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更新日:2023.09.09 / 掲載日:2023.09.09

センチュリーの未来予想図【自動車ジャーナリスト九島辰也が解説】

文●九島辰也 写真●トヨタ、ロールス・ロイス

 トヨタがセンチュリーをフルモデルチェンジさせました。今度はなんとSUVです。これまでのセンチュリーセダンも継続して生産・販売させるようなので、追加モデルともいえます。いずれにせよ、周りを驚かせたのは確かです。

 冷静に考えれば、センチュリーがSUVになっても不思議ではありません。なんたって背の高いクラウンがすでに街中を走っているのですから、そうなります。SUVはもはやブームではなくデフォルトといっても過言ではないでしょう。

ただインフラがそれに追いついていないのは確か。都心の高層ビルやそれらに付随するショッピングエリアを訪れた時に困ります。“ハイルーフ”にカテゴライズされる駐車スペースはかなり少数。“平面”を多く用意しているところはともかく、機械式はその数の少なさに閉口します。どうにかならないですかね。こんなに街中はSUVだらけなのに。

新型センチュリー

 それはともかく、センチュリーはかなりボリューミーな感じで誕生しました。スリーサイズは全長5205×全幅1990×全高1805mmとなります。セダンが全長5335×全幅1930×全高1505mmですから若干短くはなるものの、幅も高さも広がりました。この辺がSUVの特徴でしょう。キャビンを広く作れることで前後席間距離は広がります。定員は4名。リアに左右独立したシートが備わります。

 そんなサイズですから同じカテゴリーに胸がワクワクするようなモデルが並びます。ロールス・ロイス・カリナン、ベントレー・ベンテイガなどなど。ただベンテイガにロングホイールベースのEWBが追加されましたが、ベントレーはドライバーズカーとしての思惑が各部に見えます。そもそもレーシングカースタートですからね。その意味ではセンチュリーはカリナンに近いかもしれません。れっきとしたショーファーカー(運転手付きのクルマ)です。ただ2500万円のプライスタグはカリナンより2000万円安くなってしまいますが……。

ロールス・ロイス カリナン

 新型センチュリーは見方によってはアメリカンにも見えます。リンカーン・ナビゲーターやキャデラック・エスカレード的なスクエアなデザインです。となると、いずれヒップでポップな方々も乗るんでしょうか。いやーそこは考えにくいですね。センチュリーのデザインには日本の美意識が取り込まれています。

 それにしても、よくよく考えるとトヨタブランドのクルマで2500万円というのはすごいと思います。パッソやヤリスと同じブランドですからラインナップの幅が広い。そこがロールス・ロイスやベントレー、リンカーンやキャデラックと違うところですね。

 それじゃセンチュリーをレクサスブランドにしてレクサスディーラーで売ればいいのにとも思います。せっかくトヨタの高級ブランド版として立ち上げたのですから、それを使わない手はありません。でもそうしなかった理由は2つ考えられます。一つはあくまでもトヨタブランドを継続したかった。なんたって豊田章一郎氏の想いに満ち溢れています。トヨタが日本のエグゼクティブのためにつくったショーファーカーであることは譲れない事実です。

 そして二つ目の理由は今日のレクサスがそこまでステイタスを上げていないという点。今やレクサスの代名詞はRXやNXといったミッドクラスSUV、そこにこれからLBXのようなコンパクトSUVを追加するのですから2500万円の価格レンジにはほぼほぼ遠くなります。ブランディング途中にして売れ線のコンパクトSUVへ展開するのですから、無理ですね。トヨタがVW、レクサスがアウディ、という関係であれば、VWグループのようにポルシェやベントレー、ランボルギーニのようなピナクルなブランドが他に必要になります。

 なんて好きなことを書きましたが、ついでにもう一つ書かせてもらうと、このセンチュリーが少々ヤンチャなニューリッチと呼ばれる富裕層の足クルマになる可能性はあると思います。彼らは現在メルセデス・マイバッハGLSを運転手付きで乗っていますが、これがこの秋にレクサスLMに順次替わっていきます。もうそんな方々がかなりのオーダーを入れていると耳にしました。で、その中の数人が今回の新型センチュリーに気づくと思われます。そして夜の銀座や赤坂、六本木がレクサスLMで埋め尽くされるのを見越して、その上をいこうと企て新型センチェリーを手に入れるのです。当然、LMよりセンチュリーの方がヒエラルキーは上ですからね。ウケます。

新型センチュリー

 新型センチュリーを考察するとそんな未来予想図に行きつきました。果たして本当にそうなるのかはわかりませんが、可能性は高いかと。ただセンチュリーは月産30台ですからそう簡単に手には入らないでしょう。となると結果がわかるのは一年後ですかね。でもそもそもセンチュリーは内閣総理大臣も乗るクルマですから、個人的にはそうならないことを期待します。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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