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更新日:2018.10.24 / 掲載日:2018.05.26
【最新モデル大研究】MAZDA新型アテンザ
●文:山本 シンヤ●写真:奥隅 圭之
シャシーやボディの構造部分の変更を含む、フルモデルチェンジ級に匹敵する改良が施されたアテンザ。これほどの手間をかけて送り出す最新フラッグシップは、どんな進化を遂げたのか? その詳細をお伝えしよう。

●主要諸元(2.5S Lパッケージ 2WD)
●全長×全幅×全高(mm):4865×1840×1450 ●車両重量(kg):1540 ●エンジン:2.5L直4DOHC( 190PS/25.7kg・m) ●JC08モード燃費:14.8km/L ●燃料タンク容量(L):62[レギュラー] ●最小回転半径(m):5. 6
今回の変更箇所はフルチェン時のCX-5以上
マツダのフラッグシップであるアテンザの大幅改良が実施された。同時期に発売されたCX‐5はフルモデルチェンジされたのに、なぜアテンザはマイナーチェンジ?と思う人もいるだろう。恐らく世界的なクロスオーバーSUV人気に対してセダン/ワゴン市場が縮小している事も理由の一つだと思うが、主査の脇家満氏は「今回は見た目や型式を変えずに中身を進化させています。実は変更内容はCX‐5よりも多いですよ」と語る。
エクステリアはフロントグリルやライト、ホイールなどが変更されているが、どちらかと言えばスポーティだった従来型に対して、新型はやや落ちつきを重視した大人のスタイルへと深化した。
一方、インテリアはインパネやメーター、ドアトリムやシートなどの刷新に加えて、本杢やウルトラスエードなどの上質素材を積極的に採用。質感の大幅レベルアップを実現している。内装色は新たにオリエンタルブラウンが追加されているが、これが新型のインテリアデザインに最も合っている。
パワートレーンはガソリンが2・0/2・5L、ディーゼルが2・2Lターボと変更はないが、ガソリンは気筒休止(2・5L)、ディーゼルは急速多段燃焼と、先日改良されたCX‐5に採用された技術を水平展開している。
車体関連は、サス取り付け部の局部剛性アップや静粛性のために車体パネルの板厚アップなど、マイナーチェンジレベルを超えた変更を実施。サスペンションとタイヤも、昨年技術発表された次世代スカイアクティブの一部が採用されており、滑らかなハンドリングと質の高い乗り心地、そしてクラスを超えた静粛性を実現している。安全支援システムの充実も抜かりはなく、最新のi‐ACTIVSENSEが採用された。
全域でレベルアップされた新型アテンザ。これまでのマイナーチェンジの概念を超える仕上がりなのか? 試乗できる日が楽しみだ。
新型アテンザここがポイント
<CHECK1>より成熟した走りのためにシャシー&メカニズムを刷新
マイナーチェンジ時のテコ入れとしては過剰とも言える、ボディ車体の刷新もポイント。各部パネルの板厚増加や構造の見直しが図られたことで、より静粛な走りを手に入れた。
ストローク感と減衰感の改善を目的にコイルばねやブッシュまわりを中心に再調整。ダンパーも大径化が図られるなど、足まわりの性能向上も見所のひとつ。
<CHECK2>デザイン&素材の見直しによりキャビンまわりの上質感を向上

キャビン空間も素材の見直しに加えて、構成部品の形状も変更。手が触れる部分の質感が高まり、上級モデルとしての正常進化が図られた。静粛性向上もポイントのひとつ。
<CHECK3>装備関係もアップデート快適な操作性を手に入れた

マツダが進めるドライバー中心の設計思想「ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)」の考え方がさらに進化。ディスプレイ部や操作スイッチまわりはより見やすく改良された。
エクステリア・インテリア・パワートレーン

「Mature Elegance」と称するしっとりとした美しさを狙ったイメージ。躍動感は残しつつも、情感溢れるスタイリングで楽しませてくれる。新型は前後バンパーまわりの形状変更を加えることで、より大人びた雰囲気を高めた。
グリルデザインはフィンタイプからメッシュタイプに変更。よりメリハリの効いた表情となった。車両周辺を検知するセンサー&カメラ類は、隠すように巧みに配置されている。
マツダ車共通の魂動デザインに加えて、リヤ側からルーフ部にかけてのなだらかなルーフラインも見所のひとつ。全長4865mm、全高1450 mmの大きさを持ちながらもサイズほどの腰高感は感じさせない。
アテンザワゴンのエクステリアも、前後バンパー形状の変更を中心とするブラッシュアップを実施した。メカニズム系の変更やグレード構成&価格は、セダンと同様の内容になる。
サプライヤーと共同開発した新素材がトリムやシート地に用いられるなど、目で見え、手に触れる部分の質感向上も新型の強み。さらに送風口やコンソールまわりの形状が変更されるなど、細かな改良も加えられている。
7インチディスプレイを中央に置く新レイアウトに変更。アクティブ・ドライビング・ディスプレイもウインドウ投影タイプに変更されるなど、新型は見やすさを重視した設計思想が強まった。
シャシー性能の向上を目的とした補強に加え、車外からの音の侵入を防ぐアプローチも見逃せない。天井やタイヤハウス、フロアまわりに吸音&制振素材を配することで、静粛性向上が図られた。
190PS/25.7kg・mを発揮する2.5Lガソリンエンジンは、低負荷時に2気筒を休止する気筒休止機構を追加。パワースペックと省燃費性能の向上が図られた。
2.2Lディーゼルターボは、190PS/45.9kg・mを発揮。従来型同様にトルク感溢れる特性は変わらないが、急速燃焼多段技術の採用で静粛性が高まった最新ユニットに変更された。
新型アテンザのライバルは?
MAZDA新型アテンザ

価格帯:282万9600円~419万400円
Dセグメントは超激戦区強力ライバルが目白押し
アテンザが属するDセグメントの日本車のライバルを見ると、トヨタ・カムリ、日産・ティアナ、スバル・レガシィB4などがあげられるだろう。実はどのモデルもメインマーケットである北米では主力モデルであり、地味ながらもクルマの仕上がりも走りの実力も非常に高い。そんな中、アテンザの強みはセダンに加えて今や貴重なワゴンボディを持っている、クリーンディーゼルが選べる、そして内外装デザインなどはプレミアム方向で、「日本車以上輸入車未満」のキャラクターを持つことだ。ちなみにプレミアム方向という意味で言えば、価格差はあるだろうがカムリと基本コンポーネントを共有し、日本導入が決定しているレクサスESが最も近いライバルかもしれない。
LEXUS ES

北京モーターショーで発表されたレスサスの最新セダン
7代目となる次期レクサスESは、日本でもGSの後継として販売されることが有力。最新TNGA技術が組み合わされるなど、その実力は相当高そうだ。

海外向けは3.5LV6が主力になりそうだが、国内向けはカムリに採用されている、2.5 Lダイナミックフォースエンジン+THS2の次世代HVの搭載が有力だ。
TOYOTA カムリ

価格帯:329万4000円~419万5800円
最新技術満載で世界中で人気を集めるミドルセダンの王者
アメリカで15年連続乗用車販売台数No.1を獲得するなど、いまや世界で高い評価を得ているカムリ。TNGA技術に基づく「GA-K」プラットフォームの採用など、高い完成度を持つミドルセダンだ。

海外向けは純ガソリンモデルの設定もあるが、国内仕様は2.5L直4エンジン+THS2のHVモデルのみの設定。パワースペックと省燃費性能の両立も大きな見所だ。
開発エンジニアインタビュー
6年目の大改良で生まれ変わった新型アテンザの見所は?
異例ともいうべき大改良を断行したアテンザ。時期的にはフルモデルチェンジという選択もありえただけに、この選択の理由はかなり気になる。開発エンジニアに率直に尋ねてみると、思いがけない答えが返ってきた。

マツダ株式会社商品本部 主査脇家 満氏
全方位にマツダの「最新」を注いだことで最良のフラッグシップに仕上がりました
――2012年にフルモデルチェンジしてから、2回目の大きな改良となります。登場から6年、フルモデルチェンジは考えなかったのでしょうか?
脇家 経営的な部分も含めての判断ですが、個人的にはフルモデルチェンジだけが進化の手段ではないと考えています。
――確かにこれまでのマイナーチェンジを超える大規模な変更です。
脇家 中身の進化で言えばCX‐5よりも大きいかもしれませんね。次の世代に繋がる要素技術もいくつか盛り込んでいます。
――サスペンション/タイヤなどは、まさに次世代プラットフォームの考え方ですよね?
脇家 現行プラットフォームでもユーザーにメリットがある技術ならば、どんどん先取りして盛り込んでいく考え方ですので。
――アテンザはマツダブランドのフラッグシップです。現在、CX‐5/8の評判も非常に高いですが、素性のいいアテンザではそれらを超える必要がありますよね?
脇家 動的性能で言えば「低重心」であることは強みです。CX‐5/8はロールを上手にコントロールしていますが、絶対的なロール量が少ないことは人間にとって余裕が生まれ、その結果「走る喜び」がレベルアップします。やはり、そこはセダン/ワゴンでなければな……と思っています。
――新型の内外装はスポーティさよりもエレガントさが強調された感じがしますが?
脇家 新型はNVHや快適性を大きく引き上げていますが、ラグジュアリーを求めたためではなく。操縦安定性を日常域から「いいよね!! 」と感じてもらうためにも必要な性能だったと言うわけです。
――エンジンラインナップは変更ありませんが、北米には2・5Lターボがありますが……。
脇家 今回はマーケティングの判断です。実は北米駐在時にガソリンターボ開発にも関わっていたので、主査を引き継いでからは個人的な宿題の一つになっています。
提供元:月刊自家用車