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更新日:2022.07.08 / 掲載日:2022.07.04
【GRカローラ モリゾーエディション】4ドアなのに2シーター! これが走りのカローラだ

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス
トヨタは、6月1日、カローラのハイパフォーマンスモデル「GRカローラ」の日本仕様を世界初公開した。既にGRカローラは、2022年4月1日に米国にて米国仕様が世界初公開されているが、今回は、メディア向けに日本仕様の「RZ」と特別仕様車「モリゾウエディション」の2台が、都内にて世界初披露された。
新たなるGRモデルはカローラスポーツがベース

GRカローラは、ハッチバックモデル「カローラスポーツ」をベースに、TOYOTA GAZOO RACING (TGR)のモータースポーツ活動の知見やGRヤリスで磨き上げた技術などを用いて生まれた新たなハッチハッチだ。よりグラマラスになったボディは、冷却性能と空力性能を向上。性能上のために、ふくらみの増したエンジンフードやワイド化された前後フェンダーは、実にマッチョ。そのワイドフェンダーの内側には、高速旋回性能を高めるために、フロントが60mm、リヤが85mmそれぞれトレッドを拡大。よりリヤのボリューム感も強まっていることで、視覚的にもスポーツカーや競技車らしいスタイルと感じさせる。その姿は、カローラだが、美しいスタイルに定評のあったセリカシリーズの異端児、セリカGT-FOURを彷彿させる部分でもある。
搭載されるパワートレインは、GRヤリスにも採用される1.6L直列3気筒DOHCターボエンジンを始め、6速MTとスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を採用。もちろんこれらは、専用チューニングが施されている。GRヤリスと比較すると、最高出力が+32psの304ps/6500rpmに。最大トルクは同一の370Nmとなるが、発生領域が拡大され、3000rpm~5550rpmとなっている。6速MTのギア比も同一だが、こちらはファイナルギアを変更することで加速性を高めている。
「野性味」を追求したスペシャルモデル「モリゾウエディション」

新たに発表された「モリゾウエディション」は、GRヤリスにも設定されるスペシャルモデルだ。その名が示す通り、モリゾウの愛称で知られるトヨタ自動車の社長であり、市販車の走りの方向を定めるマスタードライバーを務める豊田章男氏が、更なる高性能と走りの愉しさを追求したものだ。まずはGRカローラモリゾウエディションとGRカローラRZとの違いを簡単に説明したい。まずはリヤシートを取り払うことで、約30kgの軽量化。エンジンチューニングでは、370Nmから30Nmアップの400Nm/3250~4600rpmへと強化。より加速力を高めるべく、ディファレンシャルギアのローギアード化と1~3速のクロスレシオ化を行っている。足元には、10mm幅広のサイズで、更なるハイグリップ仕様のミシュランパイロットスポーツカップ2を装着。インテリアでは、シートをよりホールド性に優れる専用セミバケットシートに変更するなどの違いが挙げられる。またボディ強化の補強ブレースを追加するだけでなく、新車製造時しか行えない構造接着剤の塗布エリアの拡大も行うなど、特別仕立てとなっている。特別仕様車を示す特徴としては、専用外装色のマットスティールが選択可能とするほか、フロントガラスにモリゾウサインが加えられている。5ドアハッチバックでありながら、後席を取り払ってしまうというのは、なんとも大胆。もちろん、後部ドアの開閉も可能で、後部スペースは、ラゲッジスペースとしても活用できる。但し、ボディ強化のために、リヤラゲッジスペースとの間に、補強部品が追加されるなど、走りに徹した作り込みとなっているのは言うまでもないだろう。





GRカローラの発売時期は?

GRカローラは、日本では今秋からの発売を予定しており、全国のトヨタ新車ディーラーにて取り扱う。特別仕様車「モリゾウエディション」に関しては、今冬から全国のGRガレージにて台数限定で販売となる予定。販売は抽選となり、秋頃より受付を行うとしている。いずれも現時点で価格については公表されていないが、GRヤリスよりも値が張るのは間違いないだろう。
なぜトヨタの大衆車として、世界中で多くの人に愛されてきたカローラに、トヨタのスポーツモデル群である「GR」モデルが設定されるのだろうか。その背景には、カローラの歴史が大きく関係している。多くのユーザーのニーズに応えるべく、様々なバリエーションを誇ってきた歴代カローラには、スポーツモデルも設定されてきた。その象徴が、ハチロクだ。4代目カローラに設定された2ドアクーペ/3ドアハッチバックのカローラレビンは、姉妹車であるスプリンタートレノと共に、エントリースポーツの1台として、大きな人気を集めた。それがFRスポーツカーである初代86の誕生へと繋がり、GR86へと発展を遂げている。トヨタのモータースポーツ活動の中でも、WRX初優勝を飾ったのは、2代目カローラである。その後、WRCでは、セリカが使われたこともあったが、1998年から1999年の2年間、トヨタがWRC撤退する最後のシーズンを戦ったのは、やはりカローラであった。因みに現在は、WRカーの主力がよりコンパクトなマシンとなったことから、ヤリスで参戦している。
どうしてGRカローラが誕生したのか

そしてGRカローラ誕生の背景には、カローラに対する豊田章男社長の思いもある。GRカローラ投入の意義について、豊田社長は、「多くのお客様に愛していただけるクルマだからこそ、絶対にコモディティと言われる存在にしたくない。お客様を虜にするカローラを取り戻したい。」とコメントしている。これはレクサス同様に、自社のクルマがつまらないなんて言わせないという豊田社長のクルマに対する情熱の表れだ。その原点となったのが、カローラなのだ。初めて自身の稼ぎで購入したのが、4代目カローラのスポーツセダン「1600GT」であった。そのクルマとの若き日の思い出こそが、身近な存在のカローラこそ、乗る楽しさがなくてはならないという走りの良さも大切にした最新カローラの開発にも繋がっているのだ。
そして、GRカローラが必要となる大きな理由は、世界初公開の地、アメリカにある。アメリカでは、GR86やGRスープラという生粋のスポーツカーこそ投入されているが、それらはピュアなトヨタ車ではない。さらにTGRの粋を集めた自信作「GRヤリス」は、サイズなどの問題からも非導入。自動車の巨大市場であるアメリカのクルマ好きに訴えるためにも、ピュアトヨタのGRモデルは必須なのだ。それは同時にGRモデルの存続や拡大にも大きな影響を与えるだろう。ただアメリカは、市販モデルのダウンサイズ化が進んでいるものの、効率とパワーを両立できる2.0L4気筒モデルが中心だ。1.6Lの3気筒エンジンのスポーツカーに興味を示すかが、最大の関心事となる。これについてトヨタの技術者に尋ねると、「小排気量で、これだけのハイパワーを得ていることが、アメリカでも話題となっており、今のところネガティブな声はない」とのこと。日本での価格が最大の関心事であることは間違いないが、今も自動車への関心の高いアメリカで、高性能な小排気量スポーツカーが、どのような評価を受けるのかも気になるところだ。