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更新日:2018.11.06 / 掲載日:2018.06.29

新型クラウンプロトタイプ完全解剖<エクステリア・キャビン&ラゲッジ>

●文:川島茂夫/山本シンヤ ●写真:奥隅圭之

正式デビューを前にして、いち早く新型クラウンのプロトタイプが公開された。最新TGNA技術が注がれた最新クラウンはどのように進化したのか?

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新型クラウンプロトタイプのエクステリア(外装)

伝統は残しつつも若々しく生まれ変わった
 新型の寸法諸元で興味深いのはホイールベースだ。2920mmはロイヤル/アスリート系よりも70mm長く、マジェスタより5mm短いだけ。全長はマジェスタより60mm短いのだが、ホイールベースを見る限り、有効室内長でマジェスタ相応を狙った設定と言える。つまり、上級側に寄せた設計だ。
 もうひとつオーバーハング量は新型が短い。たった55mmの違いだが、5ドアクーペ的なロングキャビンプロポーションにもかかわらず、重々しく見えないのはそのせいだろう。また、ロングホイールベース/ショートオーバーハングは操安面でも有利である。
 ファストバック風キャビンとリヤピラーにサブウインドウを備えた6ライトウインドウを採用したため、リヤピラー周りは華奢な印象。リヤピラーがしっかりと存在感を示した従来型とは対照的である。また、リヤピラーに付けられていた王冠エンブレムは廃止された。クラウン・コンセプトのニュースリリースの写真には存在していたが、モーターショー出展車にはない。クラウンの伝統にこだわるユーザーには寂しいだろうが、車両開発時の王冠エンブレムと同じものが、アクセサリー設定される予定だという。

  • ゼロクラウン以降、代を重ねるごとにファストバック風味が増しているが、新型もその流れを踏襲。リヤエンドにかけて傾斜を効かせ、スポーティなデザインに仕上げている。

  • 新型には足回りが硬めに設定されるRS系グレードも用意されるが、プロトタイプ同士のエクステリアを比べると、その違いはライトの仕様とホイールの意匠が異なる程度。

フロントデザインは従来型のイメージを踏襲するものの、ヘッドライトやグリルの形状を直線基調とし、シャープ感を強めた格好。

サンルーフの装着率が高い国内需要もあって、新型にもチルト&スライド機構を持つサンルーフが用意される。従来型と同様にメーカーOPで選べるはずだ。

  • 左のGExecutiveのライトウインカーはLED常時点灯式、右のRSFourのライトウインカーは流れるように点灯するシーケンシャル式と、2タイプのライトが設定されている。

アルミホイールは全4タイプ設定

  • 17インチ(G)

  • 16インチ(B)

  • 18インチ(RSFour)

  • 18インチ(GExecutive)

アルミホイールは4タイプ設定。RSグレードにはスポーティな幅広5スポークタイプが組み合わされるなど、キャラに合わせたホイール意匠が採用されている。

新型クラウンプロトタイプのキャビン&ラゲッジ・内装の変化は?

後席の居住性能は同等レベルクラウンらしさは健在
 新型で気になる点は、ファストバック風に深く前傾したリヤピラーと6ライトウインドウの採用により、居心地がどの程度の影響を受けるかだ。4ドアクーペのように前席優先と割り切ってしまうわけにはいかず、VIPカー用途まで考慮しなければ、やはりクラウンとは言い難い。
 後席の膝前スペースはマジェスタ相応のホイールベースの恩恵もあり、従来型のロイヤル系よりも多少の余裕があり、後席乗員をもてなすには十分だ。長身の男性ではヘッドルームの余裕はないが、これも現在の上級セダンでは標準的。天井の圧迫感はちょっと強めだが、クオーターウインドウが採光や見晴らしを向上させ、同クラスのセダンの中でも開放的である。また、リヤドア開口部は乗降時の頭抜けを考慮した、トヨタセダンらしい設計だ。
 内装は加飾よりもトリムの材質感や細部の造り込みで質感を高めたことが特徴。Gエグゼクティブは内装も後席機能も、VIPカーに相応しい設えとなっていた。
 トランクスペースは奥行きがたっぷりした大容量。FRセダンでは最大級だが、リッド開口部が狭いのが難点。手前にゴルフバッグなどの大物を積むと奧には届かない。

取材車のGExecutiveは本革仕様の上級仕様グレード。左右のドアトリムから続くラインが乗員を包み込むようなデザインが印象的だ。

  • 身体を優しく包み込む居心地の良いシート設計や本革の優れた素材感など、全ての乗員が快適に過ごせるプレミアムセダンとしての資質の高さは健在。

  • リヤガラスの傾斜は相応にあるが、居住性への影響は皆無。足元まわりの余裕も十分確保される。中央のセンターアームレストには、シート角度調整スイッチなども配置される。

中央部にクラウンのエンブレムが配置される、本革巻き仕様の電動チルト&テレスコ式ステアリング。右側にはACCなどの操作スイッチ、左側にはカーAV機能のスイッチが配置。

  • アナログメーターとデジタルディスプレイが組み合わされるハイブリッドメーターを採用。左右の丸型メーターの文字は立体的に浮き上がる工夫も施される。

ツインモニターは、上モニターがナビ画面、下画面が車両情報系と使い分けされるが、ワンタッチで下モニターにもナビ画面を表示することが可能。

  • タッチパネル式の下モニターは、車両情報を表示するほか、エアコンやサスコントロールなどの操作を直感的に行えるマルチオペレーションタッチ機能も持つ。

  • メーター中央に配置にされるデジタルディスプレイは、従来型に比べると表示領域が拡大。車両から通知される様々な情報を確認しやすくなった。

ギヤを任意で選択できるシーケンシャルシフト。シフトレバーの後方にEV走行切り替え&トラクションコントロール、電子式ブレーキスイッチが配置される。

フロアコンソール前方には、スマートフォンを置く専用スペースも用意される。ワイヤレス充電「Qi」に対応していることが予想される。

フロアコンソールやドアトリムに配される加飾パネルは、グレードごとに差別化される。カップホルダーは上パネルが沈み込む、珍しいタイプ。

  • 取材車はRSFour。大きな違いはパネル意匠程度で、基本的なデザインは共通。

  • ファブリックシートもブラックが基調色になる。

新型クラウンの見所とポイントを聞く 新型クラウン開発者インタビュー

トヨタ自動車MS製品企画チーフエンジニア秋山晃氏

「変わりながらも残すべきところは残す新時代に合ったクラウンに仕上げました」

――全面刷新されましたが、やはり社内でも「クラウンを変えなければ!!」と言う想いは強かったのでしょうか?

秋山 常に危機感はありました。今回のモデルは15代目です。15代将軍で終わってしまっては困るので、私の使命は「ラストクラウンにならない事」でした。

――エクステリアデザインは?

秋山 今回は法人需要を考えずパーソナルユースに絞っています。横から見たらどこのクルマか分からないくらいのデザインを目指しました。6ライトのサイド、流麗なリヤと大きく変えましたが、フロントはクラウンの味を残し、先代の稲妻グリルの雰囲気を残しながら仕上げています。実は初期段階では、全く違うシューティングブレイクのようなデザインでしたが、「さすがにこれはやめてくれ」と(笑)。最初にぶっ飛んだ案を出したので、多少変わっても問題ありませんでした。

――インテリアも大きく変わり、シンプルだけどモダンな印象です。

秋山 今回はツインモニターが特徴ですが。表示は上にモニター、操作時は下のモニターで行なうことで、視認性と使いやすさを両立させています。レクサスのような方式も考えましたが、やはり直接入力のほうが操作しやすいと思っています。これはコネクテッド技術を標準装備できたからこそ実現できた部分でもあります。

――プラットフォームはレクサスも採用のGA-Lがベースですか?

秋山 エンジンコンパートメントと言った主要骨格は同じですが、LSと同じだと全幅1800mmにはできませんので、リヤサスペンションとフロア幅は異なります。

――走りはニュルブルクリンクで鍛えたと聞きましたが?

秋山 ニュルはもちろんですが、欧州のカントリー路でも徹底して走り込みました。国内専用モデルですが、ベンチマークはジャーマン3で、200km/h以上の世界まで見ています。どんな路面でもフラット感と安心感を体感してもらえるように仕上げました。それでいて「目線がブレない」「どんなお客さまでも安心して乗れる」と言う、クラウン伝統の味も残しています。

――パワートレーンは?

秋山 カムリのシステムを縦置き化した2.5L直4ハイブリッドをメインに、走りのフラッグシップとして熟成させた2.0Lターボ、そしてマジェスタの代替えも含めたラグジュアリーなユーザー向けに3.5LV6マルチステージハイブリッドの3タイプを用意しています。

――グレードは標準仕様とRSの2タイプ用意されていますが?

秋山 今回はクラウンを一つにすることもテーマでした。乗り心地も、走りも標準仕様でアスリートを超えることが至上命題の一つでした。そのためには基本素性を鍛えることが何よりも重要でした。開発陣も当初は標準仕様=ロイヤルと考えていたようで、ベクトルを揃えるのは時間がかかりましたが、揃ってからの進みは速かったですね。

大きく変わった新型クラウン ズバリ、アリか?ナシか?

川島茂夫

明らかに高まった走りの質感はトヨタ車ナンバー1の実力だ
 今回はプロトタイプでの取材だったが、それでも新型クラウンの狙いはしっかりと伝わってきた。セダンらしいフォーマルな雰囲気が減ったのは気になったが、内外装や走りの質感は大幅に向上。また、外観にしても、トレンドのスペシャリティ&スポーティをフォーマルに組み込むために苦労していた従来型に比べればデザイン的にまとまっている。
 走りではフットワークのよさが光る。クラウンの走りの革新はゼロ・クラウンが象徴的だが、高速安定に振りすぎてロイヤル系でも硬すぎた。新型はサスの硬柔のバランスではなく、ストローク速度の抑制や収束性、タイヤ踏面から骨格までの動きに一体感と連続性で、良質な乗り心地と信頼感の高い操縦性を得ている。無駄な揺れや揺れ返しがなく、すっきりとした味わいは同乗者にも好まれるはずだ。この上質な高性能を持つ新型は、総合的な走行性能でも、トヨタ車の象徴的存在になるのは間違いないだろう。

山本シンヤ

昨今の高級セダンの流れを考えれば新型の変革路線は間違っていない
 新プラットフォームやパワートレーン、従来から大きく変わった内外装デザインなど、新型には数多くの変革が注がれているが、所々にクラウンらしさも継承されている。
 走りに関してはグローバルモデル水準と言う考え方を採用。ニュルブルクリンクなどで鍛えるなど、クルマの本質を見直したことを評価したい。個人的には従来までのクラウンが目指した「ザ・高級車」の需要を、アル/ヴェルが担い始めていることも、クラウンが変わった要因と思っている。日本専用車は今やさほど美味しくはないが、トヨタはそこにも全力を注いできた。まさに「もっといいクルマ作り」を象徴する一台だと思う。
 クラウンオーナーの平均年齢は60歳を超えているが精神は若いと言う。実は先代アスリートの比率は6割を超えている。だから新型の大きな改革にもシッカリついてきてくれるはず。そして、欧州車にいきがちなメインターゲットである40~50代にも響いてほしい。

【購入攻略術】すでに納車は半年待ちか?新型クラウン

値引きはかなり渋め
最終的に同士競合が鉄則

 ディーラーには「新型は安売りしなくても買ってもらえる」との意識が強い。値引きの基本は3~5万円。付属品の割引を含めて7~8万円でストップをかけてくるケースが目立つ。現状では値引きの合計が12~13万円になったら合格。15万円を超えたら特上クラス、20万円前後ならウルトラCと考えていい。国産車のライバルはフーガだが、これをぶつけても「値引きではとてもかなわない」などと引いてしまうセールスマンが多い。ベンツBMW、アウディといった輸入車のほうが効果は得られるだろう。隣県に越境できるならトヨタ店同士の争いに持ち込むこと。東京地区はトヨペット店でも併売しているので攻めやすく、値引きが緩くなる傾向があらわれている。

  • クラウンのライバルはやはりクラウン。デビュー直後は人気が集中するため、最初に提示される値引きは3~5万円というケースも多いが、可能であれば隣県のトヨタ店でも商談を行いたい。

  • 国産系他モデルとの競合は反応が鈍い。むしろ価格帯が近い輸入車セダンの方が有効だ。ベンツならばCクラス、BMWならば3シリーズあたりがライバル。特にMCをしたばかりのCクラスは日本導入ながら要注目だ。




提供元:月刊自家用車



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