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更新日:2022.10.25 / 掲載日:2022.10.25

【ダイハツ 新型タント カスタム/ファンクロス】選べる個性で魅力アップのマイナーチェンジ

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス、大音安弘

 今や軽乗用車市場の主力まで成長した軽ハイトワゴン。その頂点に君臨するのが、ゆとりある頭上空間を武器に幅広いニーズに応える軽スーパーハイトワゴンだ。そのパイオニアであるダイハツの「タント」の4代目が、初のマイナーチェンジを実施。各部の磨き上げだけでなく、第3個性となるクロスオーバー「ファンクロス」を追加。激戦の軽スーパーハイトワゴン市場での返り咲きを狙う。改良型タントの特徴と魅力について、開発者インタビューを交えてお届けしたい。

新型タント マイナーチェンジのポイント

新型タント カスタム

 4代目となる現行型タントは、2019年7月9日に発売。最大のトピックは、ダイハツの新世代プラットフォーム「DNGA」の第一弾モデルであること。基本骨格だけでなく、サスペンションやパワートレイン、シートといったクルマの基本となる要素を全面刷新することで、従来の軽乗用車からの飛躍的な進化を遂げた。その高い基本性能の恩恵により、今回の改良では、メカニズムの変更はないという。そこで新タントの進化のポイントをまとめてみた。

 メカニズムの変更はないが、しっかりと磨き上げが行われている。それが軽自動車ユーザーの関心事のひとつである燃費だ。エンジン制御を見直すことで、自然吸気エンジン車の燃費が向上されている。標準車の場合、+1.5km/Lとなる22.7km/Lに。カスタムの場合、+0.7kmの21.9km/Lまで向上された。ターボエンジン車の21.2km/Lに変更はないが、カスタムは、フロントマスク変更による空気抵抗が増えたことを考量すると、現状維持も進化といえる。因みに、ファンクロスは、自然吸気エンジン車が21.9km/L、ターボエンジン車が20.6km/Lとなっている(※全てFF車のWLTCモード値)。主力となる自然吸気エンジン車の燃費が向上されたのは、この燃料高の時代の嬉しいニュースだ。

新型タント カスタム

 全車共通の改良点は、機能の向上がメイン。最大の進化は、ラゲッジスペース。後席スライドレバーを後席背面に新設することで、ラゲッジスペース側からの調整が可能となり、利便性が向上。積載能力を高めるべく、ラゲッジスペース自体も改善されており、従来型では叶わなかったフラットなラゲッジスペースを得るために、倒した後席とラゲッジフロアの段差を無くす新アイテム「2段調整式デッキボード」を新設している。このデッドボードは、取り外すと、耐荷重20kgの簡易テーブルとして活用することもできる優れもの。さらにフロアボード下を小物入れと活用できるように、パンク修理キットを移設。新たな装備場所は、なんと助手席床下となっている。デッドスペースを有効活用することで、小物入れを増やすアイデアは見事なもの。さらにキャビン内のショッピングフックやラゲッジスペースのユーテリティフックの追加、小物入れ付きセンターアームレストの採用など、収納機能の充実化も図られた。

シートレイアウトでは、運転席ロングスライドシート(540mm)をオプション化し、用途に合わせて選択できるように。助手席のロングスライド機構(380mm)は引き続き標準となっており、助手席側ピラーレス構造による「ミラクルオープンドア」のメリットを最大限活用できることに変わりはない。この他、電動パーキングブレーキが、Xグレード以上に標準化され、「カスタム」と「ファンクロス」は全車標準に。この他にも、機能を進化させた9インチスマホ連携ディスプレイオーディオのオプション設定やエクステリアカラーの新設などが行われている。また細かい点だが、ターボ車のステアリングには、メッキ加飾が追加されている。

 モデル別の違いを見ていくと、愛嬌あるスタイルが好評の標準車のエクステリアは変更なし。インテリアでは、ダッシュボードのアクセントとなるエアコンルーバーの加飾が、ブルーとなり、ドアトリムカラーも変更されているが、全体的な爽やかな雰囲気に変化はない。

 エクステリアが一変したのは、人気の「カスタム」だ。フロントマスクは、エンジンフード、フロントフェンダー、フロントバンパー、ヘッドライトなど構成部品のほとんどを変更。大型ミニバンを彷彿させる力強いものとなり、イメージを一新。直線的なマスクデザインとなったことで、幅広感が増している。リヤスタイルでは、フロントのイメージを受け継ぎ、リヤバンパーを張り出しの強いデザインに改めている。アクセントパーツでは、メッキドアハンドルを標準化し、フロントマスクと合わせて、質感の向上を図っている。インテリアでは、ダッシュボードのエアコンルーバーやシートに濃いブルーをアクセントとして採用。さらに上級感を演出するべく、ドアハンドルのメッキ加飾やレザー調シートのレザー表皮のエリアを拡大した。

新モデル「ファンクロス」は、アクティブライフを予感させるクロスオーバー

 新たに仲間に加わったクロスオーバー「ファンクロス」はタントと基本を共有しながら、アクティブな専用内外装と装備を与えたもの。アウトドア志向の高まりを受け、新設されたものだ。専用のフロントマスクは、エンジンフードとフェンダーこそカスタムとの共通部品であるが、フロントバンパーやフロントグリル、ヘッドライトを専用化し、タフで元気なマスクに仕上げた。プロテクションモールやアンダーガード風のアクセントが、SUV風味を醸し出す。アウトドアを意識させる専用装備として、エクステリアでは、車両周囲のプロテクションモールに加え、ルーフレールを装備。ルーフレールは、キャリアやルーフボックスなどを装備できる本格仕様のものだ。インテリアでは、エアコンルーバーやドアトリムなどのアクセントに、元気なオレンジ色を添えた。シート表皮には、タフトと同じ柄を専用サイズとして採用することで、アクティブな雰囲気を演出。表面は撥水加工されているので、汚れも付きにくい。さらに防水加工シートバックやラゲッジスペース用ルームランプ、後席専用USBなどのファンクロス専用アイテムが与えられている。

新型タント開発者インタビュー

新型タント チーフエンジニアの秋本 智行さん(右)と商品企画の岩舘朋子さん(左)

 3つの個性が顔を揃えるマイナーチェンジモデルのタントを担当したチーフエンジニアの秋本 智行さんと商品企画の岩舘朋子さんにお話を伺うことが出来た。

―新型タントは、どのような進化を狙って開発させたのでしょうか?

岩舘さん 今、ダイハツでもハイトワゴンのラインアップが増えており、先日の新型キャンバスが登場しました。その中で、スーパーハイトワゴンの価値としては、広い車内と視界の良さ、背の高さなどが生む乗降性や使い勝手の良さなどが挙げられます。また軽としては大きなボディが生む堂々としたスタイルが、特にカスタム系のユーザーさんから支持されています。新型タントが持つ魅力はそのままに、デザインの価値をより追求したのがマイナーチェンジの狙いです。

秋本さん 新型登場後の市場調査から、よりカスタムらしいスタイルを望む声が聞こえてきた。そこでよりカスタムらしいスタイルを模索したのが、今回のデザイン。近年は大きく立派に見えるデザインが好まれるので、押し出し感とキリっとした精悍さを高めた顔付きに仕上げています。

岩舘さん 従来のカスタムも洗練されたデザインを目指していたが、その点を指示してくれたお客様も多かった。その点を受け継ぎつつ、より精悍な顔としました。

秋本さん 新デザインは、最新ミニバンのオマージュと思われるかもしれませんが、タントカスタムのあるべき姿を追求したもの。新カスタムで走りの安定感を予感させるものに仕上げるには、両足がしっかり踏ん張っている姿が良いと考え、このスタイルとしました。

―ファンクロスはどのように生まれたのでしょうか?

岩舘さん 東京オートサロン2020で、タント「クロスフィールド」を展示したように、早くから、遊べる軽スーパーハイトワゴンの構想はありました。既にモデルとしても「ウェイク」を投入しています。他社でも軽クロスオーバーワゴンが増えたことやアウトドア人気の高まり、そしてSUVブームもあり、遊べるクルマの市場は、堅調な伸びを見せていくと以前より考えていました。それをこのタイミングで具現化しました。

―標準車のスタイルは変更しなかった理由を教えてください。

岩舘さん 現行型の標準車は、女性だけなく、男性からの支持も多く頂いています。もちろん、標準車はカスタムに比べ、女性ユーザーが多いのは確かですが。その理由として、現行型は、標準車を含め、頼もしいデザインを意識して仕上げました。その点が評価されたのだと思います。

―メカニズムの大きな改良はない理由は、DNGAの功績なのでしょうか?

秋本さん 19年の新型では、出来ることを全力で取り組みました。その際で得られた性能や品質は、今も受け入れられるものだと思います。今回の改良では、機能面やデザインに集中することで、選択する愉しさを提供したいと考えました。ただ出来ることはしようと、実用燃費の向上には取り組みました。

岩舘さん もちろん、搭載できる機能は、一部改良などで、積極的に盛り込んでおり、日々、タントは進化を続けています。

―新型タントの検討中の方にメッセージをお願いします!

岩舘さん タントは、他の軽スーパーハイトワゴンの中でも着座位置が低いので、より頭上空間にゆとりがあるだけでなく、小柄な人が運転しやすいという強みがあります。新型のおススメは、ずばり見た目。だからこそ、ぜひ店頭で実車を見て欲しい。選び方としては、日常使いなならば、標準車。上級感を求めるならば、カスタム。週末の行動範囲を広げたいならば、ファンクロスを選んでもらえればと思いますが、基本性能は全車共通なので、デザインの好みを最優先で選んで頂いても問題はありません。

秋本さん デザインの個性こそ異なりますが、基本性能は共通なので、お好きなものをお選びいただければと思います。強みであるミラクルオープンドアを初めとしたタントの機能を、こんな風に活用している、こんな使い方ができるなど、ぜひ皆さんの情報をダイハツにお寄せください。それは開発の励みにもなりますし、今後のタントの進化にも、役立てることが出来ますから。ぜひタントとの生活を楽しんで、その情報を発信してください。

まとめ

 新型タントは、DNGAによる基本性能の高さを活かしつつ、軽スーパーハイトワゴンの強みである機能性の向上と選ぶ愉しさの提供に取り組んだ。ファンクロスでは、同じ軽スーパーハイトワゴン「ウェイク」や軽クロスオーバー「タフト」で培った遊び心や機能、デザインの知見も活かされ、魅力的な遊べる軽スーパーハイトワゴンに仕上げられている。そして、人気のカスタムは、ドレスアップの王道といえる力強く上級感のあるデザインに進化させた。その一方で、コアとなる標準車のデザインは、変更しないという潔さも見せている。3つの個性を武器に持つ新タントが、ライバルとなるホンダN-BOXやスズキスペーシアにも刺激を与え、より軽乗用車市場にも活気をもたらすことになりそうだ。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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