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更新日:2023.05.26 / 掲載日:2023.05.26

軽自動車のトレンド最先端・新型デリカミニ 人気の理由はこれだ!

MITSUBISHI 新型デリカミニ「魅力“全”解剖」

2023年のオートサロンで大きな話題を集めたデリカミニがついに正式発表。ひと目でデリカと分かるスタイリングのみならず、軽自動車離れした装備&機能が多数採用されたことで、この先の軽自動車選びのトレンドを変える1台にもなりそうだ。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

MITSUBISHI 新型デリカミニ

●発売日:2023年5月25日
●価格:180万4000〜223万8500円
●問い合わせ:三菱自動車お客様相談センター ☎0120-324-860

■主要諸元(T Premium 4WD)
●全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1830 ●ホイールベース(㎜):2495 ●車両重量(㎏):1060 ●パワーユニット:659㏄直3DOHCターボ(64PS/10.2㎏・m)+モーター(2kW/40N・m) ●トランスミッション:CVT ●WLTCモード総合燃費:17.5㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/リーディングトレーリング(R) ●サスペンション:ストラット式(F)トルクアーム式3リンク(R) ●タイヤ:165/60R15

アウトドアで遊びたい人、必見! 走りも装備も“超・軽自動車”

デザインを変えただけの
企画モデルにあらず
 もともと軽自動車は、生活のための道具という立ち位置だったが、軽自動車自身が高性能化したこともあって、1台で多くの用途を担えるようになった。なかでも高い室内高で抜群のキャビンユーティリティを誇るスーパーハイト系のモデルたちは、街乗りや買い物といったファミリー向けのニーズのみならず、本来SUVが得意としているレジャー用途にも対応できる懐の深さを持つ。

 実際、2018年末にSUVテイストを盛り込んで発売されたスズキ・スペーシアギアが好調な実績を積み重ねていることからも分かるように、かなり有望なカテゴリーになっている。

 ミツビシも2019年に実施したeKワゴンのフルモデルチェンジ時に、フロントマスクをデリカD:5風に仕立てたeKクロスを発売。そしてその翌年にはスーパーハイト系ベースのeKクロス スペースを導入することで、この新たなトレンドに対応している。

 今回、送り出されるデリカミニは、eKクロス スペースの実質的な後継モデルに当たる。eKクロス スペースと同様にeKスペースをベースに開発されており、車体骨格や外板パネル、内装デザインの多くは共用関係にある。

 興味深いのはeKクロス スペースとキャラの違いが明確なことだ。eKクロス スペースは、デリカD:5やアウトランダーPHEVに近い力強く精悍なマスクが特徴。それに対して、デリカミニはゆるキャラを連想させる穏やかで親しみやすい顔つきが与えられている。同じデリカをモチーフにしながらも、デリカD:5よりも一世代前のデリカを感じさせる懐かしい雰囲気を漂わせている。

なんでもマルチにこなせる
実用性の高さも見逃せない

 また機能面でもデリカミニはeKスペースに対してタイヤ外径をアップ。さらに悪路走行も考慮した専用サス設計を採用している。4WDシステムやグリップ制御等の基本駆動制御はeKクロスと共通だが、これらの工夫により高い悪路対応力を獲得。見た目からして単にSUV的な内外装を採用しただけのモデルと思われがちだが、レジャーの道具車レベルなら十分な悪路対応力を持つ。

 キャビンユーティリティとオンロード性能といった実用性能も、スーパーハイト系として不足なし。この基本性能がしっかりとしていることも、デリカミニの大きな武器になるのは間違いない。

予約受注だけで9000台超えを達成! 大ヒットの予感大!
4月6日に開催された発表会において、1月13日から4月5日までの約4か月で事前予約注文が9000台を超えたことが発表された。その約6割が4WDモデルになっているほか、最上級の「Premium」グレード(TとGの合算)が8割を超えているとのこと。会場でスピーチした代表執行役副社長(営業担当)の中村氏が「5月の正式発売までに倍となる1万8000台を目指したい」と語るなど、メーカーとしても相当な手応えを感じているようだ。

新型デリカミニ【エクステリア】

SUVのタフネスイメージを
上手に採り入れている
 荒天やら悪路を走り終えた後の汚れがサマになる。プレミアムやカスタムを売りにしているモデルだと汚れは禁物ということになるが、デリカミニだと演出のひとつに思えてしまう不思議な魅力を感じてしまう。

 外観で最も印象深いのがフロントマスク。オーバーライダーを模した意匠を施したバンパーやアンダーガード、エアダム周りのデザインによりSUVらしさを上手に演出。上目遣いのヘッドランプグラフィックもポイントのひとつ。鋭い眼光だが、一方で愛嬌も感じられる独特の表情だ。ただ、車体全幅の制限の問題もあって、フェンダー周りのクラッディングがデカール処理になってしまうのは残念。跳ね石から塗装を護る効果は期待できるが、他の部分がしっかりと造り込まれているだけに、少し悪目立ちしてしまう。

 ルーフレールが標準装着ということも特徴。ルーフレールの要不要はユーザーの使い方次第によるが、デリカミニのレジャー志向を表すアクセントとしては、重要な要点になっている。

 大径タイヤの採用も見逃せない。NA車のFF仕様は14インチホイール(ターボ車は15インチ)だが、4WD車は15インチホイールを装着している。14インチホイールは低扁平タイヤでオンロード志向、15インチの4WD車は大径タイヤで悪路志向という狙いがあるのだろうが、見た目の面でも大径ホイールを採用していると足元のタフネス感が増している。さらにリヤバンパーは下端を切り上げたデザインのため、4WD車を後方から眺めるとデフが目立つ。デフの存在感もSUVのタフネスと機能感を深めるエッセンスともいえよう。

 用途では4WDが不要であっても、ルックスの面で4WD車を選択したくなる。そう感じてしまうのもデリカミニの不思議な魅力だ。

ダイナミックシールドのイメージは踏襲しつつも、半円球のヘッドライトのおかげでekクロススペースとは印象が異なる。「DELICA」の白文字はOPのバンパーエンブレムによるもの。
ルーフボックスやキャリアの装着に必須となるルーフレールは全グレードに標準装備。SUVらしさをアピールできるスタイリシュアイテムとしても魅力大だ。
ガーニッシュパーツを配置することでオフロードミニバンの雰囲気をアピール。最低地上高は160㎜だが、低床構造のおかげで腰高感は皆無。街中でも映えるスタイルだ。
駆動方式/グレードで装着されるホイール&タイヤは異なるが、Tプレミアムの4WD車にはアルミホイールに165/60R15の大径タイヤが組み合わされる。
パワーユニットは直3NA(52PS/6.1㎏・m)と直3ターボ(64PS/10.2㎏・m)がラインナップ。全てのグレードが小型モーター(2kW/40N・m)を組み合わせたマイルドハイブリッド車となる。

新型デリカミニ【インテリア】

基本意匠はeKと共有だが
ブラック基調で差別化

 内装のデザイン造形は、eKスペースと共通だ。しかし、カラーコーディネートやシート表皮デザインの違いで雰囲気をかなり変えている。具体的にはeKスペースは明るいアイボリー系を採用しているが、デリカミニは黒系を基調としている。それがSUV的かと言えば疑問もあるが、eKスペースの和んだ雰囲気から差別化するには十分だろう。

 キャビン容量と機能もeKスペースと同等。シート表皮は全グレードとも撥水仕様で、後席バックレスト背面と床面ボードを樹脂仕様とすることで、濡れ物と汚れ物の積載性を高めている。

 キャビンユーティリティのポイントとなるシートアレンジも、後席は左右独立のスライド&リクライニング機構を備える。後席格納はシンプルなバックレスト前倒式だが低床設計の恩恵もあって、荷室の大物積みも余裕でこなしてくれる。デリカミニであえて変更を加えなかったのは、eKスペースでも実用性能はクラストップ級の実力を持っていたことが大きいのだろう。

 ステアリング奧に置かれたメーターパネルとコラム高の棚部、センターにパッドPC風のディスプレイ(OP)を配するなどインパネ周りは実用性、デザインともに今風に手堅く纏まっている。オーディオはレス仕様だが、GPSアンテナやTVアンテナなどは標準で備わる。

 機能装備は、冷暖房空調機能の充実ぶりが見逃せない。エアコンは全車タッチパネル式のオートエアコンとシートヒーター、リヤヒーターダクトが標準装着される。プレミアム系は天井取り付け型のサーキュレーターやステアリングヒーターまで備えている。

ステアリングには、オーディオ&マイパイロットの操作スイッチが配置されるほか、ターボ車にはパドルシフト、プレミアムグレードにはステアリングヒーターが標準装備される。
インパネコンソールは、右側にシフトレバー&電動パーキングブレーキ、左側にオートエアコンのタッチパネルスイッチが配置される。
左右2眼メーターの中央にはカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイを配置。エコペダルガイドやエネルギーモニターなどのエコ運転情報が表示される。
オーディオレスが標準設定だが、キャビン意匠にジャストフィットする多彩な機能に対応する9型ナビゲーションをディーラーOPで用意。
後席側に風を送ることで車内の空気を循環させるリヤサーキュレーターはプレミアムグレードに標準装備。プラズマクラスター機能も備えている。
強い日差しをカットするリヤロールサンシェードは、レジャーのみならず日常用途でも重宝する便利機能。プレミアムグレードに標準装備される。
ルームミラーには、車両周辺映像を表示するマルチアラウンドモニター機能も備わる。プレミアムグレードに標準装備。
デビュー記念イベント「DELICA MINI OUTDOOR FES」4/8に昭島で開催

新型デリカミニ【メカニズム&装備】

走行ハードの充実ぶりが光る
運転支援機能もトップレベル

 走行ハードウェアは基本的にeKスペースと共用しているが、前項でも述べたとおり、4WD車は大径タイヤを装備し、最低地上高を増加。その分だけ重心高が高くなることもあって専用にチューニングされたダンパーを採用している。

 4WDシステムは軽自動車としては標準的なビスカス式を採用。分類ではフルタイム型となっているが、前後輪回転数差によりVCUが後輪駆動トルクを発生するオンデマンド方式になる。性能的には生活四駆レベルだが、電子制御LSDといえるグリップコントロールや降坂速度制御、登坂発進補助をFF車も含む全車に標準採用している。なお、eKスペースには降坂速度制御機能は設定されず、デリカミニの悪路対応力の要点のひとつになっている。

 安全&運転支援機能では車高増に対応して4WD車の制御プログラムの最適化を図るための変更が加えられているが、基本機能はeKスペースに準じている。

 パワートレーンは軽自動車としては標準的なNAとターボの2本立て。いずれもマイルドハイブリッドを採用する。NAはG系、ターボはT系に搭載されている。CVTの変速幅や最終減速比はeKスペースも含めて共通している。つまり、デリカミニ4WDはタイヤ周長が長い分だけハイギヤードになるが、CVTの自動変速なら無影響だろう。

 衝突回避&被害軽減システムを中心としたe-アシストは、衝突回避機能の歩行者対応や自動ハイビーム、標識認識機能などを備え全車に標準装備。マイパイロットは全車速追従型ACC、ライン制御型LKAの機能を備えて、プレミアム系に採用。タウン&ツーリングの両面で役立つ機能が一通り用意されている。運転支援機能の充実ぶりもデリカミニの魅力になっている。

運転支援機能のマイパイロットには、停止後3秒保持機能を備えるレーザークルーズコントロールと白線認識タイプのLKAが備わる。プレミアムグレードに標準装備。
大径タイヤや専用ショックアブソーバーを採用したことで、ラフロード適性を強化。スーパーハイト系としてはアシが動くタイプ。モーグル路も余裕でこなせる。
先進安全機能のe-Assistは全グレードに標準装備。障害物の検知はフロントカメラとミリ波レーダーで行うタイプ。
衝突吸収性に優れるボディ構造と乗員を守るキャビン構造を組み合わせた三菱独自の衝突安全ボディ「RISE(ライズ」を採用。
バック時後方確認や縦列駐車表示に対応するマルチアラウンドモニター(プレミアムグレードに標準装備)は、オリジナル9型ナビゲーションのモニターにも表示可能。
キーレスキー携帯時に足先をスライドドア下に差し入れ→抜き取りすると、自動開閉するハンズフリーオートスライドドアは、オートスライドドア装着車に標準となる機能。

新型デリカミニ【結論】【オススメグレード】

カスタム要素を含めれば
価格はむしろお買い得

 ベースとなったeKスペースよりも4WD車の悪路性能を高めているが、1BOX型SUVとも称せられるデリカ4WD系の悪路対応力を引き継いだ訳ではない。ある意味ではセルフパロディ的なモデルでもある。

 しかし、だからこそいい。eKスペースの優れたキャビン実用性を損ねておらず、それがレジャー適性の高さに繋がる。内外装のアウトドアの演出は、それを積極的に楽しむことを主張する補佐的な役割。つまりは内外装を気に入るかどうかが、デリカミニを選ぶ最大の理由付けともいえる。

 価格は同等装備のeKスペースと比べると約15万円高。キャビン実用性だけで選ぶにはデリカミニは割高といえる。ただ、内外装のカスタマイズを施したモデルとすればかなりの買い得な設定だ。さらにeKスペースにはターボ車の設定がない。日常用途ならばNA仕様でも不足はないだろうが、中長距離用途も前提にすればターボは必須。ターボ車が中心になるパワートレーン設定からして、デリカミニはレジャー用途に適しているのだ。

オススメグレードは「T Premium(4WD)」
レジャー用途で距離を延ばすならACCやLKAは必須。山岳路や高速走行での走りやすさも考えればターボも外せない。アウトドア志向なら見た目からも性能からも4WDがリード。価格は最も高くなるが、最上級仕様の4WD車を選ぶのがコスパ視点でもオススメだ。

●新型デリカミニ 主要諸元&装備比較/ボディカラー一覧

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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