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更新日:2018.11.27 / 掲載日:2018.04.02
NISSANセレナ e-POWER魅力解剖

日産イチ推しのe-POWERが、定番ファミリーミニバンのセレナに搭載された。ガソリン車と何が違う? トヨタやホンダのハイブリッドとくらべると? そんな疑問にお答えする。
モーターで走るファミリーミニバン新登場
ママ視点にも配慮しながら、誰でも運転しやすくどの席も快適。そんな狙いの2Lクラスミニバンがセレナ。e-POWERは電気の供給を車載された発電用エンジンで行うため、充電ポイントを探す必要がなく、ガソリン給油でOK。燃費のアドバンテージや電動ならではの静かさ、多人数乗車で重ったるくなりがちな走りの改善などが見どころだ。
NISSAN セレナ e-POWER
●価格帯:296万8920~340万4160円
●発売日:’18年3月1日 ●販売店:ニッサン全店
主要諸元(セレナ e-POWERハイウェイスターV)
●全長×全幅×全高(mm):4770×1740×1865●ホイールベース(mm):2860●車両重量(kg):1760●駆動方式:FF●パワートレーン:交流同期モーター(136PS/32.6 kg ・m) ●発電用エンジン:1198 cc 直3(84PS/10.5 kg ・m)●JC08モード燃費(km/L):26.2●燃料タンク(L):55[レギュラー]●最小回転半径(m):5.5 ●タイヤサイズ:195/65R15※オプションを含まず
e-POWER とは?

ノートベースのシステムは2L級ミニバンに通用するか
エンジンによる発電とバッテリーの電力によって電動モーターを駆動するe‐パワーは、一般用語で言えばシリーズ式ハイブリッドである。セレナに採用されたシステムは、ノートをベースとして発電用エンジン、駆動回生用モーター、バッテリー容量を強化したもの。電動ならではのドライバビリティと省燃費を特徴とするのもノートと共通。アクセルOFFで減速する、いわゆるワンペダルドライブの機能もある。発電専用とはいえ、1.2Lエンジンで2L級の1BOX型に大丈夫なのか。それが試乗前の正直な疑問であり、チェック要点でもあった。
試乗インプレッション タウンユース

セレナ e-POWERの公道試乗会が横浜で開催された。日常使いでもe-POWERにアドバンテージはあるのか、そしてクローズドコースではわからなかった高速道路での実力は?
2.4Lに迫る力で重量を感じさせない駐車支援もうれしい
シリーズ式の最も得意とする状況が、頻繁な加減速を伴う市街地走行である。e‐パワーはフットブレーキに油圧回生協調機構を備えていないため、燃費向上にはドライブモードを「e‐パワードライブ(S/ECO)」に設定するのが必須。アクセルオフ時の回生により、効率的に減速エネルギーの回収ができる。ペダルオフ状態での回生は、ガソリン車なら巡航ギヤから2段くらいダウンシフトしたのと同じくらいの減速。もちろん、ペダルの緩め具合で減速(回生)のコントロールが可能であり、慣れてしまえば市街地走行はアクセルペダルだけで済む。
エンブレ回生にしても加速性にしても蓄電量制御が勘所。満タンに近ければ回生できないし、蓄電量が少なすぎれば1.2L車のパワーしか引き出せない。そこがセレナ e‐パワーの巧みさである。
インジケーターで半分くらいの蓄電量を基準とした、効率的な回生を優先した制御だ。しかし、加速性能が緩いわけではない。発進でも追い越しでも、踏み込みと同時にぐいっと立ち上がるトルクで重量を感じさせない。浅いアクセルの踏み込み量と踏み増し時の加速反応のよさが運転感覚にも余裕 をもたらす。クラス標準の排気量は2Lだが、e‐パワー車の余力感は2.4L車に近い。
街乗り優等生のもうひとつのポイントがパーキングアシスト。駐車枠を定めたら、あとは加減速だけみればいい。セットも簡単。画面の操作ガイドでマニュアルも不要。意地悪く入りにくい状況でセットしても、ちゃんと切り返してピタリと収まった。やや左寄せで運転席の乗降スペースも確保。経路予測をしなくて済むのは、駐車が苦手なユーザーには何よりだ。
ギヤチェンジなし
走行モーターはギヤ比固定の減速機構のみ。
レバーやボタンは制御を変更するモードセレクターとして機能する。
チャージ&マナーモード
エンジン始動を控えるマナーモード、充電優先のチャージモードは、ノートにはない新機能だ。
e-POWER Drive
一般のAT車とは異なり、アクセルオフで空走するのではなく、減速力が発生する。大まかに言うと、速度を失う分のエネルギーが発電に回される(回生ブレーキ)仕組みだ。
試乗インプレッション ハイウェイ

高速巡航も静かで瞬発力がありゆとりを感じられる
変速機を持たない電動駆動は高速での効率が落ちやすく、e‐パワーで一番気になっていたのが高速走行。しかし、それは杞憂だった。一般用途なら動力性能で問題となる点はなく、市街地と同様に2L級以上のゆとりを示した。
蓄電量を高めに保つため、エンジン稼働は頻繁だが、ガソリン車の巡航よりも静か。バッテリーからの電力アシストで浅い踏み込みでの加速や瞬発力も良好。市街地の印象ほど活発ではないが、電動のアドバンテージを実感できる。
無闇に飛ばせば非効率域に入ってしまうだろうが、プロパイロット任せで巡航させていれば、美味しい部分を踏み外すこともない。
プロパイロットとe-パワーが初コラボ
ノートe-POWERはプロパイロット非装着なので、セレナが初のe-POWER+プロパイロット車となる。電脳化と電動化の相性に期待大。
キャプテンシートはe-パワーのみ
左右スライド機構も備える2列目キャプテンシート。ガソリン仕様のセレナには設定がない。
参考燃費(ECOモード)
横浜・みなとみらいを起点に市街地と首都高速/横浜横須賀道路を走行。ECOモードを使用し、交通の流れに乗って70km弱の簡易的な測定なので、数値はあくまでも参考レベル。
結論
ルートを選ばずどこでも力強く優位性を感じる
今回の試乗ルートは勾配も少なく、走行速度も低め。平日の高速道は速度変化も少ない。e‐パワーにとって恵まれた条件だったのは否定できないが、その制御の巧みさには驚かされた。試乗ルート全域で力強い加速と余力を示し、燃費面だけでなく、動力性能でも優位性を実感させてくれた。プロパイロットはLKAの操舵特性に違和感減少の改良が加えられ、ACCともどもゆったり気分のドライブを楽しませてくれた。また、負荷変動に対してエンジン騒音の変化が少なく、ロードノイズも含めて定量的に高い静粛性を示したのも長所だ。元々、ファミリーユースに適した穏やかな乗り心地を特徴としていたが、力強さと静粛性は同乗者にとっても快適性や走りの質感の向上となる。穏やかな和みの移動空間の魅力もe‐パワーで高まったわけだ。今回は1BOX型が苦手とする高速登坂や山岳路のチェックはできなかったが、この試乗で得た印象からすれば、より厳しい状況でも十分に期待していいだろう。
ライバル比較
セレナ( ガソリン車)

エンジン性能は標準的、余力はない
簡易型ハイブリッドとなっているが、電動のアシストは発進などごく限られている。拡張型アイドリングストップ車と考えたほうがいい。エンジン性能は標準的だが、加速側に振ったCVT制御もあって、負荷に対する回転変化が大きく、実際の加速性能よりも余力感を低下させている。体感静粛性も低下しやすく、前世代の基準器といった感じだ。
TOYOTA ヴォクシーハイブリッド

常に販売上位をキープ
99PSの1.8L直4と82PSのモーターを搭載し、システム最高出力136PS、JC08モード23.8km/L。兄弟車のノア/エスクァイアと併せて販売トップが定位置となっている。
お家芸の高度なハイブリッドをミニバンに最適化
ハイブリッドシステムはプリウスと同系統になるが、エンジン稼働時の回転数変化を抑えたり、踏み込み反応を高めるなど、1BOX型に適した特性となっている。ただし、高速域での余力感低下は同じ。どちらかというと低中速域でのドライバビリティや燃費に優れるタイプだ。また、現行モデルでは新型プラットフォームを導入し、乗り心地を向上させているが、相対的には多人数乗車の高速走行向けの硬めのサスチューンを採用。フットワークの適性では長距離型と言えよう。
●価格帯:301万4280~336万3120円
HONDA ステップワゴンスパーダハイブリッド

ホンダセンシングを標準装備
カスタム系のスパーダにのみ2モーターハイブリッド「i-MMD」を設定。2L直4+モーター(145PS +184PS)はJC08モード25km /L。システム最高出力は215PSだ。
強心臓と落ち着いたフットワークで高速ツーリングが得意
システムはアコードと同様に2Lエンジンを発電機に用いたシリーズ式を基本にするが、エンジン稼働時のエンジン回転数制御をAT車に近づけるなど、比較的エンジン車に近いドライブフィールとしている。さらに高速巡航ではエンジンパワーで直接駆動。ダイレクトなドライブフィールと電動アシストが余力感を高める。日常域でも刺激の少ないフットワークだが、高速域でのハンドリングも落ち着いている。パワートレーンの特性と合わせて、高速ツーリングも得意だ。
●価格帯:330万480~355万9680円
比較1 エクステリア/質感
車格感や押し出しならヴォクシー系が一歩リード
いわゆる5ナンバーサイズが2L級1BOX型の特徴のひとつ。パッケージング寸法に目立った違いはなく、3ナンバーサイズ仕様でも差はわずかである。また、デザイン面ではウインドウ開口を大きく取るのが主流。元々はセレナから始まったが、ファミリーカーの定番化が進むとともにライバル車もサイドウインドウの上下開口が大きなデザインとなった。車格感については、押し出しの強さはヴォクシー系が一歩リードしているが、好みの分かれる部分でもある。また、ステップワゴンのハイブリッド車はエアロ系にのみ設定。
セレナe-POWER 親しみやすさを基調にしてブルー加飾でe-POWERを表現

現行車では押し出し感を強化したフロントマスクとなったが、全体的にはフレンドリィな外観。エアロ系のハイウェイスターもスポーツ色よりプレミアム感を高めたドレスアップを特徴とする。
e-パワー車はブルーを基調としたメッキ加飾やリヤサイドスポイラー、専用ホイールを採用するが、基本デザインは共通。
e-POWERエンブレムやブルー加飾のほか、ホイールが専用デザインとなり、空力=燃費配慮のリヤサイドスポイラーを装着する。
セレナ(ガソリン車) 男臭さの強調がなく乗り手を選ばず

ボディ本体はe-パワー専用の艤装以外は共通であり、質感や車格感に差異はない。ただし、e-パワー車はアルミホイール標準だが、2L車は上級設定車以外はOPになる。
ヴォクシーハイブリッド 兄弟車ともども押し出しの強さ重視で好みが分かれるところ

骨太な押し出し感で車格を演出するのがヴォクシー系の特徴である。しかも、嗜好を違えた姉妹車のノアやエスクァイアがあり、エアロ系も用意。
車格感の演出だけでなく、デザインテイストの選択肢の広さも特徴。もっとも、フレンドリィあるいは和み系を求めるユーザーに対応できないという点では偏った嗜好とも言える。
ステップワゴン スパーダハイブリッド ハイブリッドはカスタム系のみでガソリン車との違いは少ない

ハイブリッドはスパーダだけの設定であり、標準系とは趣の異なる強面のフロントマスクを採用。アルミホイールを標準装着するなど外装も上級仕様である。
ただし、ハイブリッド車専用加飾は少なく、ホイールデザインとエンブレムくらいだ。ハイブリッドで先進的プレミアム感を主張したいドライバーには物足りなく感じられるかもしれない。
比較2 インテリア/居住性
室内寸法は3車とも同等、居心地と雰囲気で選ぶべし
ヴォクシー系がプラットフォームを一新して低床設計となったため、セレナだけが一世代前のフロア高となった。もっとも、居住性だけを考えるなら、全高を高くすれば床面高のハンデは解消できる。ちなみに全高はセレナが最も高く、室内高は3車ともほぼ同じ数値である。どちらかと言えば寸法のわずかな差よりも居心地や雰囲気を重視したほうがいい。また、3車ともスペース的に余裕がないせいもあるが、サードシートは格納効率を配慮した設計となる。いずれもセカンドシートとサードシートの座り心地の差は大きめだ。
セレナe-POWER 走行用バッテリー搭載のため2列目はキャプテンシートのみ8人乗りの設定はない

セカンドシート中央部を独立スライドのセンターコンソールとして使える「スマートマルチセンターシート」は駆動バッテリー搭載のため廃止。セカンドキャプテンシート仕様のみとなり、乗車定員も7名に。プレミアム感を楽しむにはキャプテンシートが勝るが、需要の多い8名乗りベンチシートが設定されないのは、多人数乗車派には気になる部分。
標準のシート表皮はファブリック。2列目は右がロングスライド、左がロングスライド+横スライドだが、V系グレードは左右ともに超ロングスライド+横スライドとなる。
サードシートは薄クッション設計で、短いバックレスト丈など、座り心地は簡易型の印象が強い。
横スライド機能&両側アームレスト付きの2列目キャプテンシート。ロングドライブでも疲れにくい中折れ(スパイナルサポート)形状の背もたれパッドを採用している。
アップライトな着座姿勢等々は1BOX型の標準的な設計。セカンドシートは独立席らしい収まりのよさに加えて両側にアームレストが備わってリッチな気分。
床面高が高いためステップを用いた乗降となるが、乗車時よりも降車時のほうがハンデを感じやすい。
サードシートへのアクセスは、一般的なセカンドシート退避以外に、キャプテンシートならではのセンターウォークスルーで乗り込むことも可能だ。
セレナ(ガソリン車)
セカンドシート中央部を独立スライドのセンターコンソールとして使える「スマートマルチセンターシート」が、居心地と使い勝手の両面で大きなアドバンテージである。
ヴォクシーハイブリッド 同クラス車の中では3列目シートの座り心地がいい方だ

ハイブリッド車はセカンドキャプテン仕様に限定されるが、超ロングスライド+横スライドのくつろぎ仕様が売り物のひとつ。横スライドは乗降性の面でも利点だ。サードシートの座り心地はセカンドシートよりも劣るが、ライバル車と比較するとサイズ感やクッションは良好。多少の差とも言えなくはないが、多人数乗車の居心地平均はちょっと上。
2列目キャプテンシートは超ロングスライド+横スライド機能付きだ。
ステップワゴン スパーダハイブリッド 3列目シートは格納優先で座り心地がやや犠牲になっている

ステップワゴンのシート設定はセカンドキャプテンシートが標準。ベンチ仕様はOP設定となっているが、ハイブリッド車はベンチ仕様のOP設定がない。サードシートは反転荷室床下格納式で、シートサイズは小振り。座面もバックレストも収まりが悪く、大柄な人は座り疲れしやすい。乗降ステップはないが低床設計のため足着き性は良好である。
ハイブリッドG・EXのみ、USBジャック×2をOPでAC100V電源に変更できる。
比較3 ユーティリティ&積載性
3列目シートの格納方法や荷室の使い勝手に個性が見える
2L級1BOX型の基本的なキャビンユーティリティは多用途性にある。サードシートの座り心地が良くないのも格納性を高めた結果だ。サードシート格納は、セレナとヴォクシー系が1BOX型では定番の左右分割跳ね上げ式、ステップワゴンは反転して荷室床に落とし込むタイプ。格納の作業性と積載物のサイズや形状との相性が使い勝手の要点。また、セレナはガラスハッチ、ステップワゴンは部分横開きというリヤゲートの工夫も見られる。
セレナe-POWER サードシートの張り出しは大きめだが、ガラスハッチが便利
サードシートスライドは空荷の時のくつろぎ向け。サードシート格納作業はちょっと面倒。格納時の張り出しが大きめなので平置きでは積載量が多少減少する。
リヤゲートのガラス部分だけを開閉でき、省スペースで楽に小物の出し入れなどができる。
セレナ(ガソリン車)
インパネやサードシート周りの機能、格納性はハイブリッド車に準じている。
ヴォクシーハイブリッド 3列目格納時に荷室の高い位置まで広く使える
クオーターウインドウの凹みにはまるようなサードシート格納で積載性がいい。格納作業も力要らずだ。
メーターレイアウトの関係で、運転席周りの収納スペースは少なめ。
ステップワゴン スパーダハイブリッド 独特なリヤゲートは人の出入りにも使える
サードシート格納時の積載性は良好だが、常載品を置いておけないのが難点。
「わくわくゲート」は買い物等の積載性だけでなく、後ろからの入り口としても使えて便利だ。
比較4 先進安全&運転支援
セレナとステップワゴンに対してヴォクシーはひと世代前の感あり
長く使い続けるために必要なのは燃費と安心。ハイブリッド車なら燃費は問題ないので、残る課題は“安心”だ。安全&運転支援装備の充実は現在のクルマ選びの最重要点でもある。もはや衝突回避自動制動のAEBSの装着は常識で、自動運転化技術と状況認識機能の充実が重要だ。自動運転化技術ではACCと半自動操舵LKA、状況認識補助では標識認識が次世代標準と考えていい。比較車ではヴォクシー系のみACCと半自動操舵型LKAが採用されていないが、売れセン車種だけにトヨタの出遅れを感ぜずにはいられない。
セレナe-POWER プロパイロットの動作はガソリン車以上
ACCは渋滞追従を含む全車速型を採用。LKAは車線維持操舵機能を備え、進入禁止/一時停止/制限速度の標識検知機能も採用。MOD(移動物検知)機能付き俯瞰表示全周モニターなど、全乗用車系でも充実した安全&運転支援機能を備える。また、パワートレーンとの相性のよさか、ガソリン車よりもACCとLKAの制御精度も向上している。
【プロパイロット】全車速型ACCと半自動操舵型でLKAで同一車線自動運転技術と謳うプロパイロット。上級グレード限定でOP設定されている。
フロント単眼カメラが前方を監視し、自動ブレーキは歩行者に対しても作動する。
【インテリジェント アラウンドビューモニター】オプションの車両周囲モニターは移動物検知機能付きだ。歩行者や自転車などの接近を、ディスプレイ表示とブザーで知らせる。
ソナー検知式だった踏み間違い防止装置は、カメラを併用することで機能が向上した。
【インテリジェント パーキングアシスト】自動でハンドル操作を行い、枠内駐車を支援。e-POWER車と日産ナビの組み合わせ(一部を除く)では、ナビ画面に映像を表示。
セレナ(ガソリン車) プロパイロットを選択可能
e-POWERと同様に、プロパイロットが上位グレードへのオプションとして用意される。
ヴォクシーハイブリッド ライバルに対して「先進」と誇れるような機能はない
安全パッケージは「トヨタ・セーフティセンスC」であり、ACCや半自動操舵LKAは含まれず、車線維持支援は逸脱警報となる。標識認識の設定もなく、現在の安全装備としてはベーシック。ハイブリッドの先進性とミスマッチ感がある。高速長距離走行の機会が多いユーザーの場合はACCとLKAの非設定は致命的なハンデと言ってもいい。
単眼カメラ+レーダーを用いた緊急自動ブレーキを備えるが、歩行者や自転車には未対応。踏み間違い事故抑制機構は標準装備だ。
ガソリン上級グレードにOP設定のパーキングアシストは、残念ながらハイブリッドには非対応。
クルーズコントロールは設定速度を維持するタイプで、追従機能などは備えていない。
フロントカメラが車線を検知しているものの、操舵アシストを備えないため、車線逸脱に対しては警告表示と警告音での対応となる。
ステップワゴン スパーダハイブリッド プロパイロットに負けない運転支援機能を標準装備
ACC、LKA、標識認識機能を備える。ACCはターボ車では高速型になるが、ハイブリッド車は渋滞追従機能付きの全車速型となっている。標識認識は進入禁止/ 一時停止/ 制限速度/はみ出し禁止に対応している。また、AEBSだけでなく、対歩行者事故回避では操舵支援を行うのも特徴。セレナと並びミニバンでは最高水準と言っていい。
レーダー&カメラの検知機能と操舵やブレーキの自動化により高度な安全&運転支援を可能とする「ホンダセンシング」を標準装備。
車線や前走車を認識し、操舵アシストによる車線維持走行や路外逸脱抑制走行が可能。
操舵アシストは緊急時にも作動。ブレーキに加え、操舵でも歩行者との衝突回避を行う。
パーキングアシストは車庫入れだけでなく縦列駐車にも対応するタイプだ。
前後左右4つのカメラが周辺確認や駐車をサポートする。
評価のまとめ

ここまでのABC評価一覧に加え、コストパフォーマンスを含む総合力を評価して解説。
コスト的に二択になるなら、電動化よりも安全&運転支援装備が優先だ
ハイブリッドに省燃費と動力性能のアドバンテージはあるが、それ相応の値付けでもあり、エコプレミアムという印象も強い。実効性が高い安全&運転支援装備はガソリン系とほぼ同じ設定なので、安全&運転支援充実のお手頃価格モデルの方が、どうしてもコスパで上回ってしまう。要するに限られた予算でハイブリッドか安全&運転支援のどちらかしか選べないなら後者を優先すべきということ。
3車のオススメグレード

NISSANセレナ e-POWER
XV+セーフティパックB
●車両本体価格:337万1760円
プロパイロットは外せない装備。となると標準系もハイウェイスター系も上級グレードに限定されてしまう。e-パワーに限らず、セレナはプロパイロットをグレード選択のハードルにしているのが難点だが、上級グレードゆえ利便快適装備も充実。下位グレードではOPの両側電動スライドドアも標準装備され、必須OPはプロパイロットくらいである。

TOYOTAヴォクシーハイブリッド
ZS 煌(きらめき)【特】
●車両本体価格:336万3120円
グレードによる主な相違点は内外装とスライドドア/リヤゲート周り。安全装備は全グレード共通設定となっているので、実用性とコスパ優先ならベーシックのXで十分だ。ただ、プレミアム感は同車の売りでもあり、それでヴォクシーを選ぶなら上位グレードが狙い。実用面では割高な印象もあるが、同車定番の特別仕様「煌(きらめき)」が魅力的である。

HONDAステップワゴンスパーダハイブリッド
G・ホンダセンシング
●車両本体価格:335万160円
全車ホンダセンシング標準装着。安全装備でグレード間格差になるのはサイドカーテンエアバッグくらいである。ベーシックグレードでは実用装備やナビ関連のOPが制限されるので、中間設定になるハイブリッドGが実用性と先進性のコスパに優れている。ただ、最上級グレードとの価格差は約20万円なのでプレミアム感重視なら最上級仕様もあり。
結論 e‐パワーは燃費と安全性にインパクトあり

e-POWERは新たなクラス基準候補だ。
大きな用具を持って遊びに行くか、それとも日帰り家族ドライブを楽しむかなど、実用機能は相性の部分も大きい。デザインに至っては嗜好の問題で、絶対的優位性などあるわけがない。しかし、燃費と安全装備は別である。まったく興味がないユーザーもいるかもしれないが、クルマの重要な基本性能と考えるべきだろう。
ハイブリッドで先行したヴォクシー系だが、ステップワゴンとセ レナにハイブリッド車が追加された今は安全装備がハンデとなってしまった。特にプロパイロットで安全&運転支援で先行していたセレナにハイブリッド車が登場して、2L級1BOX型はハイブリッドと先進安全装備が次世代への両翼となった感がある。相対的にヴォクシー系は片翼飛行の状況だ。
e‐パワーに圧倒的なアドバンテージがあるとは思わないが、セレナe‐パワーの登場は同クラスの「ふつう」を変えるに十分なインパクトがあった。ステップワゴンがスパーダに限定されることもあり、しばらくはセレナe‐パワーが2L級1BOX型のベンチマークとなる可能性が高い。
提供元:月刊自家用車