

■主要諸元(GplusPackage/プロトタイプ)
●全長×全幅×全高(mm):4695×1800×1710●ホイールベース(mm):2670●車両重量(kg):1890●駆動方式:4WD●パワートレーン:2359cc直4DOHC(128PS/20.3kg・m)+モーター(60KW/137N・m:70KW/195N・m)●JC08モード電力量消費率(km/kWh):5.55●燃料タンク容量(L):45[レギュラー]●最小回転半径(m):5.3
エンジンを2Lから2・4Lへ変更
アウトランダーPHEVは技術的にも性能、適応用途でも多様な側面を持ったモデルである。言うまでもなくベースとなったアウトランダーはレジャー用途向けの実践的なSUVである。ハイブリッド用バッテリーを床下に搭載するためサードシート仕様は設定されないが、アウトランダーPHEVも適応用途は共通である。性能面では燃費を軸としたミツビシ・エコ技術の象徴的な存在であり、電気自動車に最も近いハイブリッド車でもある。そこに最新のミツビシAWC技術を導入したのが、このMCである。
スペック面で目を惹くのがエンジンだ。従来は2Lを採用していたが、実用燃費と静粛性向上のためにアトキンソンサイクルを採用した2・4Lに変更。さらに駆動用バッテリー容量を15%増加すると共に放電出力を10%アップ。制御変更により後輪駆動用モーターの最大出力も約17%向上。これにより電動航続距離はプラス5kmの65kmとなった。なお、設計変更はパワートレーンの主要構成部品の約9割に及んでいる。
ハイブリッド・システムについては別項で述べるが、進化したS‐AWCは同車のPHEVシステムを活かした操安性や駆動性の能動的な制御が特徴である。電動モーターは内燃機とは比較にならないほど緻密なパワーコントロールが可能。トルク制御時のタイムラグもほとんどない。それだけ前後のトルク配分の制御も内燃機車の4WDシステムより緻密かつ広範囲でできるのだ。
シャシーにしてもパワートレーンにしてもスペック面の変化よりも実践的性能向上が主目的。サーキットという限られた条件での試乗だったが、ユーザーにとって実のある改善が加えられていたのは実感できた。
アウトランダーPHEV進化の歴史
2013年に発売されたアウトランダーPHEVは、2015年にフロントデザインを一新、2017年にPHEVシステム改良など毎年のように改良が施されている。
2013年
SUVタイプのプラグインハイブリッド車として発売。
2014年
充電リッドにロック機能を追加する一部改良実施。
2015年
フロントデザインを一新し、大幅改良を行った。
2017年
PHEVシステムや走行安定性、予防安全技術を改良。
ラリードライバーとしてダカールラリーで活躍した増岡浩選手達が操り、海外ラリーでも実績を残しているアウトランダーPHEV。実戦で磨かれたオフロード走破性能の高さが魅力だ。
サーキット走行でもS-AWCが威力を発揮する
サーキットで、相応に気合いを入れて走らせた時に光るのはS-AWC。新設されたスポーツモードを選択した時の4輪のグリップバランスのよさが印象的だ。ノーマルモードでも高い安定性を示すが、舵角は深くなりやすく、微妙なライントレース制御も効きにくい。スポーツモードでは、比較的早い段階から左右の駆動力配分制御を行い、応答遅れや逃げが少なくラインに乗る。しかも神経質な反応は皆無であり、前輪が程よく利いている感じである。
以前、このプロトタイプ車の開発中段階のものに雪上で試乗したが、雪路の操安性向上に比べると恩恵は少ないが、状況やドライバーの精神状態に応じて運転しやすい特性を選択できるのはオンロードにおけるS-AWCのメリット。元々のサスの素性のよさもあるのだが、タイトなコーナーが連続する不慣れな山岳路など、操舵が忙しい状況では新たに設定されたスポーツモードが扱いやすさと安心を与える。また、スポーツモード選択時は加速反応が向上し、エンブレ回生も強化され、これも山岳路走行に適した特性である。
60~100km/h域の巡航からの緩加速など一般走行を模した走り方では新旧パワートレーンの違いがよく分かる。ポイントはエンジンの余力感だ。蓄電量が減少してハイブリッド走行モードに入ると、従来車はそれほど激しくない加速でもエンジン回転数が上昇する。発電機が頑張っている感じである。新型は回転上昇が穏やかで、騒音も少なめ。アクセルコントロールと回転数変化も比較的連携していた。パラレル式の感覚をドライブフィールに加えたと考えてもいいだろう。
また、浅いアクセル開度での踏み込み時の加速反応がよくなり、それも余力感を高めている。これはモーター出力に余裕のある領域なので、特性変更によるものだが、電動の特徴を従来車よりも実感しやすい特性にしたわけだ。
この他、蓄電量に余裕のある状態での純バッテリー走行領域の上限を従来車プラス10km/hとなる135km/hに高める等の改良が加えられているが、同システムの特徴のひとつとなる高速巡航時のエンジン直接駆動領域は従来車と変わっていない。巡航エンジン回転数も同じなので余力感は大差ないのだが、新エンジンの導入により高速巡航燃費が改善されている可能性が高い。
静粛性やエンジンの音質の改善や小気味よさと繋ぎの滑らかさが両立されたコントロール感など、全体的に洗練度がグンと高まった印象だ。

試乗走行はサーキットで行った。S-AWCに新設されたスポーツモードは4輪のグリップバランスがよく、ノーマルモードよりも微妙なライントレースが可能だった。
【ポイント1】 S-AWC(SuperAllWheelControl)の性能向上

アウトランダーPHEVのS-AWCシステム
スポーツモードとスノーモードを新たに設定
例えばブレーキの片効きでは、制動力が維持されている車輪側にクルマは向きを変える。こういった現象を積極的に利用して方向安定やコントロール性向上させるのがS-AWCである。状況に応じて適切な車両方向や走行ラインとなるように4輪の駆制動力配分を能動的に制御する。左右輪のトルク配分は多くの操安性向上トルクベクタリング機構同様にブレーキ制御によって行われているが、前後輪トルク配分は独立した電動駆動系の駆動回生発電による。
また、アウトランダーPHEVでは各輪の負荷バランスの最適化も制御面の特徴のひとつ。新機能となるスノーモードが象徴的だが、路面状況や走行環境による運転感覚の変化が少ないのも長所である。

S-AWCは前後輪間トルク配分、左右輪間トルクベクタリング、4輪ブレーキ制御を常に組み合わせて制御するシステム。路面状況にあわせてシームレスな車両挙動を実現している。

乾燥舗装路を想定したスポーツモードでは、加速レスポンスアップと旋回時の4輪のタイヤグリップを最大限に引き出すため、前後モーターの駆動力を独立して最適化。

雪面やアイスバーンなど滑りやすい路面に対応するスノーモードでは、穏やかでコントロールしやすいアクセルレスポンスと車両挙動を、前後モーターの駆動力制御で実現。
エクステリア・インテリア

フロントバンパーやラジエターグリルのデザインが変更。ヘッドライトも手が入り、従来のロービームに加えてハイビームもLED化され、デザインもリファインされた。

フロアコンソール上面、センターロア、インパネ、ドアトリムオーナメントパネルに高級感を演出するデザイン柄を加飾して内装質感を向上させている。
フロントシートのサイドサポート部の形状を変更し、硬さの異なる部位を組み合わせることで、さらにサポート性を向上させている。上級グレードにはキルティング本革仕様も設定。
セレクターレバーは、操作したあとに、常にセンターに戻るジョイスティックタイプを継続して採用。回生レベルセレクターとの組み合わせで、回生ブレーキの強さを細かく調整できる。
センターコンソールの後席側にエアコン吹き出し口を追加し、後席の快適性を向上させている。
【ポイント2】PHEVシステムの改良

よりEV要素を強めたSUVへ進化
ハイブリッドシステムはエンジンで発電して、電動モーターで駆動するシリーズ式を基本とするが、同システムのウイークポイントとなる高速巡航燃費を改善するため、エンジンによる直接駆動機構(前輪)も備えている。また、4WDシステムは前後とも独立した電動系としている。
PHEVの車名のとおり、外部充電機構を備えるのが一般的なハイブリッド車との大きな違いだが、大容量の駆動用バッテリーや急速充電機構の採用により電動走行レンジを拡大。発電機を搭載し走行距離拡大を図った電気自動車のレンジエクステンダーに近い構成でもあり、ハイブリッド車では機構的にもドライブフィールでも最も電気自動車に近いタイプである。
PHEVシステムの基本構造は、前後のモーターにエンジンを組み合わせたもの。走行時はEV走行と2種類のハイブリッド走行から状況に応じて、最適な走行モードを自動選択する。
エンジンを従来の2.0Lから2.4Lのアトキンソンサイクルへ変更。低回転でも高トルクが発揮できるようになり、エンジン作動時の静粛性も向上している。
パワーメーターの表示も改良され、モーターとエンジン出力状況の視認性と機能性を向上。センターディスプレイに回生ブレーキの目盛りを追加し、回生量が把握しやすくなった。
PHEVの特徴ともいえる、最大1500Wの電気が取り出せるAC100V電源を使えば、ホットプレートやヘアドライヤーなどの消費電力量の大きな家電もアウトドアで使用可能。
提供元:月刊自家用車