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更新日:2018.11.20 / 掲載日:2018.06.28

新型クラウンプロトタイプ完全解剖<試乗インプレッション>

●文:川島茂夫/山本シンヤ ●写真:奥隅圭之

正式デビューを前にして、いち早く新型クラウンのプロトタイプが公開された。最新TGNA技術が注がれた最新クラウンはどのように進化したのか?
本記事では新型クラウンプロトタイプの試乗レポートをお届けする。

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伝統と新技術の融合が15代目に課せられた使命
「これはきっとアスリートに違いない」。これが東京モーターショーでクラウン・コンセプトを見た第一印象だった。しかし、新型はロイヤルもアスリートもマジェスタも一本化された。プレミアムを重視するモデルであっても、走りやスポーティなイメージが求められる世界的な流れを考えれば、新型がファストバックっぽいスタイルに振った理由も理解できる。「端正」よりも「躍動」が今の高級車のトレンドなのだ。
 とは言え、クラウンは何代も乗り継いできたユーザーも多く、今のトレンドに合わせました、では納得しかねる。「ゼロ・クラウン」がそうであったように、今回デビューする15代目のクラウンも、新しい時代の幕開けとしなければ収拾が付かないだろう。
 新しさを感じさせる取り組みとして、トヨタの新たな設計理念となるTNGAに基づくプラットフォームやパワートレーン、さらに第2世代のトヨタ・セーフティセンスや情報共有技術でモビリティの進化を促すコネクティッドカーなど、トヨタが示す近未来のクルマ像が今回の新型クラウンで披露される。
 時代は移り変わっても、クラウンは、トヨタを象徴する存在であることは、変わらない。

新型クラウンプロトタイプ試乗レポートその1<2.5Lハイブリッドモデル>

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/川島茂夫

動力性能もハンドリングも確かな進化を実感できる

ガソリン車と遜色ない巧みな変速制御を実現
 2・5L4気筒を核としたTHS2は、従来型の看板パワートレーンであり、新型でも同様のポジションに位置する。ただし、排気量は同じでも新開発である。従来型はエンジンに2AR‐FSEを用いていたが、新型では超ロングストローク型のA25A‐FXEを採用。このエンジンはすでにカムリ・ハイブリッドに展開され、クラウン用はこの縦置FR仕様と考えれば分かりやすい。
 その第一印象は、3・5L車ほどではないものの、従来型と比較すると電気自動車感が減り、エンジンで走らせている感覚が増えた。シリーズ式とパラレル式の特徴を併せ持つスプリット式だが、ドライブフィールは多少パラレル式に近づいた。
 もちろん、発進時や低中速域では頻繁に電動走行に移行するが、速度が高まるほどにペダル操作でエンジン出力をコントロールする感覚が強まる。素早く深く踏み込むと連続的にエンジン回転が上昇するCVT的な感覚もあるが、エンジンの回転数や排気音の変化が内燃機の力感を覚えさせる。この辺りもパラレル式っぽい。
 また、従来型よりも冴えたエンジン音のせいか、エンジンの存在感を意図的に目立たせているような印象もある。エンジン周りの静粛性を単純に比較すれば従来型のほうが静かと思えるが、静かさを損ねないレベルで心地よさを演出するのが新型車である。
 サスの仕様はグレードによって異なるが、標準グレード(G系)でも確かな接地感覚を与える設定だ。急減速やコーナリングでは長いストロークを用いるが、ストローク速度は抑えられている。揺り返しの不要な動きも少なく、腰の強さとゆったり感のバランスが妙味。段差乗り越えのこなしも良好であり、穏やかな乗り心地と従来型のアスリート以上の安心感と扱いやすさを強く感じさせてくれる。

他のトヨタモデルと同様にTHS2の制御は、より巧みに進化を遂げている。最新シャシーが生み出すバランスの良い乗り味も新型の大きな強み。

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/山本シンヤ

シャシー性能の向上を随所で体感することができた

動力性能向上は明らか
主力を張るにふさわしい

「リボーン・クラウン」と呼ばれた従来型が登場した時、話題を集めた稲妻グリルよりもハイブリッドながら4気筒を搭載したことに興味があった。当時のチーフエンジニアの「V6以上の4気筒を作ればユーザーは納得してくれる」と言う言葉に納得したことを強く覚えている。
 実は同業者からは「クラウンに4気筒なんて…」と言った声も聞かれたのだが、蓋を開ければ今や販売の6~7割は4気筒である。つまり、保守的と言われるクラウンユーザーは、実は順応性が非常に高いことも証明したのだ。
 新型の主力モデルも当然直4の2・5Lハイブリッドになるだろうが、エンジンは一新された。出力は不明だが、従来型と乗り比べると力強さが明らかに違う。試乗コースの登り区間は勾配が強いので、必然的にアクセル開度が大きめになるが、従来型は一杯一杯なのに、新型はまだ余裕が残っている。この余裕はパフォーマンスはもちろん、雑味がないエンジンサウンドや、ラバーバンドを抑えた最新THS2の自然なフィールも一役買っていると思う。
 サスのチューニングや装着タイヤはグレードによって異なるが、17インチを履く「素」のモデルでも、先代アスリートを大きく超える運動性能を実現している。印象的なのはダイレクト感はあるが余計な振動はシャットアウトされたステアリングフィールや、比較的ロールは許容するが、リヤがシッカリしている上に動きに連続性のあるハンドリングだ。飛び道具や後対策ではなく基礎体力をシッカリさせた効果が出ており、当たり前の事が当たり前にできるセダンだ。
 快適性はしなやかな動きやアタリのやさしさ、目線のブレなさは実感できたものの、初期の動きの渋さが要因のコツコツ感が少々気になった。ハンドリングはまだまだ頑張れるはずだ。

2.5Lハイブリッド車のエンジンは、カムリで初採用されたダイナミックフォースエンジンの縦置き仕様。より巧みな制御となった最新のTHS 2と組み合わされる。

新型クラウンプロトタイプ試乗レポートその2<2.0L直噴ターボモデル>

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/川島茂夫

過剰な演出が希薄な点は好印象
大人にふさわしいスポーツセダンだ

クラウンは4気筒でも十分
そう言える、車格感を感じる

 ハードウェア的には従来型からの継承が最も多いパワートレーンだ。従来型ではアスリート系専用設定だったが、新型のキャラにもよく似合っている。ダウンサイジングターボらしく低回転域から太いトルクを立ち上げるが、レブリミットの6000回転までトルクは衰えることがなく、高回転まで回すのも心地いい。8速ATの小気味よくも滑らかな変速感もスムーズ。マニュアル変速の切れもいい。深く踏み込んだ時の弾けるような排気音もアクセル操作の手応えを程よく感じさせてくれた。
 適度な緩みを感じさせながらも素直なラインコントロール性と加減速の影響を少なく安定性を高めたハンドリングとの相性も良好だ。とくにRS系に採用される電子制御サスの走行モードを「スポーツ+」にセットした時の品のいいスポーティ感覚は、新型車の走りの特徴を最もよく伝えてくれる。無駄な硬さや、過剰なスポーツ感の演出がない。硬いのではなく、収まりのよさがあるので、ワインディング路でも扱いやすい良質なツーリング性能を持つ。
 6気筒を中心にしたこれまでのクラウンの車格感や味わいとは異なっているが、大人っぽい走りが新たな車格感を生み出していた。

詳細スペックは不明だが、2Lターボ車のエンジンは従来型の後期モデルに追加された直噴ターボユニットを搭載。ミッションは8速ATと組み合わされる。

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/山本シンヤ

回頭性の良さと正確なハンドリングニュル仕込みは伊達でないと実感

ターボは制御系の見直しで別物に進化を遂げている
 先代途中から追加された2・0Lターボは、新型ではクラウンの走りを象徴するモデルと言うキャラクターが与えられている。
 エンジン自体は8AR‐FTSと変更ないが、新型クラウンに合わせて制御系は新開発された。具体的には先代で指摘されていたターボラグが改善され、アクセルを踏んだ瞬間から自然なトルクを発揮する。更にややガサツな回り方だったフィーリングも改善され、高回転まで使いたくなる気持ち良さがプラスされている。これは吸排気系の見直しに加えて、エンジンサウンドチューニングも行われた結果だそうだ。
 今回はスポーティなRSとの組み合わせでの試乗となったが、基本性能の良さに加え、リヤ周りにプラスされた専用の補強アイテムとパフォーマンスダンパー、そして専用セットの減衰力可変サスペンション(AVS)の効果も相まって、クラウンとは思えない回頭性の良さと正確性の高いハンドリングにビックリしてしまった。試乗コースのコースサイドに白線が引かれているが、「次は数cm寄せてみよう」と言ったような細かなコントロールも容易にできる。新型がニュル仕込みであることを実感した。

新型クラウンプロトタイプ試乗レポートその3<3.5Lハイブリッドモデル>

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/川島茂夫

ゆったりと走るも良し
コーナーを攻めても良し
完成度が高い万能選手

ハイブリッドスポーツとして一流の性能を持つ
 今回の試乗で一番悩ましく感じたのは3・5Lのハイブリッド車だ。パワートレーンのラインナップからすればマジェスタの後継となる。レクサスLSシリーズのレクサスLS500hと同型のパワートレーンならば何の不思議もないのだが、LC500hに搭載されるように、プレミアムスポーツにも「あり」なのである。
 乗って見ればマジェスタ後継でもあり、アスリートの進化系でもある。悠々としたトルクと6気筒のエンジンフィールは高級セダンらしいゆとりを感じさせてくれる。浅いアクセル開度で穏やかに走らせている時はエンジン稼働中も低く、狭い回転レンジを維持する。低中速域ではそこに電動走行も加わるが、電動→エンジン稼働の移行でもドライブフィール、騒音共に大きな変化はない。
 しかし、高負荷域では多段ATの高性能エンジンとして振る舞う。踏み込み直後の反応は電動の助けも借りるが、エンジン回転上昇と共に一気に速度を高める様や、ダウンシフト時の蹴り出し感は上級仕様にふさわしい。その刺激は高級セダンとしては多少の違和感もあり、マジェスタ後継としては似つかわしくないとも言える。新型の走りの方向性からしてもRS系の頂点として見るのが正しそうだ。

新型クラウンプロトタイプ 試乗インプレッション/山本シンヤ

LSよりもバランスの良さは上
走りも楽しめるラグジュアリーセダンだ

圧倒的な動力性能重量のハンデは一切なし
 新型は「クラウンを一つにする」が開発テーマとなっているが、旧マジェスタ需要のラグジュアリー路線を引き継ぐのが、V6の3・5Lを積むハイブリッドだ。
 従来のシステムから一新されておりレクサスLS/LCにも採用される「マルチステージハイブリッド」である。そういえば、8代目に初代LS(セルシオ)のV8・4・0Lを搭載したモデルが用意されていたのを思い出した。スペックは不明だがLSと同じであればシステム出力は359PS。歴代最強のクラウンである。
 絶対的なパフォーマンスはもちろんだが、粘るモーター走行やエンジン始動時のマナーの良さなどは、むしろLSよりもマッチングがいいと感じたくらい。LSよりも300kg近く軽量なことも、一役買っているのだろう。
ハンドリングは新型の中では重量級モデルとなるが、シャシーは全く問題ない懐の深さ。ノーマル仕様もRSもキャラクター通りの味付けで、むしろ重さの分だけ落ち着きが増している。ただ、パフォーマンスに対してタイヤ(レグノGR001)のキャパがギリギリ。個人的には1サイズアップ、もしくは、もう少し走りを重視したタイヤを選びたいと思った。

3.5Lハイブリッド車のパワーユニットは、レクサスLSとLCのハイブリッド車譲りとなる、V6エンジン+マルチステージハイブリッドを搭載。




提供元:月刊自家用車



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