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更新日:2025.06.03 / 掲載日:2025.05.31
新型プレリュード先行レビュー
インテリアを初公開! すでにスガタカタチは、ほぼ完成形
「プレリュード」は、今年の秋に華麗に復活を遂げるのだが、これまでベールに包まれていたインテリアが正式に公開された。往年のファンにとって懐かしいビッグネームは、どんなクルマに仕立てられているのだろうか?
●文:川島茂夫 ●写真:月刊自家用車編集部
HONDA 新型プレリュード(プロトタイプ)最新レビュー

高性能や速さだけがスポーツカーの魅力にあらず
シビックタイプRはホンダならではの魅力が宿るクルマだが、同じスポーツカーを名乗りつつもプレリュードは方向性が異なっている。以前、新型のプロトタイプを試乗した時に感じたのが、ツアラーモデルとしてのハイレベルな資質の良さであり、これは”エレガント“と”スポーツ“の融合と言い換えてもいい。実はこれこそが、歴代プレリュードが大事にしてきた重要なエッセンスでもある。
それはスタイリングに関しても同様で、新型は際どいアクセントを用いずに流麗にデザインされた外観が与えられている。ここからも新型にはハードコアなスポーツ性が求められていないのは一目瞭然だ。
キャビンはコンパクトなメータークラスターに、シフトなどをセンターコンソールに置くオーソドックスなレイアウト。コックピット感を持たせながら、色調や造形により上品なカジュアル感を漂わせた仕上がりで、ドライバーズカーとしての機能性と、カップルズクルーザーらしい優雅さをとても上手に融合させている。
ファストバックスタイルゆえに後席のヘッドルームに余裕はないが、このサイズのクーペとして平均的なサイズで、荷室長こそコンパクト2BOXと大差ないものの、後席を格納すれば二人の小旅行には十分以上の容量が確保されている。さすがにファミリー用途への対応は難しいが、プレ&ファミリーならばファーストカーとして活用できる実用性も備えている。
最新の電動制御の採用でホンダ車らしい走りを実現
プラットフォームはシビックタイプRがベースで、アダプティブ・ダンパー・システム(電子制御サス)やデュアル・アクシス・ストラットのフロントサスを採用する。こう記すとタイプRと同様に限界性能志向を狙っていると思われそうだが、プレリュードはスポーツ&ツーリング志向にセッテイングされており、サスを深くストロークさせても、安定した操縦性の維持を重視している。ほかにもホンダ車の定番機能となるアジャイルハンドリングアシストも装備され、電子制御サスの採用と合わせてサス制御も含めた走行モードによる制御特性の切替機能も採用されている。
パワートレーンはシリーズ式をベースに高速巡航時にはパラレル式として稼動するe:HEVの2ℓ仕様。次世代e:HEVの中型ドライブユニットでは平行軸構造が採用される予定だが、プレリュードが搭載するのはZR-Vと同じ同軸型になる。ただ、次期e:HEVの制御技術等が導入されることで、熱効率も含めた性能向上が図られるという。
電動ハイブリッド車でもクルマを操る楽しさを追求
パワートレーン制御は、スポーツ/GT/コンフォートの3モードが設定され、モード選択でアクセル操作に対する駆動力の増減特性等が変更できる。さらに走行モード選択とは別に「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラス シフト)」が用意されており、この機能をオンにすると、各モードともに初期トルクの立ち上げやエンジンサウンドの演出が変更できる。多段変速の小気味よさに加え、爽快な印象とキレのよさを醸す疑似エンジン音がスピーカーから流れることで、ドライバーの操り心地を向上させている。
「Honda S+ Shift」で興味深いのは、スポーツ/GTモードではスポーツ志向のファントゥドライブ性が強化されるが、コンフォートモードでは余力感を高めるパワー制御となることで、走りの車格感や快適性の向上を図られること。状況や志向に合わせた走りが選択しやすくなる、なかなか面白い試みだ。
新型プレリュードは、スポーツクーペながらマニアックで濃いキャラに陥ってないことがとても好ましい。日常使いからロングドライブまで、ファントゥドライブが楽しめることは特筆すべき点であり、大人に似合いのパーソナルカーとなっているようだ。
新型プレリュード《エクステリア》
まだ車体寸法は公表されていないが、全長とホイールベースはシビックより小さく、サイズ的にはコンパクトクーペに分類される。もっとも、そう見えないところがスタイリングの巧みさ。フロントウインドウの傾斜はそれほど強くなく、低いカウルトップとベルトラインやFFを思わせないフロントオーバーハングと相まって寸法以上にロングノーズに見える。一方、クーペとしては、ロングキャビンのプロポーションは車格感と優雅さを演出。これ見よがしの空力デバイスがないことも、大人っぽいエレガントな趣を一層高めている理由のひとつだ。






新型プレリュード《インテリア》
空調や走行モード等の各操作系は集中配置され、スイッチ類もブラインドタッチがしやすい大きさ。センターディスプレイはダッシュボード上に独立したように配置されるなど、機能的なコックピットだが、優しげなトリム素材や細部のデザインにより、スポーツカーにありがちな硬派なイメージを上手に払拭できていることが妙味。デートカーに似合いのカジュアルなキャビン空間に仕上げられている。








新型プレリュード《このメカニズムにも注目!》
2ℓe:HEV
パワーユニットの詳細スペックは公表されていないが、試乗したプロトタイプモデルに搭載されていたのは従来の2ℓe:HEVユニットをベースに、先日発表された第3世代e:HEVの制御技術等がプラスされたいわゆる2.5世代型に相当するもの。この2.5世代型では、EGR制御領域の拡大による熱効率向上や省燃費領域の拡大がなされており、性能向上が著しい。シリーズ制御ながら多段変速のようなリズミカルな変速感を演出できるのも幅広い回転域で高い熱効率稼動があればこそ。ファントゥドライブと省燃費の融合も大きなみどころだ。
Honda S+Shift
スポーツ/GT/コンフォートの3タイプの走行モードの特徴を際立たせるのが、「Honda S+ Shift」の特徴だ。各モードの特性を誇張した制御でもあり、スポーツとGTでは、初期トルク立ち上げとエンジンサウンド演出が強化され、コンフォートではエンジン回転を抑えてトルク立ち上げを大きめにすることで余力感を高めている。
デュアルアクシスストラットサスペンション
ダンパーフォークの追加によりキングピン軸を独立させたことでセンターオフセット量の縮小やコーナリング時のキャンバー変化の最適化を図っている。コーナリング時の前輪トレッド面の接地性の向上や加速時のトルクステアの減少により安定したハンドリングやスムーズな操舵感が得られ、良質な操り心地の実現するポイントのひとつだ。
アダプティブダンパーシステム
走行速度や回頭で発生する車両挙動を、走行状況に応じて減衰力を制御する電子制御ダンパーシステム。加速度センサーやストロークセンサーにより、運転操作等に対してリアルタイムに4輪の減衰力を独立制御。操安性と乗り心地の両立が狙いだが、走行モードの切り替えで、ハンドリングと乗り心地のバランスを選択できることも特徴だ。
アジャイルハンドリングアシスト
旋回内輪側のブレーキを用いて回頭性を高めるシステム。アンダーステアをカバーするためのシステムとも言えるが、高速コーナリングでの安定性を重視したサスチューンと組み合わせることで、タイトコーナーから高速コーナーまでステア特性の少ない操縦性が得られることが最大のメリット。
国産屈指のスペシャリティカーはどう発展してきたのか?

イメチェンした2代目が大成功を決定付けた功労者
プレリュードという名が強烈に輝いたのは、やはり1982年に登場した2代目プレリュードだろう。リトラクタブルヘッドライトを備えた低いボンネットに流麗なフォルムもさることながら、快適な乗り心地にサンルーフをはじめとする充実した装備を装着。おまけに助手席のリクライニングレバーが運転席側にも付いていて、低いコンソールを乗り越えるのも容易とくれば、カップルのために作られた”デートカー“と呼ばれたのも納得だ。
もっとも、1978年にデビューした初代プレリュードは、少し毛色が違っていた。1972年のシビックと1976年のアコードが北米でも売れたことで、いち早く国際ブランドを意識したホンダが狙ったのは、働くアメリカ人女性だった。プレリュードは、いわゆるセクレタリーカーと呼ばれる商品企画を実現するべきクルマとしてスタートしたのだ。
初代に備わっていた日本車初の電動サンルーフやコノリーレザーシートなどの充実した装備は、彼女たちのためだが、まだマイカーを持つ女性は少なかった日本国内では、男子ウケが弱く、成功とは言えなかった。すでに当時のFF車としては卓越したハンドリングも実現していたが、日本では根強かった「走りならFR」という風潮を覆すことはできなかったのだ。
そこで日本男子も振り向かせるエッセンスを投入したのが2代目だ。メカニズムを共有する同時期のアコードともども、独自のダブルウィッシュボーンサスペンションで低いボンネットと、きびきびとしたハンドリングを強調。日本車初のABS(当時のホンダは4WALBと呼んだ)も設定され、1985年にはシャープに吹けるDOHCエンジンも搭載して、走りの良さもアピールした。
ラヴェルのボレロをBGMにしたCMもセンスが良く、プレリュードは一躍日本中の若者たちの憧れの一台になったのだ。
世界初の機械式4WS(4輪操舵)を搭載して1987年に出た3代目もキープコンセプトで成功したが、1991年の4代目でそんな潮目が変わる。北米での拡販を目指してサイズアップし、アグレッシブなスポーツクーペに変身したことで、デートカーとして支持してきたユーザーが離れてしまったのだ。
そんな理由もあって1996年デビューの5代目はふたたびスペシャリティカーに回帰したものの、バブル崩壊でクーペ市場が縮小したこともあり、一度は歴史に幕を引くことになった。
リベンジを期して復活する6代目の動向には、注目すべき理由が揃っているのだ。
初代(1978-1982)

国内では微妙にニーズがズレていた
初代プレリュードは、主に米国の働く女性の通勤車を狙った企画から生まれた。意欲的なボディと足回りの設計で当時のFF車としては優れたハンドリングを実現していたが、1.8ℓのCVCCエンジンは大人しい性格で、デザインもスポーティというよりも優雅だった。国産車初の電動サンルーフや、英国の高級皮革メーカー、コノリー社製の本革シートを設定するなど、上級の装備を盛り込み、狙い通り海外では好評を得たが、日本国内では不発だった。
2代目(1982-1987)

抜群のハンドリング性能も高く評価
大ヒットとなった2代目プレリュードは、「FFスーパーボルテージ」をキャッチフレーズに登場。当初の1.8ℓエンジンはSOHCながら軽快に吹け、アッパー高を抑えたダブルウィッシュボーンサスペンションで、当時の国産車では最も低いボンネット高と、ほとんどロールせずに機敏に回頭する、スポーティなハンドリングを実現していた。日本車初のABSを設定したほか、1985年には2ℓDOHCのSiも加えて、幅広い層に支持された。
3代目(1987-1991)

独創的な操舵システム「4WS」を採用
1987年に登場した3代目プレリュードは、キープコンセプトながら流麗なフォルムをさらに洗練させて、引き続き人気を誇った。独創的な機械式4WSは、ステアリングと連動して小舵角では後輪を同位相、大舵角では逆位相に切り、高速レーンチェンジでの安定性と車庫入れなどでの取り回しを両立させた。1988年に登場した5代目日産シルビアとデートカーの地位を争うが、最後はよりアグレッシブな走りが可能なシルビアに軍配が上がった。
4代目(1991-1996)

時代が悪かった不運のスポーツクーペ
1991年に登場した4代目は、崩壊目前のバブル景気とは裏腹に、より上級のスポーツクーペに変身した。全幅は初めて1.7mを越えて3ナンバー規格a、エンジンも日本国内では全車が2.2ℓとなる。4WSが電子制御となるなどバブル期の開発らしく凝った内容が与えられ、インテリアも斬新なデザインとクオリティだったが、バブル崩壊の直撃からは逃れられず、日本国内では存在感を発揮できずに終わってしまった。
5代目(1996-2001)

原点回帰も、人気再来とはいかず……
1990年代に入ると、北米ではスポーツカーの保険料率が高騰し、若者には手が出せなくなっていった。1996年に登場した5代目プレリュードは、そんな影響もあってふたたび温和なスペシャリティカーに戻った。スポーツグレードも設定されたが、縦型ヘッドランプの穏やかな表情や、4代目より窓面積を大きく取って後席の居住性も高めたデザインは、大人のパーソナルカーそのもの。当時の日本では受けなかったが、復活する6代目もこの路線の延長にある。